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第15章 幸せの行方
6.幸せの行方
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夜の闇に馬を走らせる。
一刻も早くリオンを迎えに行ってやりたい。
リオンの能力は俺も重々知っているが、世俗に疎く、俺と離れたことがあまり無い弟は単独行動には向かない。
どこで足をすくわれ危機に陥るか……それを考えると身震いがする。
あれだけの容姿であれば、捕らえられればどこぞに売られる事は間違いないし、命さえ取られる事も十分ありうる。
弟には俺同様不死を与えられているが、あまりにも悲しく命を落とした前回の事を考えると胸が締め付けられるように痛い。
ブラディとアッサムは夜中にたたき起こされてブツブツ言っていたが、非常事態なんだから我慢してもらうほかない。
俺たちは王から渡された地図を頼りに『ヴァーユ』頭目のいる建物を目指した。
さほど整備されていない街頭の明かりは薄暗い。
それが、昼間であればどんなに地味な格好をしようと目立つ、俺たち親衛隊の姿をうまい具合に隠してくれた。
どうかリオンが無事でありますように。
俺の心はそのことでいっぱいだった。
こんな事なら弟にも正直に話しておけば良かった。
時間はかかるだろうが、ちゃんと納得させておけば今日のような事にはならなかったのに。
「……あれかな?」
地図と見比べながら、アッサムが大きなホテルを指さす。
古いが立派な石造りの凝った建物だ。おそらく旧ブルボア王国時代に建造されたものだろう。
しかし側面の壁は王の部屋同様、吹っ飛ばされていた。
……遅かったか。
とりあえず用心しながらその穴を通って侵入を試みる。
1階内部は広いホールになっているはずだが明かりは灯っておらず、外の照明や月明かりが窓を通して間接的に差し込むだけでかなり薄暗い。
目が慣れるまではほとんど視界がきかないだろう。
中は静まり返っていて俺たちが入っても何の反応も無い。
すでに戦闘が終わり、もう誰も居ないのだろうか?
リオンがここに来たことは間違いなさそうだが状況がよくわからない。
ランプは持ってきたが、敵に居場所を知らせるようなものなのであえてつけなかった。
用心しながら歩くうち、ぴちゃりと音がした。水たまりか何かを踏んだらしい。
「ひっ……! なんだよこれ……!!」
アッサムも何かを踏んだようで小さく悲鳴をあげる。
そして止めるのも聞かずランプを灯した。
辺一面血の海だった。
その中に60体ちかくの死体が転がっている。
おそらくリオンの仕業だ。
比較的綺麗な仕事をやってきたブラディとアッサムは無残な死体を見て完全に腰が引けている。
俺も昔はそうだった。
でも今は違う。
リオンはただ人を殺すわけではない。
必要だから殺すのだ。
だから畏れるのは間違っているし、俺はリオンを信じリオンの心を守ってやればいいのだ。
一刻も早くリオンを迎えに行ってやりたい。
リオンの能力は俺も重々知っているが、世俗に疎く、俺と離れたことがあまり無い弟は単独行動には向かない。
どこで足をすくわれ危機に陥るか……それを考えると身震いがする。
あれだけの容姿であれば、捕らえられればどこぞに売られる事は間違いないし、命さえ取られる事も十分ありうる。
弟には俺同様不死を与えられているが、あまりにも悲しく命を落とした前回の事を考えると胸が締め付けられるように痛い。
ブラディとアッサムは夜中にたたき起こされてブツブツ言っていたが、非常事態なんだから我慢してもらうほかない。
俺たちは王から渡された地図を頼りに『ヴァーユ』頭目のいる建物を目指した。
さほど整備されていない街頭の明かりは薄暗い。
それが、昼間であればどんなに地味な格好をしようと目立つ、俺たち親衛隊の姿をうまい具合に隠してくれた。
どうかリオンが無事でありますように。
俺の心はそのことでいっぱいだった。
こんな事なら弟にも正直に話しておけば良かった。
時間はかかるだろうが、ちゃんと納得させておけば今日のような事にはならなかったのに。
「……あれかな?」
地図と見比べながら、アッサムが大きなホテルを指さす。
古いが立派な石造りの凝った建物だ。おそらく旧ブルボア王国時代に建造されたものだろう。
しかし側面の壁は王の部屋同様、吹っ飛ばされていた。
……遅かったか。
とりあえず用心しながらその穴を通って侵入を試みる。
1階内部は広いホールになっているはずだが明かりは灯っておらず、外の照明や月明かりが窓を通して間接的に差し込むだけでかなり薄暗い。
目が慣れるまではほとんど視界がきかないだろう。
中は静まり返っていて俺たちが入っても何の反応も無い。
すでに戦闘が終わり、もう誰も居ないのだろうか?
リオンがここに来たことは間違いなさそうだが状況がよくわからない。
ランプは持ってきたが、敵に居場所を知らせるようなものなのであえてつけなかった。
用心しながら歩くうち、ぴちゃりと音がした。水たまりか何かを踏んだらしい。
「ひっ……! なんだよこれ……!!」
アッサムも何かを踏んだようで小さく悲鳴をあげる。
そして止めるのも聞かずランプを灯した。
辺一面血の海だった。
その中に60体ちかくの死体が転がっている。
おそらくリオンの仕業だ。
比較的綺麗な仕事をやってきたブラディとアッサムは無残な死体を見て完全に腰が引けている。
俺も昔はそうだった。
でも今は違う。
リオンはただ人を殺すわけではない。
必要だから殺すのだ。
だから畏れるのは間違っているし、俺はリオンを信じリオンの心を守ってやればいいのだ。
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