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第18章 戦火
7.戦火
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内臓を垂れ下がらせたリオンが、将校の腕に吊り下げられたまま……ニタリと赤い目で笑っていた。
いや違う。
アレはリオンではない。
まさか……。
「さがれ下郎共。我が名は魔獣ヴァティール。
人間の分際でよくも『我が器』を穢してくれたなァ?」
魔物がそう言った瞬間、リオンの髪を掴んでいた将校の体が四散した。
「あァ。こんなにしてしまって……」
ヴァティールがこぼれた自分の内臓を腹につめて、呪文を唱える。
すると見かけだけは、普通の人間の姿となった。
刺さっていた槍も、ヴァティールが触れただけで霧散していく。
「さァ、次は誰に責任をとってもらうかなァ?」
ヴァティールがぐるりと辺りを見回す。
「う……うわああ、この……化け物!!!」
一人の兵士がヴァティールに向かって切り込む。
続いて数十人が。
しかしそれより、ヴァティールの手のひらから火炎が生まれる方が早かった。
いつか見た、死体を焼くために出したあの炎とは桁違いに大きく禍々しい黒い火炎。
リオンが放った炎が児戯に見えるほどの、遥かに規模の大きい魔炎。
それが切り込んできた兵士たちを飲み込み、更に円を描く様にどこまでも広がっていく。
「あーはははははァ!! 良く燃えるな人間は!!
汚い人間など、皆燃えて消し炭になってしまえッ!!!」
ヴァティールのいる場所と城を除く、全ての場所を業火が焼いていく。
「な……何なのあれ…………」
気丈なアリシアが、腰でも抜けたようにぺたりと座り込む。
眼下には地獄のごとき光景が広がっていた。
城を取り囲んでいた十数万人の兵士が火の海に飲み込まれ、姿さえ残さず蒸発した。
炎が引いてもなお、地面には鎧が液化したものが広がっており、ごぽごぼと音を立てている。
「まだ虫がいるなァ」
街道の方を指差して、ヴァティールは呟いた。
「死ね。虫けら」
ヴァティールの手のひらに生まれた赤い光が膨らみ、雷となって街道を進むアレス帝国兵士を襲う。
此処からでは遠くてどうなったのかよくわからないが、街道を埋め尽くしていた青はもうそこに無かった。
ただ城の前で笑い続ける、ヴァティールの声だけが響いていた。
いや違う。
アレはリオンではない。
まさか……。
「さがれ下郎共。我が名は魔獣ヴァティール。
人間の分際でよくも『我が器』を穢してくれたなァ?」
魔物がそう言った瞬間、リオンの髪を掴んでいた将校の体が四散した。
「あァ。こんなにしてしまって……」
ヴァティールがこぼれた自分の内臓を腹につめて、呪文を唱える。
すると見かけだけは、普通の人間の姿となった。
刺さっていた槍も、ヴァティールが触れただけで霧散していく。
「さァ、次は誰に責任をとってもらうかなァ?」
ヴァティールがぐるりと辺りを見回す。
「う……うわああ、この……化け物!!!」
一人の兵士がヴァティールに向かって切り込む。
続いて数十人が。
しかしそれより、ヴァティールの手のひらから火炎が生まれる方が早かった。
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それが切り込んできた兵士たちを飲み込み、更に円を描く様にどこまでも広がっていく。
「あーはははははァ!! 良く燃えるな人間は!!
汚い人間など、皆燃えて消し炭になってしまえッ!!!」
ヴァティールのいる場所と城を除く、全ての場所を業火が焼いていく。
「な……何なのあれ…………」
気丈なアリシアが、腰でも抜けたようにぺたりと座り込む。
眼下には地獄のごとき光景が広がっていた。
城を取り囲んでいた十数万人の兵士が火の海に飲み込まれ、姿さえ残さず蒸発した。
炎が引いてもなお、地面には鎧が液化したものが広がっており、ごぽごぼと音を立てている。
「まだ虫がいるなァ」
街道の方を指差して、ヴァティールは呟いた。
「死ね。虫けら」
ヴァティールの手のひらに生まれた赤い光が膨らみ、雷となって街道を進むアレス帝国兵士を襲う。
此処からでは遠くてどうなったのかよくわからないが、街道を埋め尽くしていた青はもうそこに無かった。
ただ城の前で笑い続ける、ヴァティールの声だけが響いていた。
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