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第16章 死神
1.死神☆☆
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「……おいリオン。リオンってば~っ!!
ホント、反省してるって!!
だから……」
「知りませんっ!!」
俺は部屋の中でリオンに怒られていた。
それはもう、こってりと。
本当は俺の方こそ『リオンの勝手な単独行動』を怒りたかったのだが、いざリオンを前にすると何だか可哀想で怒れない。
それに『リオンに嘘をついて暗殺隊に入ろうとした』という負い目もあった。
マゴマゴしているうちに逆に怒られてこのザマだ。
昨日の事件のこともあり、俺たちは王から1日だけ休暇を与えられた。
だからこの貴重な休暇を使って言い訳の限りを尽くし、元通り、
『兄弟仲良く』
過ごしたかったのだが、さっきから「ハイ、すみません」とか「ホント、反省してます」とかの類しか喋ってない気がする。
リオンはいつも俺に対してはニコニコしていて温和だ。
だから俺にこんな態度をとるのは本当に珍しい。
っていうか、初めてかもしれない。
「本当に……本当に心配したのですよっ!!」
そう叩きつけるように言った後、リオンはまた子供のように泣き出した。
「ひっく……兄さんは酷い……僕に内緒であんな危険なことを引き受けて……酷い、酷い、あんまりです!! うわぁぁん……」
昨日の血まみれの姿からは想像も出来ない幼さである。
でもこっちが本当のリオンなのだ。
考えもなく突っ走るし人も殺してしまう。
でもその心根は清らかで優しく『無垢な子供』そのものだ。
「……もう、あんなことは絶対に引き受けない。だから機嫌を直してくれないか?」
そう言って額に口付けるとリオンは嬉しそうに微笑んで泣き止んだ。
ちょっと安易に約束しすぎたような気もするが、こうでも言わないと、いつまでたっても許してもらえそうにない。
それに独裁者だった向こうのボス・凄腕で有名だった部下の半数以上はあの場所で死んだことが後発隊によって確認されている。
ボスの息子たちはまだ残っているが、いずれもボンクラらしい。
大きな脅威とはならないだろう。
う~む。それにしてもリオンは泣き顔も可愛いなぁ。
涙を真珠に例える人は多いが、人魚よりも可愛いであろうその顔で流すしずくはまさしく真珠。
思わず息を呑んでしまうほど美しく可憐だ。
馬鹿ブラディたちは、あれきりリオンの半径20メルトル以内には絶対近寄って来なくなったが、もうそれで結構だ。
俺がこのかわゆい弟を独り占めしてやるっ!!
後で後悔したって遅いんだからな!!
バーカ、バーカ!!!
「……ほらお詫びに……はならないかもしれないけど、昔みたいに抱っこしてやろうか?」
手を広げてそう言うとリオンは恥ずかしそうに身を寄せてきた。
うお、やっぱり可愛い!!
見ろ!! 見るんだっ!!!
ほっそりとした体を無防備に俺にあずけ、涙を溜めた瞳でにっこりと微笑んで見上げてくるこのめちゃくちゃ可愛い弟の様を!!!!
『化け物』だなんて言いやがって、お前らの目は節穴か?
ああ可愛い! 可愛すぎるっ!!
ぜひ誰か見てくれ。可愛すぎる『俺の』リオンを!!
……って誰も見てくれないか。
王なら見てくれそうだがあの忙しさだし、部屋も壊してしまったし、さすがに気が引ける。
アリシアあたりにでも自慢してみるか?
彼女もブラディやアッサムから話は聞いているはずだが、今朝会ったときはリオンを恐れる様子は全くなかった。
というか、
「リオンやるじゃないっ!!
さすが私が見込んだ子ね。おかげでウチの組織は持ち直しそうよ。
アリガト~っっ!」
なんて言いながらリオンの背をバンバン叩いていた。
相変わらずがさつな女だ。
もてる割に彼氏すらできないのは、きっとこういうところが原因だな。
ちょっとは俺の可憐な弟を見習えっ!!
リオンに気安く触るな、叩くなっ!!
……駄目だ。アリシアなんかに見せたら羨ましがるどころか、
「キャハハハ! 今日もブラコン絶好調ねっ!!」
とバンバン叩れるだけの気がしてきた。
そこにノックの音がした。
もう誰でもいい。
俺と可愛いリオンの……この仲良し振りを見てくれっ!!
リオンをお姫様抱っこしたままドアを開けると、王の使者がギョッとしたように目を見開いた。
そして微妙に視線をずらしながら『王からの言伝』を早口に喋り、何か見てはいけないものを見たかのように早々に戻っていった。
失礼な。
そこは、
「いいですね~エル様。可愛い弟さんがいて羨ましいっ!」と言うところじゃないかっ!!
ふう。
この城の奴等はどうして『こう』なんだ。
思わずため息が漏れてしまう。リオンはこんなに可愛いのに。
「兄さん、また行っちゃうのですか?」
リオンが抱っこされたまま不安そうに言う。
「行っちゃ駄目です。どうせまた、ろくでもない命令に決まってますっ!!」
そう言いながらしがみついてくる弟はやはりどう考えても超絶に可愛い。
まるで新婚の奥さ……じゃなくて『パパ仕事行っちゃイヤ』と駄々をこねるちっちゃい子みたいだ。
ずっと抱っこしていたい。
しかし世のパパたちがそれを振り切って妻子を養うために仕事に行くように、俺も王が呼んでいると言うなら行かねばならない。
「なあリオン……そうは言っても城勤めの俺が行かないわけにはいかないだろ?」
まだ抱っこしていたかったけど仕事は仕事。
いくら弟が可愛くとも、ケジメはつけなくてはならない。
残念だったけど、そっとおろして出仕の前の身だしなみを整えた。
「じゃあ、僕も連れて行ってくださいっ!」
今日のリオンはやけに食い下がる。
いつもはこんなにききわけが悪いわけではないのに。
「リオン。お前の願いなら何でも聞いてあげたいけど、こればかりは駄目だ」
そう言って振り切るように部屋を出る。
せっかく泣き止んでくれたのに、これは後が大変だな……どうやって機嫌をとろう。
帰りにはリオンの大好きなイチゴケーキでも調達してくるか。
ホント、反省してるって!!
だから……」
「知りませんっ!!」
俺は部屋の中でリオンに怒られていた。
それはもう、こってりと。
本当は俺の方こそ『リオンの勝手な単独行動』を怒りたかったのだが、いざリオンを前にすると何だか可哀想で怒れない。
それに『リオンに嘘をついて暗殺隊に入ろうとした』という負い目もあった。
マゴマゴしているうちに逆に怒られてこのザマだ。
昨日の事件のこともあり、俺たちは王から1日だけ休暇を与えられた。
だからこの貴重な休暇を使って言い訳の限りを尽くし、元通り、
『兄弟仲良く』
過ごしたかったのだが、さっきから「ハイ、すみません」とか「ホント、反省してます」とかの類しか喋ってない気がする。
リオンはいつも俺に対してはニコニコしていて温和だ。
だから俺にこんな態度をとるのは本当に珍しい。
っていうか、初めてかもしれない。
「本当に……本当に心配したのですよっ!!」
そう叩きつけるように言った後、リオンはまた子供のように泣き出した。
「ひっく……兄さんは酷い……僕に内緒であんな危険なことを引き受けて……酷い、酷い、あんまりです!! うわぁぁん……」
昨日の血まみれの姿からは想像も出来ない幼さである。
でもこっちが本当のリオンなのだ。
考えもなく突っ走るし人も殺してしまう。
でもその心根は清らかで優しく『無垢な子供』そのものだ。
「……もう、あんなことは絶対に引き受けない。だから機嫌を直してくれないか?」
そう言って額に口付けるとリオンは嬉しそうに微笑んで泣き止んだ。
ちょっと安易に約束しすぎたような気もするが、こうでも言わないと、いつまでたっても許してもらえそうにない。
それに独裁者だった向こうのボス・凄腕で有名だった部下の半数以上はあの場所で死んだことが後発隊によって確認されている。
ボスの息子たちはまだ残っているが、いずれもボンクラらしい。
大きな脅威とはならないだろう。
う~む。それにしてもリオンは泣き顔も可愛いなぁ。
涙を真珠に例える人は多いが、人魚よりも可愛いであろうその顔で流すしずくはまさしく真珠。
思わず息を呑んでしまうほど美しく可憐だ。
馬鹿ブラディたちは、あれきりリオンの半径20メルトル以内には絶対近寄って来なくなったが、もうそれで結構だ。
俺がこのかわゆい弟を独り占めしてやるっ!!
後で後悔したって遅いんだからな!!
バーカ、バーカ!!!
「……ほらお詫びに……はならないかもしれないけど、昔みたいに抱っこしてやろうか?」
手を広げてそう言うとリオンは恥ずかしそうに身を寄せてきた。
うお、やっぱり可愛い!!
見ろ!! 見るんだっ!!!
ほっそりとした体を無防備に俺にあずけ、涙を溜めた瞳でにっこりと微笑んで見上げてくるこのめちゃくちゃ可愛い弟の様を!!!!
『化け物』だなんて言いやがって、お前らの目は節穴か?
ああ可愛い! 可愛すぎるっ!!
ぜひ誰か見てくれ。可愛すぎる『俺の』リオンを!!
……って誰も見てくれないか。
王なら見てくれそうだがあの忙しさだし、部屋も壊してしまったし、さすがに気が引ける。
アリシアあたりにでも自慢してみるか?
彼女もブラディやアッサムから話は聞いているはずだが、今朝会ったときはリオンを恐れる様子は全くなかった。
というか、
「リオンやるじゃないっ!!
さすが私が見込んだ子ね。おかげでウチの組織は持ち直しそうよ。
アリガト~っっ!」
なんて言いながらリオンの背をバンバン叩いていた。
相変わらずがさつな女だ。
もてる割に彼氏すらできないのは、きっとこういうところが原因だな。
ちょっとは俺の可憐な弟を見習えっ!!
リオンに気安く触るな、叩くなっ!!
……駄目だ。アリシアなんかに見せたら羨ましがるどころか、
「キャハハハ! 今日もブラコン絶好調ねっ!!」
とバンバン叩れるだけの気がしてきた。
そこにノックの音がした。
もう誰でもいい。
俺と可愛いリオンの……この仲良し振りを見てくれっ!!
リオンをお姫様抱っこしたままドアを開けると、王の使者がギョッとしたように目を見開いた。
そして微妙に視線をずらしながら『王からの言伝』を早口に喋り、何か見てはいけないものを見たかのように早々に戻っていった。
失礼な。
そこは、
「いいですね~エル様。可愛い弟さんがいて羨ましいっ!」と言うところじゃないかっ!!
ふう。
この城の奴等はどうして『こう』なんだ。
思わずため息が漏れてしまう。リオンはこんなに可愛いのに。
「兄さん、また行っちゃうのですか?」
リオンが抱っこされたまま不安そうに言う。
「行っちゃ駄目です。どうせまた、ろくでもない命令に決まってますっ!!」
そう言いながらしがみついてくる弟はやはりどう考えても超絶に可愛い。
まるで新婚の奥さ……じゃなくて『パパ仕事行っちゃイヤ』と駄々をこねるちっちゃい子みたいだ。
ずっと抱っこしていたい。
しかし世のパパたちがそれを振り切って妻子を養うために仕事に行くように、俺も王が呼んでいると言うなら行かねばならない。
「なあリオン……そうは言っても城勤めの俺が行かないわけにはいかないだろ?」
まだ抱っこしていたかったけど仕事は仕事。
いくら弟が可愛くとも、ケジメはつけなくてはならない。
残念だったけど、そっとおろして出仕の前の身だしなみを整えた。
「じゃあ、僕も連れて行ってくださいっ!」
今日のリオンはやけに食い下がる。
いつもはこんなにききわけが悪いわけではないのに。
「リオン。お前の願いなら何でも聞いてあげたいけど、こればかりは駄目だ」
そう言って振り切るように部屋を出る。
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