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第18章 戦火

6.戦火

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「はは……」

 乾いた笑いが口から漏れ、もう、涙さえ出ない。

 『アースラの望む国』を創ることを放棄した俺は、一番大切な者を目の前で惨たらしく殺された。

 きっとこんな事は一回や二回ではないのだろう。

 俺とリオンは生き返るたび、居場所を焼かれ、お互いの死を突きつけられ、狂うこともできずに久遠の日々を歩むのだ。

 これ以上の抵抗は、もう無意味だ。
 城は落ちる。

 俺も、間もなくアレス兵たちに殺されるだろう。

 打てる手もなく、一番守りたかった弟は目の前で死んでしまった。
 俺にはもう、何も残ってはいない。

 もし弟が生き返ったとしても、アレス軍の真っ只中だ。
 『化け物』として何度も何度も……あらゆる残虐な方法で殺され続けるだろう。
 そんなものを見るぐらいなら、今すぐこの身を消し去ってしまいたい。

 アリシアも、持っていた矢を落とした。
 王も。他の兵たちも。

「皆の者。いよいよこれまでのようだ。
 私の首で何人許してもらえるかわからないが、それでも交渉してみよう」

 王がぽつりと呟いた。
 兵たちは、それに答える気力も無くうなだれた。

 皆わかっているのだ。

 もし王の首を差し出したとて、相手はあのアレス帝国。ここにいる者たちの運命はさほど変わらない。
 捕らえられれば死よりつらい『奴隷としての運命』が待っている。

 それでも―――――――彼らは『今の生』が終われば、全てから解放されるだろう。
 なら、俺よりはずっと幸せだ。
 羨むのは筋違いだと知っていても、羨まずにはいられなかった。

「あはは……また奴隷に逆戻りか。
 人間としての心を捨ててまで頑張ってきたのに、結局私は弱者のまま。
 あんな生活に戻るぐらいなら私は……」

 アリシアが持っていた矢じりを逆手に持ち直す。
 そうだ、それが正しい。
 死んでしまえば、彼女はもうこれ以上苦しまなくて済む。

 他の者も自決の覚悟を決めたのだろう。持っていた得物を次々と自分の方に向け始めた。
 俺はそのさまをうらやましく思いながら見つめていた。

 その時、地獄から響くかのような絶叫が聞こえた。

 城内からではない。
 外だ。

 リオンの髪を掴んでいたあの将校が、恥も外聞も無いような叫び声を上げていた。
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