滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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第17章 約束

2.約束☆

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 それからひと月が過ぎた。
 希望に反して俺はろくに休暇も取れず、王にガンガンこき使われている。
 本当に忙しい。

 その間にも、日々は慌ただしく流れて行く。

 ああ、親衛隊長を辞めたい。
 平隊員に戻りたい。

 戻って休暇を取りたい。
 そうして可愛い弟とラブラブ過ごしたい……。

 何でこの若さで肩こりに悩まされなくてはならないのだ。
 与えられた大量の書類仕事を前に、ゲッソリする。

 ああ俺の今の楽しみは、可愛い弟に『肩叩き』をしてもらう事だけだ。

 王は今とばかりに親衛隊長の俺をこき使ってくれる。
 要人と会う時の護衛はもちろんだし、(王子時代に仕込まれているので)書類仕事もそこそここなせると知られてからは、もう馬車馬のように使われまくった。

 他の親衛隊員は闘士業を再開し、抗争以前の生活に戻ったのだが俺だけは、

「弟君があれだけ頑張ったのだから、次は兄である君の番だっっ!!」

 と使いまくられた。
 基本的に王は『使えるモノ』は使いまくる人なのだ。

 国が平和になったなら弟とゆっくり過ごそう……。
 可愛らしい、春の服も必要だ。
 帽子はベレータイプも似合うに違いない。

 いやそれより、いっそ俺とペアで一式揃えてみようか?
 ああ、夢が広がるなぁ……♥

 と思っていたのに、今度は俺が忙しい。

 外での公務自体は多少時短してもらったのだが、終わっても宿題のように持ち帰り仕事を手渡される。
 おかげでこの若さで肩こりに悩まされてつらい。

 ああ、若々しく働けた闘士時代の何と幸せだったことかっ!


「……兄さん、約束を覚えてらっしゃいますか?」

 ある夜、部屋で俺の肩叩きをしてくれていたリオンが尋ねた。
 リオンは俺が疲れているのを知っているので、普段は何も望まず静かに過ごしてくれている。

 でも今日だけは違った。

「えっ!? ……と、約束……そうそう!!
 国が平和になったらゆっくり二人で遊びにいこうと言っていたっけな。
 すまん!!」

 俺はリオンに謝った。
 何かと忙しくて、そこまで手が回らなかった。

 一方、任を解かれたリオンは多分暇を持て余している。
 書類仕事の手伝いは弟には無理なので代わりに夜、俺の肩を叩いたりしてはしているが、公務で出払っている間リオンは一人きりだ。

 せめて俺のかわりに誰かがリオンについていてくれれば気も紛れるのだろうが、弟のそばには誰もいなかった。

 暗殺隊を抜けたとしても、すでにリオンの悪評を知らぬ者はいない。
 城中を歩いたところで『死神』に声をかけるものはいないし、皆目も合わさずにリオンを避ける。

 あんなに可愛くて一生懸命なリオンなのに誰も分かってやろうとはしない。

 王やアリシアだけは別段変わらず気にかけてくれているようだが、なにしろ仕事が殺人的に忙しい。

 そうなると、リオンは一人ポツンと部屋で過ごすしかなくなる。



*前にN様に頂いたかわゆいリオンです。
丁度兄ちゃんの妄想回なので掲載させていただきます。
 それからひと月が過ぎた。
 希望に反して俺はろくに休暇も取れず、王にガンガンこき使われている。
 本当に忙しい。

 その間にも、日々は慌ただしく流れて行く。

 ああ、親衛隊長を辞めたい。
 平隊員に戻りたい。

 戻って休暇を取りたい。
 そうして可愛い弟とラブラブ過ごしたい……。

 何でこの若さで肩こりに悩まされなくてはならないのだ。
 与えられた大量の書類仕事を前に、ゲッソリする。

 ああ俺の今の楽しみは、可愛い弟に『肩叩き』をしてもらう事だけだ。

 王は今とばかりに親衛隊長の俺をこき使ってくれる。
 要人と会う時の護衛はもちろんだし、(王子時代に仕込まれているので)書類仕事もそこそここなせると知られてからは、もう馬車馬のように使われまくった。

 他の親衛隊員は闘士業を再開し、抗争以前の生活に戻ったのだが俺だけは、

「弟君があれだけ頑張ったのだから、次は兄である君の番だっっ!!」

 と使いまくられた。
 基本的に王は『使えるモノ』は使いまくる人なのだ。

 国が平和になったなら弟とゆっくり過ごそう……。
 可愛らしい、春の服も必要だ。
 帽子はベレータイプも似合うに違いない。

 いやそれより、いっそ俺とペアで一式揃えてみようか?
 ああ、夢が広がるなぁ……♥

 と思っていたのに、今度は俺が忙しい。

 外での公務自体は多少時短してもらったのだが、終わっても宿題のように持ち帰り仕事を手渡される。
 おかげでこの若さで肩こりに悩まされてつらい。

 ああ、若々しく働けた闘士時代の何と幸せだったことかっ!


「……兄さん、約束を覚えてらっしゃいますか?」

 ある夜、部屋で俺の肩叩きをしてくれていたリオンが尋ねた。
 リオンは俺が疲れているのを知っているので、普段は何も望まず静かに過ごしてくれている。

 でも今日だけは違った。

「えっ!? ……と、約束……そうそう!!
 国が平和になったらゆっくり二人で遊びにいこうと言っていたっけな。
 すまん!!」

 俺はリオンに謝った。
 何かと忙しくて、そこまで手が回らなかった。

 一方、任を解かれたリオンは多分暇を持て余している。
 書類仕事の手伝いは弟には無理なので代わりに夜、俺の肩を叩いたりしてはしているが、公務で出払っている間リオンは一人きりだ。

 せめて俺のかわりに誰かがリオンについていてくれれば気も紛れるのだろうが、弟のそばには誰もいなかった。

 暗殺隊を抜けたとしても、すでにリオンの悪評を知らぬ者はいない。
 城中を歩いたところで『死神』に声をかけるものはいないし、皆目も合わさずにリオンを避ける。

 あんなに可愛くて一生懸命なリオンなのに誰も分かってやろうとはしない。

 王やアリシアだけは別段変わらず気にかけてくれているようだが、なにしろ仕事が殺人的に忙しい。

 そうなると、リオンは一人ポツンと部屋で過ごすしかなくなる。




*前にN様に頂いたかわゆいリオンです。
丁度兄ちゃんの妄想回なので掲載させていただきます。

兄ちゃんが実際に買い与えるのは一応少年用の服なのですが、本当はこんな服を着てもらいたかったのです。

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