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第17章 約束
3.約束
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……ああ、悪いことをした。
ちゃんと約束していたのに、弟とゆっくり向き合うことは久しくなかった。
弟がワガママを言わないのをいいことに、放っておきすぎた。
「本当にごめんな。仕事が一段落ついたらちゃんと一緒に遊ぶから。
街にも出かけよう」
「……違います。それではありません」
リオンが不服そうに俺を見上げた。
背はこの一年でまた少し伸びているが、俺に比べればまだまだちっちゃくて拗ねる姿が超絶可愛い。
……それにしても約束って何だっけ?
「え……? じゃあ、一緒に厨房につまみぐいに行こうと言っていたアレか?」
「違います」
「う~ん、前にうやむやになったピクニックの件か?」
「違いますっ。僕をからかっているのですか!?」
……何だっけ?
本当に思い出せない。
忙しさのあまり、とうとうボケてしまったのだろうか。
いやいや俺はまだ若い。ボケてなんかないはずだ。
でもリオンは元々師に『私欲は捨てよ』と育てられている。
物欲は俺関係の商品に関してはあるようだが『俺自身』に何かを望むなんてことはほとんどない。本当に何も思い当たらない。
「酷い!! 忘れてしまったのですか!!」
普段声を荒らげることのない弟が、珍しく怒りをあらわにした。
……まずい。
何がなんでも思い出さねば。
え~っと……え~っと……。
「……あれだっ!!」
「思い出してくれましたかっ!!」
リオンが顔を輝かせる。
「大きくなったらお前と結婚するって言った、あの件だろ!!」
俺のセリフにリオンは脱力したようにしゃがみこんだ。
絶対コレだと思ったのだが、違ったようだ。
「……兄さん、たしかに僕は昔、そういうことを言いました。
でも……今僕が何才だか知っておられますか?」
ええぇえ……。
そ、……そんな……。
あの時の可愛いリオンは、もういないのか……。
俺なんか母上にプロポーズしてから真実に気づくまで、たっぷり4年かかったのに。
初めて出会ったとき、自分の性別さえ知らなかった弟は立派な一般人になっていた。半年ぐらい前に何気なく聞いたときは、
「もちろん、兄さんのお嫁さんになります♥」
と、極上の微笑みと共に言ってくれたのに。
く……泣くな俺。
いつかそういう日が来ると、知っていたはずだ。
しかし、こんなに早いだなんて……。
多分アリシアあたりが入れ知恵したに違いない。
王は自分に不利益さえ出なければこういう事には一切口出ししない。
わりと接することが多いアリシアの子分、ウルフは空気。
そのほかの奴らはリオンと親しくないから、そもそもこういう話はしないだろう。
アリシアの奴、よくも余計なことをしてくれやがったな~。
可愛かった昔のリオンを返してくれっっ!!
……まあ、今も超絶可愛いけど、いつまでだって子供のままでかまわなかったのにっ!!
「……兄さん、拗ねているのですか?
もしかして……本当に僕と結婚したかったのですか? 嬉しいな……」
頬を染めながらぼそっと呟くリオンがあまりにかわゆく、思わず頷いてしまいそうになる。
頷けばもしかして俺たちは両想いかっ!!
小さかったリオンも、あと二年足らずで結婚も出来る年齢となる。
結婚してしまえばリオンはずっと俺だけのリオンで……ああ、ウエディングドレスはレースをたっぷり使ったフワっとしたのが似合いそうだ……そして新婚旅行はアレドリア海の方にでも……。
はっ! いやいやその考えは、過去に何度も死ぬほど反省しただろ俺っ!!
それでもまだ頷きたい誘惑にかられるが、なんとか我慢した。
大体、今でさえ『死神』だの『魔物』だのと噂されているのに、○○○○の○○とまで言われたらあまりにリオンが不憫である。兄が大好きで幼いだけなのに。
「ねえ兄さん……地下神殿の件……どうなっているのでしょうか?」
リオンが少し顔を曇らせて不安そうに聞く。
そうか、約束とはあの事か。
キレイさっぱり忘れていた。
ちゃんと約束していたのに、弟とゆっくり向き合うことは久しくなかった。
弟がワガママを言わないのをいいことに、放っておきすぎた。
「本当にごめんな。仕事が一段落ついたらちゃんと一緒に遊ぶから。
街にも出かけよう」
「……違います。それではありません」
リオンが不服そうに俺を見上げた。
背はこの一年でまた少し伸びているが、俺に比べればまだまだちっちゃくて拗ねる姿が超絶可愛い。
……それにしても約束って何だっけ?
「え……? じゃあ、一緒に厨房につまみぐいに行こうと言っていたアレか?」
「違います」
「う~ん、前にうやむやになったピクニックの件か?」
「違いますっ。僕をからかっているのですか!?」
……何だっけ?
本当に思い出せない。
忙しさのあまり、とうとうボケてしまったのだろうか。
いやいや俺はまだ若い。ボケてなんかないはずだ。
でもリオンは元々師に『私欲は捨てよ』と育てられている。
物欲は俺関係の商品に関してはあるようだが『俺自身』に何かを望むなんてことはほとんどない。本当に何も思い当たらない。
「酷い!! 忘れてしまったのですか!!」
普段声を荒らげることのない弟が、珍しく怒りをあらわにした。
……まずい。
何がなんでも思い出さねば。
え~っと……え~っと……。
「……あれだっ!!」
「思い出してくれましたかっ!!」
リオンが顔を輝かせる。
「大きくなったらお前と結婚するって言った、あの件だろ!!」
俺のセリフにリオンは脱力したようにしゃがみこんだ。
絶対コレだと思ったのだが、違ったようだ。
「……兄さん、たしかに僕は昔、そういうことを言いました。
でも……今僕が何才だか知っておられますか?」
ええぇえ……。
そ、……そんな……。
あの時の可愛いリオンは、もういないのか……。
俺なんか母上にプロポーズしてから真実に気づくまで、たっぷり4年かかったのに。
初めて出会ったとき、自分の性別さえ知らなかった弟は立派な一般人になっていた。半年ぐらい前に何気なく聞いたときは、
「もちろん、兄さんのお嫁さんになります♥」
と、極上の微笑みと共に言ってくれたのに。
く……泣くな俺。
いつかそういう日が来ると、知っていたはずだ。
しかし、こんなに早いだなんて……。
多分アリシアあたりが入れ知恵したに違いない。
王は自分に不利益さえ出なければこういう事には一切口出ししない。
わりと接することが多いアリシアの子分、ウルフは空気。
そのほかの奴らはリオンと親しくないから、そもそもこういう話はしないだろう。
アリシアの奴、よくも余計なことをしてくれやがったな~。
可愛かった昔のリオンを返してくれっっ!!
……まあ、今も超絶可愛いけど、いつまでだって子供のままでかまわなかったのにっ!!
「……兄さん、拗ねているのですか?
もしかして……本当に僕と結婚したかったのですか? 嬉しいな……」
頬を染めながらぼそっと呟くリオンがあまりにかわゆく、思わず頷いてしまいそうになる。
頷けばもしかして俺たちは両想いかっ!!
小さかったリオンも、あと二年足らずで結婚も出来る年齢となる。
結婚してしまえばリオンはずっと俺だけのリオンで……ああ、ウエディングドレスはレースをたっぷり使ったフワっとしたのが似合いそうだ……そして新婚旅行はアレドリア海の方にでも……。
はっ! いやいやその考えは、過去に何度も死ぬほど反省しただろ俺っ!!
それでもまだ頷きたい誘惑にかられるが、なんとか我慢した。
大体、今でさえ『死神』だの『魔物』だのと噂されているのに、○○○○の○○とまで言われたらあまりにリオンが不憫である。兄が大好きで幼いだけなのに。
「ねえ兄さん……地下神殿の件……どうなっているのでしょうか?」
リオンが少し顔を曇らせて不安そうに聞く。
そうか、約束とはあの事か。
キレイさっぱり忘れていた。
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