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第15章 幸せの行方
4.幸せの行方
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次の日の深夜、俺は響きわたる爆音で目を覚ました。
手の指は紅茶カップに引っ掛けたままだ。
どうやらリオンと部屋でお茶を飲んでいて、何故かそのまま眠ってしまったらしい。
……まずい!!
王との約束の時間はとっくに過ぎている。
それにさっきの爆音はいったい……。
もしや先手をとって他の組織が奇襲をしかけてきたのだろうか?
爆音に続いて何かが焦げる、嫌な臭いがこのあたりにまで漂ってきた。
「エル、大変!! すぐアルフレッド王の部屋に来て!!」
血相を変えて飛び込んできたのはアリシアだった。
俺は慌てて階段を駆け上がった。
黒煙が王の部屋から漂い出ていた。
中に入ると火はもう鎮火されていたが、アルフレッド王が呆然と目の前に空けられた巨大な穴を見ていた。
その穴はどう見ても爆発物で吹っ飛ばされてできたもので、夜空がぽっかりと見えている。
穴の下方の床には、同じ暗殺隊に選ばれた男たちが血を流して倒れていた。
間もなく救護隊が駆け込んできて、倒れた男たちを担架に乗せて運んでいった。
一応全員息はあるようだ。
城には治癒師がいるから、きっと助かるだろう。
「アルフレッド王、いったい何が……!!」
尋ねる俺に王は答えず、人払いをした。
「……アレは、いったい何なのだ……」
信じがたいモノを見たらしく、王はまだ呆然としている。
アレとはいったい何のことだろう。
アルフレッド王は何を見たというのだろう。
「お前の弟は……リオンはいったい何なのだ……?」
呻くように出た言葉はそれだった。
空けられた大穴から一陣の風が舞い込み肌を刺す。
王の居室の壁に大穴を開け、暗殺隊を一瞬で倒したのはリオンのようだった。
確認はまだとっていないが、そうとしか考えられない。
この国にはリオンの他にも戦闘系魔道士は多少いる。
俺たちが開催していた闘技の挑戦者にもわずかだがいた。
しかしその力はリオンの足元にも届かない、極々弱いものだった。
だから俺もそこまで危険な存在だとは思わなかった。
実際ここ、ラフレイムでは魔道士は特に忌まれる対象となっているわけではない。
王が間者として使っている者のうちいく人かは、戦闘魔道士だという話も聞いたことがある。
しかしリオンの魔力と技量はラフレイム内でさえ明らかに異質だ。
バレれば多分、忌まれる対象となる。
リオンが戦う姿を初めて見た時、俺はリオンに向かって酷いことを口にした。
あまりにも人間離れしたその戦いぶりに、恐怖を抱いたのだ。
実の兄でさえあの時はそう思ったのだから、赤の他人ならなおさらそう思うだろう。
だだしリオンは化け物なんかじゃない。
むしろ純粋で優しくて、自分のことより俺のことばかり考える、綺麗な心の持ち主だ。
そんな優しいリオンに幸せになって欲しかった。
人並みの幸福をあげたかった。
だから俺はリオンに魔力も魔剣も使うことを禁じた。
アリシアにもウルフにも堅く口止めをした。
知られれば、王はリオンを排除しようとしたかもしれない。
強すぎる魔力は偏見と恐怖を呼ぶ。
排除されなくとも、王やその周りはリオンの強大な魔力を利用しようとしたかもしれない。
もう弟に血なまぐさいことをして欲しくなかった。
ただ普通の子供として、幸せに笑っていて欲しかった。
それなのに何故こんな事を?
俺にはわからない。
「……リオンは……君が暗殺隊の隊長になることを知っていた。
エル、君が喋ったのかい?」
王の問いに頭を振って答える。
でも、王の一言でリオンの行動理由がわかった。
……俺は忘れていた。
リオンは魔獣の力を使って、半径10キロルメルトル以内の音なら、どんな小さな音でも拾うことが出来るということを。
手の指は紅茶カップに引っ掛けたままだ。
どうやらリオンと部屋でお茶を飲んでいて、何故かそのまま眠ってしまったらしい。
……まずい!!
王との約束の時間はとっくに過ぎている。
それにさっきの爆音はいったい……。
もしや先手をとって他の組織が奇襲をしかけてきたのだろうか?
爆音に続いて何かが焦げる、嫌な臭いがこのあたりにまで漂ってきた。
「エル、大変!! すぐアルフレッド王の部屋に来て!!」
血相を変えて飛び込んできたのはアリシアだった。
俺は慌てて階段を駆け上がった。
黒煙が王の部屋から漂い出ていた。
中に入ると火はもう鎮火されていたが、アルフレッド王が呆然と目の前に空けられた巨大な穴を見ていた。
その穴はどう見ても爆発物で吹っ飛ばされてできたもので、夜空がぽっかりと見えている。
穴の下方の床には、同じ暗殺隊に選ばれた男たちが血を流して倒れていた。
間もなく救護隊が駆け込んできて、倒れた男たちを担架に乗せて運んでいった。
一応全員息はあるようだ。
城には治癒師がいるから、きっと助かるだろう。
「アルフレッド王、いったい何が……!!」
尋ねる俺に王は答えず、人払いをした。
「……アレは、いったい何なのだ……」
信じがたいモノを見たらしく、王はまだ呆然としている。
アレとはいったい何のことだろう。
アルフレッド王は何を見たというのだろう。
「お前の弟は……リオンはいったい何なのだ……?」
呻くように出た言葉はそれだった。
空けられた大穴から一陣の風が舞い込み肌を刺す。
王の居室の壁に大穴を開け、暗殺隊を一瞬で倒したのはリオンのようだった。
確認はまだとっていないが、そうとしか考えられない。
この国にはリオンの他にも戦闘系魔道士は多少いる。
俺たちが開催していた闘技の挑戦者にもわずかだがいた。
しかしその力はリオンの足元にも届かない、極々弱いものだった。
だから俺もそこまで危険な存在だとは思わなかった。
実際ここ、ラフレイムでは魔道士は特に忌まれる対象となっているわけではない。
王が間者として使っている者のうちいく人かは、戦闘魔道士だという話も聞いたことがある。
しかしリオンの魔力と技量はラフレイム内でさえ明らかに異質だ。
バレれば多分、忌まれる対象となる。
リオンが戦う姿を初めて見た時、俺はリオンに向かって酷いことを口にした。
あまりにも人間離れしたその戦いぶりに、恐怖を抱いたのだ。
実の兄でさえあの時はそう思ったのだから、赤の他人ならなおさらそう思うだろう。
だだしリオンは化け物なんかじゃない。
むしろ純粋で優しくて、自分のことより俺のことばかり考える、綺麗な心の持ち主だ。
そんな優しいリオンに幸せになって欲しかった。
人並みの幸福をあげたかった。
だから俺はリオンに魔力も魔剣も使うことを禁じた。
アリシアにもウルフにも堅く口止めをした。
知られれば、王はリオンを排除しようとしたかもしれない。
強すぎる魔力は偏見と恐怖を呼ぶ。
排除されなくとも、王やその周りはリオンの強大な魔力を利用しようとしたかもしれない。
もう弟に血なまぐさいことをして欲しくなかった。
ただ普通の子供として、幸せに笑っていて欲しかった。
それなのに何故こんな事を?
俺にはわからない。
「……リオンは……君が暗殺隊の隊長になることを知っていた。
エル、君が喋ったのかい?」
王の問いに頭を振って答える。
でも、王の一言でリオンの行動理由がわかった。
……俺は忘れていた。
リオンは魔獣の力を使って、半径10キロルメルトル以内の音なら、どんな小さな音でも拾うことが出来るということを。
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