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第16章 死神
2.死神★
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「やあエル。兄弟仲良くしているところを呼び立ててすまなかったね」
私室にいた王がソファーから立ち上がり、申し訳なさそうな顔で手を上げた。
そーだ、そーだっ!!
休暇中なのだから気を使ってくれ!!
せっかく兄弟仲良く過ごしていたのにっ!!
と喉元まで出かかったのだが、大人のとるべき態度ではないので流石に黙った。
それに王はリオンの勝手な振る舞いや部屋を壊した件も、功績と引き換えに不問にして下さったのだ。
「いえ…………お気になさらずに」
俺はとりあえず常識的な言葉だけを選んで口にした。
「実は暗殺隊の件なのだが、改めて隊長職を君に任せたい」
王は少し言いづらそうに切り出した。
げぇ……!
敵ボスは倒したから、もうその話は済んだものだと思っていのに。
「敵の首領の首を取るところまでは何とかなったが、これだけでは不十分だ。
すぐさま落として欲しい施設がいくつかある。
幸い今、敵は浮き足立っている。何とか引き受けてはくれまいか?」
「……そうしたいのは山々なのですが……」
俺はそこで言葉を切った。
これは困った。
内緒で引き受けることが可能なら了承してもよいのだが、今この瞬間にも弟が聞き耳を立てているような気がする。
さっきしたばかりの約束を破ろうものなら、さすがのリオンも怒り狂うだろう。
……よし。無理だ!
前ほど危機的な状況でないのなら、弟を泣かせてまで引き受ける仕事ではない。
「アルフレッド王、俺はこの仕事を」
引き受けるわけには参りません……と続けようとしたとたん、ドアが破壊された。
「兄さん……」
予想通りの顔がそこにあった。
目がすわっていてちょっと怖い。
「アルフレッド王、そのお役目……兄の代わりに僕がお引き受け致しますっ!」
リオンがキッと王を睨むようにして申し出た。
「何を馬鹿な……君の年ではとても」
王が言葉を続けようとするのをさえぎり、リオンは目を細めて冷たく微笑んだ。
「……足りないでしょうか?」
リオンの両手から赤く禍々しい炎が立ち上る。
同時に瞳の色が魔獣のものと同色に変わる。
やばいっ!!
「もし兄さんに何かあったらこんな国…………跡も残らないほど焼き尽くしてやる…………」
あんなにも可憐な声質なのに、その言葉には悪魔も逃げ出しそうな冷たさがあった。
「ちょ……ちょと待ちたまえっ!!」
リオンの力を目の当たりにしたことのある王が慌てた声を上げた。
「……わかった、わかったからっ!!
しかし君は年若い。この仕事を降りたくなったらいつでも言いに来なさい…………」
鬼気迫るリオンの言葉にさすがの王もとうとう折れた。
実際、俺に何かあればリオンはそれをやるだろう。
アレス帝国のような巨大国家ならともかく、旧ブルボア領土内のたかが一組織では、リオンが離反しただけで簡単に滅ぶ。
外敵に囲まれている上、内で魔道士に暴れられたら数日ともたないのは誰の目にも明らかだ。
そのためだろう。その後俺がどんなに反対しても、王の裁可は覆ることは無かった。
私室にいた王がソファーから立ち上がり、申し訳なさそうな顔で手を上げた。
そーだ、そーだっ!!
休暇中なのだから気を使ってくれ!!
せっかく兄弟仲良く過ごしていたのにっ!!
と喉元まで出かかったのだが、大人のとるべき態度ではないので流石に黙った。
それに王はリオンの勝手な振る舞いや部屋を壊した件も、功績と引き換えに不問にして下さったのだ。
「いえ…………お気になさらずに」
俺はとりあえず常識的な言葉だけを選んで口にした。
「実は暗殺隊の件なのだが、改めて隊長職を君に任せたい」
王は少し言いづらそうに切り出した。
げぇ……!
敵ボスは倒したから、もうその話は済んだものだと思っていのに。
「敵の首領の首を取るところまでは何とかなったが、これだけでは不十分だ。
すぐさま落として欲しい施設がいくつかある。
幸い今、敵は浮き足立っている。何とか引き受けてはくれまいか?」
「……そうしたいのは山々なのですが……」
俺はそこで言葉を切った。
これは困った。
内緒で引き受けることが可能なら了承してもよいのだが、今この瞬間にも弟が聞き耳を立てているような気がする。
さっきしたばかりの約束を破ろうものなら、さすがのリオンも怒り狂うだろう。
……よし。無理だ!
前ほど危機的な状況でないのなら、弟を泣かせてまで引き受ける仕事ではない。
「アルフレッド王、俺はこの仕事を」
引き受けるわけには参りません……と続けようとしたとたん、ドアが破壊された。
「兄さん……」
予想通りの顔がそこにあった。
目がすわっていてちょっと怖い。
「アルフレッド王、そのお役目……兄の代わりに僕がお引き受け致しますっ!」
リオンがキッと王を睨むようにして申し出た。
「何を馬鹿な……君の年ではとても」
王が言葉を続けようとするのをさえぎり、リオンは目を細めて冷たく微笑んだ。
「……足りないでしょうか?」
リオンの両手から赤く禍々しい炎が立ち上る。
同時に瞳の色が魔獣のものと同色に変わる。
やばいっ!!
「もし兄さんに何かあったらこんな国…………跡も残らないほど焼き尽くしてやる…………」
あんなにも可憐な声質なのに、その言葉には悪魔も逃げ出しそうな冷たさがあった。
「ちょ……ちょと待ちたまえっ!!」
リオンの力を目の当たりにしたことのある王が慌てた声を上げた。
「……わかった、わかったからっ!!
しかし君は年若い。この仕事を降りたくなったらいつでも言いに来なさい…………」
鬼気迫るリオンの言葉にさすがの王もとうとう折れた。
実際、俺に何かあればリオンはそれをやるだろう。
アレス帝国のような巨大国家ならともかく、旧ブルボア領土内のたかが一組織では、リオンが離反しただけで簡単に滅ぶ。
外敵に囲まれている上、内で魔道士に暴れられたら数日ともたないのは誰の目にも明らかだ。
そのためだろう。その後俺がどんなに反対しても、王の裁可は覆ることは無かった。
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