滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
132 / 437
第17章 約束

2.約束☆

しおりを挟む
 それからひと月が過ぎた。
 希望に反して俺はろくに休暇も取れず、王にガンガンこき使われている。
 本当に忙しい。

 その間にも、日々は慌ただしく流れて行く。

 ああ、親衛隊長を辞めたい。
 平隊員に戻りたい。

 戻って休暇を取りたい。
 そうして可愛い弟とラブラブ過ごしたい……。

 何でこの若さで肩こりに悩まされなくてはならないのだ。
 与えられた大量の書類仕事を前に、ゲッソリする。

 ああ俺の今の楽しみは、可愛い弟に『肩叩き』をしてもらう事だけだ。

 王は今とばかりに親衛隊長の俺をこき使ってくれる。
 要人と会う時の護衛はもちろんだし、(王子時代に仕込まれているので)書類仕事もそこそここなせると知られてからは、もう馬車馬のように使われまくった。

 他の親衛隊員は闘士業を再開し、抗争以前の生活に戻ったのだが俺だけは、

「弟君があれだけ頑張ったのだから、次は兄である君の番だっっ!!」

 と使いまくられた。
 基本的に王は『使えるモノ』は使いまくる人なのだ。

 国が平和になったなら弟とゆっくり過ごそう……。
 可愛らしい、春の服も必要だ。
 帽子はベレータイプも似合うに違いない。

 いやそれより、いっそ俺とペアで一式揃えてみようか?
 ああ、夢が広がるなぁ……♥

 と思っていたのに、今度は俺が忙しい。

 外での公務自体は多少時短してもらったのだが、終わっても宿題のように持ち帰り仕事を手渡される。
 おかげでこの若さで肩こりに悩まされてつらい。

 ああ、若々しく働けた闘士時代の何と幸せだったことかっ!


「……兄さん、約束を覚えてらっしゃいますか?」

 ある夜、部屋で俺の肩叩きをしてくれていたリオンが尋ねた。
 リオンは俺が疲れているのを知っているので、普段は何も望まず静かに過ごしてくれている。

 でも今日だけは違った。

「えっ!? ……と、約束……そうそう!!
 国が平和になったらゆっくり二人で遊びにいこうと言っていたっけな。
 すまん!!」

 俺はリオンに謝った。
 何かと忙しくて、そこまで手が回らなかった。

 一方、任を解かれたリオンは多分暇を持て余している。
 書類仕事の手伝いは弟には無理なので代わりに夜、俺の肩を叩いたりしてはしているが、公務で出払っている間リオンは一人きりだ。

 せめて俺のかわりに誰かがリオンについていてくれれば気も紛れるのだろうが、弟のそばには誰もいなかった。

 暗殺隊を抜けたとしても、すでにリオンの悪評を知らぬ者はいない。
 城中を歩いたところで『死神』に声をかけるものはいないし、皆目も合わさずにリオンを避ける。

 あんなに可愛くて一生懸命なリオンなのに誰も分かってやろうとはしない。

 王やアリシアだけは別段変わらず気にかけてくれているようだが、なにしろ仕事が殺人的に忙しい。

 そうなると、リオンは一人ポツンと部屋で過ごすしかなくなる。



*前にN様に頂いたかわゆいリオンです。
丁度兄ちゃんの妄想回なので掲載させていただきます。
 それからひと月が過ぎた。
 希望に反して俺はろくに休暇も取れず、王にガンガンこき使われている。
 本当に忙しい。

 その間にも、日々は慌ただしく流れて行く。

 ああ、親衛隊長を辞めたい。
 平隊員に戻りたい。

 戻って休暇を取りたい。
 そうして可愛い弟とラブラブ過ごしたい……。

 何でこの若さで肩こりに悩まされなくてはならないのだ。
 与えられた大量の書類仕事を前に、ゲッソリする。

 ああ俺の今の楽しみは、可愛い弟に『肩叩き』をしてもらう事だけだ。

 王は今とばかりに親衛隊長の俺をこき使ってくれる。
 要人と会う時の護衛はもちろんだし、(王子時代に仕込まれているので)書類仕事もそこそここなせると知られてからは、もう馬車馬のように使われまくった。

 他の親衛隊員は闘士業を再開し、抗争以前の生活に戻ったのだが俺だけは、

「弟君があれだけ頑張ったのだから、次は兄である君の番だっっ!!」

 と使いまくられた。
 基本的に王は『使えるモノ』は使いまくる人なのだ。

 国が平和になったなら弟とゆっくり過ごそう……。
 可愛らしい、春の服も必要だ。
 帽子はベレータイプも似合うに違いない。

 いやそれより、いっそ俺とペアで一式揃えてみようか?
 ああ、夢が広がるなぁ……♥

 と思っていたのに、今度は俺が忙しい。

 外での公務自体は多少時短してもらったのだが、終わっても宿題のように持ち帰り仕事を手渡される。
 おかげでこの若さで肩こりに悩まされてつらい。

 ああ、若々しく働けた闘士時代の何と幸せだったことかっ!


「……兄さん、約束を覚えてらっしゃいますか?」

 ある夜、部屋で俺の肩叩きをしてくれていたリオンが尋ねた。
 リオンは俺が疲れているのを知っているので、普段は何も望まず静かに過ごしてくれている。

 でも今日だけは違った。

「えっ!? ……と、約束……そうそう!!
 国が平和になったらゆっくり二人で遊びにいこうと言っていたっけな。
 すまん!!」

 俺はリオンに謝った。
 何かと忙しくて、そこまで手が回らなかった。

 一方、任を解かれたリオンは多分暇を持て余している。
 書類仕事の手伝いは弟には無理なので代わりに夜、俺の肩を叩いたりしてはしているが、公務で出払っている間リオンは一人きりだ。

 せめて俺のかわりに誰かがリオンについていてくれれば気も紛れるのだろうが、弟のそばには誰もいなかった。

 暗殺隊を抜けたとしても、すでにリオンの悪評を知らぬ者はいない。
 城中を歩いたところで『死神』に声をかけるものはいないし、皆目も合わさずにリオンを避ける。

 あんなに可愛くて一生懸命なリオンなのに誰も分かってやろうとはしない。

 王やアリシアだけは別段変わらず気にかけてくれているようだが、なにしろ仕事が殺人的に忙しい。

 そうなると、リオンは一人ポツンと部屋で過ごすしかなくなる。




*前にN様に頂いたかわゆいリオンです。
丁度兄ちゃんの妄想回なので掲載させていただきます。

兄ちゃんが実際に買い与えるのは一応少年用の服なのですが、本当はこんな服を着てもらいたかったのです。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

めぐめぐ
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。魔法しか取り柄のないお前と』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公が、パーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー短編。 ※思いつきなので色々とガバガバです。ご容赦ください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。 ※単純な話なので安心して読めると思います。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

王子の恋

うりぼう
BL
幼い頃の初恋。 そんな初恋の人に、今日オレは嫁ぐ。 しかし相手には心に決めた人がいて…… ※擦れ違い ※両片想い ※エセ王国 ※エセファンタジー ※細かいツッコミはなしで

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

【運命】に捨てられ捨てたΩ

雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...