滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
108 / 437
第13章 親衛隊候補生

9.親衛隊候補生

しおりを挟む
 それから季節が進んで春が来た。

 俺は14才をとっくに過ぎ、背もそのへんの大人並みに大きくなった。
 父上は長身だったし、来年にはもっと高くなるだろう。

 リオンも12才となり少しは伸びたのだが、今年も俺のほうが伸び率が高いので弟は益々小さく、可愛らしく見える。

 アッサムとブラディは俺とアリシアでしごきにしごいたので多少はマシな腕になった。
 リーダーを新米の俺たちがしごかねばならないというのも変な気分だが、アリシアがヤれというので仕方ない。

 一応先輩たちに敬語は使っているけど、こんな調子なので敬っていないことはバレバレだと思う。
 それでもまぁ、関係はそう悪いものではなかった。

 リオンは相変わらず……というか、魔剣は封印して訓練用の模造刀を使っているにもかかわらず、相手に怪我をさせてしまうことが多い。
 それは体術にも言えることで、前以上に強くなっていることは間違いない。
 なのでシゴキは任せなかった。

 最初の練習試合の時、リオンはけが人を出している。
 その後も数回。
 王は苦笑しながらも許してくれたが、あまり続くと心証が悪くなるのは間違いない。

 リオンは背はさほど伸びないのに、パワーだけは目に見えて上がっている。
 もちろんそれは鍛錬の成果であるが、それだけではない。

 リオンが言うには、誕生日ごとに『大魔道士アースラの封印』がひとつづつ解けて、自然とパワーが上がるらしい。
 20才で魔獣を完璧に操る大魔道士の出来上がりというわけだ。

 以前魔獣ヴァティールがリオンのことを『アースラが造った最悪の人器』と言っていたが、多分『この事』を指して言っていたのだろう。
 パワーが上がること自体は頼もしくもあるが、普通の子供として育てたい俺は、リオンの魔の力が皆にバレないかヒヤヒヤもする。

 リオンは人外の力など持たなくてもいい。
 俺が弟を守っていくのだから。


 休日は二人で本を読んだり、カードゲームなどをしてゆっくりと過ごしていた。
 遠くまで遊びに連れていってやることはめったに出来ないけど、それでもリオンは嬉しそうだ。

 贅沢なんか言わない。
 俺たちが欲しいのは、ごく普通の幸せだけ。

 リオンは相変わらず俺以外の者には懐かないけど、そういうところも可愛いし、リオンも幸せ。俺も幸せ。他に何を望むと言うのだろう。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

若頭と小鳥

真木
BL
極悪人といわれる若頭、けれど義弟にだけは優しい。小さくて弱い義弟を構いたくて仕方ない義兄と、自信がなくて病弱な義弟の甘々な日々。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...