滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
112 / 437
第14章 明日を歩く

4.明日を歩く

しおりを挟む
 俺たちのブロマイドや関連グッズは以前王が公言したとおり、作りに作って売りまくっていた。

 そんなモノが売れるのか?
 ……と最初は思っていたが売り出してみると王の言う通り、けっこうな資金源となっている。

 そのおかげも少々はあるのか、古びていかにもボロかった城や庭園も、気がつくとずいぶんキレイになっていた。
 組織の人間もずいぶん増えた。

 もちろんブロマイドはただ店に並べて売っていたわけではない。
 まずは闘技場の出店で、少しずつ売り出していった。

 闘技場は王立とは思えないほど貧乏臭かったが、それでも俺たち王の親衛隊に勝てばそれなりに賞金が出る。
 そのため闘技場は大繁盛だった。

 ……どうも『親衛隊』というのは最初から名ばかりで、どちらかというと箔を付け、闘技とグッズでお金を稼ぐアイドル部隊を作りたかったらしい。

 施設にお金をかけるのは大変だけど、食い詰めた腕の立つ美形を拾って地位で釣り、闘士に育て上げるのは案外お金がかからない。

 低リスクハイリターンを狙った王は、中々の商売上手と言えるだろう。

 そういえば王は元からごつい男共をたくさん護衛として従えていたよなぁ。
 名称は違えど、あちらが本来の親衛隊なのだろう。

 家柄も経歴も無視して作ったエセ親衛隊……つまり、俺たちの隊は見た目優男。そして美女のアリシアしか居ないので、挑戦者たちは思ったより気軽に参加している。チンピラや町の腕自慢程度ってところが大多数だ。

 なるほど。

 王は色々言ってたが、真の狙いはソコにあると見た。
 幅広く挑戦者を募り、利益を効率的に上げていく……多少のセコさはいなめないが、悪くない考えだ。

 もちろん闘技は命のやり取りをするようなものでなく、選べる武具もこちらで用意する殺傷力の低いものの中でしか選べない。
 命にかかわる急所を狙うのも反則としており、違反したものには巨額の罰金が課せられる。
 そのため無茶苦茶な奴は、ほぼいない。

 ちなみに挑戦者からは『挑戦料』もガッツリと取っている。
 初期は宣伝のために80%オフとかやってたが、供給より需要がはるかに上回り出した今は値引きは一切ない。

 むしろ、あのへんで挑戦権を高値で売りつけているダフ屋。
 あれって一般人のフリしてるけど、王の手の者の気がするんだが……。
 いったいどこまでセコく儲けるつもりなのだろう。

 王は観客からも観戦料をとっている。
 と言っても高いのは桟敷席だけで、その他は子供の小遣いでも買えるような安さだ。
 実際闘技場には子供なども多く来ている。
 その子供たちは将来のお客様とみなしているらしい。
 定期的に子供向けイベントなども開催されているので、親子連れの客も多い。

 しかしお子様も来る環境にもかかわらず、王はそこで国営賭博もやっている。

 故国エルシオンでは賭博は禁止だったのでビックリしたが、王は子供向けイベントで布教活動もしていた。
『ダメな大人にならないために』とのタイトルで、大人になってからする(かもしれない)賭け事の適正範囲などをお菓子などで釣りつつ子供たちに広く布教していたのだ。

 良心的とも言える行いだが、よく考えると『長くお客様でいてもらうための布石』であるようにも思える。

 俺は王から国づくりを学ぼうと思っていたが、このままでは王の尋常ではないセコさばかり学んでしまいそうだ。

 いいんだろうか、コレで。
 まぁ良い事にしよう。

 もっと給料上げてくれ!!
 ……と時々思わなくもないが、今はリオンを養っても余裕のある暮らしが出来るようになっている。
 王に楯突いて首になるよりは、今のまま平和に、気楽に働くほうがいいのだろう。

 闘技場では手強そうな奴の相手は俺がし、大多数を占める雑魚は戦闘訓練も兼ねてアリシアやブラディ達が担当していた。
 親衛隊員が挑戦者に負けることはほぼ無く、20回に1回あるか無いかというところだ。

 その20回に1回も、厳密に言えば八百長であることが多い。
 王命に従い、バレないようにわざと負ける。
 かなりのテクニックが必要だが、慣れればピンチを演出するのもワザと負けるのもお手の物だ。

 もちろん挑戦者はお客様。

 お客様は神様なので、彼らを傷つけないよう慎重に戦っている。
 そうすれば1人5~100回ぐらいの範囲でまず再挑戦してくれる。

 たまに元王子が八百長の闘士……と、ちょっと悲しくなるが、綺麗事で飯は喰えない。
 俺たちは生きていかねばならないのだ。

 その他にも聞いただけだと鼻で笑ってしまうような馬鹿馬鹿しい企画や商品が意外とヒットしていた。
 アルフレッド王は見かけとは違って本当にやり手だった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

処理中です...