滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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第15章 幸せの行方

8.幸せの行方

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「いいのですよ……」

 涙をこぼしながら、それでもリオンは微笑んでいた。
 多分、俺を安心させようとでも思ったのだろう。

「誰に化け物と思われても……本当に化け物になってしまったとしても、僕は兄様を守りたい」

 白い手が伸びてきて俺の体に触れる。

「僕は守りたい。兄様を守りたい……大好きな……兄様を……」

 段々と嗚咽に変わっていく弱々しい声。
 それが俺の心を締め付ける。

 リオンは俺だけじゃなく『ガルーダ』を守るため……皆を守るために戦ったのに。
 どうして皆、分かってやらないのだ。

 何故リオンを『化け物』と呼ぶのだ。

 いや、訳なんて俺が1番知っている。
 かつて俺だってリオンをそう呼んだのだから。
 でも今は。

「……大丈夫。俺は世界で1番、お前のことを愛しているよ」

 そう言ってリオンをぎゅっと抱きしめる。
 俺に出来ることなんて、これしかない。

 故国エルシオンの地下神殿にずっといたなら……少なくともリオンは人を殺したり、『化け物』と呼ばれることだけは無かった。
 なのに俺が弟をこの世界に連れ出した。

 だから俺だけは、世界中の誰が非難しようと、リオンを大切にしなくては。

 誰よりも誰よりも大切にして、リオンが幸せに笑えるよう愛していくのだ。
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