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第13章 親衛隊候補生

7.親衛隊候補生

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 俺の馬鹿馬鹿!!
 俺たちは『そういう設定』で城に潜入したはずだったのに、すっかり忘れてた!!

 せっかく上手く行っていたのに、上手く行き過ぎて気が抜けてしまっていたようだ。

 素性を偽って侵入した怪しい奴だと、王に思われたに違いない。
 下手すれば捕らえられ処刑されるかも……。

 身構える俺とは対照的に、アリシアは王に向かってニッコリと微笑んだ。

「まさかぁ……ですわ。
 半年ほど前、親を失って途方にくれていた二人を引き取ってあげただけです。
 よくある話ですわ」

「ああ、なるほどね。似てないと思っていたよ」

 二人の間でたったそれだけの会話が交わされ、それで俺の危惧はなかったことになってしまった。

 ……さすが悪党アリシアだ。
 息を吸うように嘘をつくとは。

 その横でリオンが呟く。

「どうして僕は実年齢より1才年下に記載してあるのですか?」

「……ああ、君はどうごまかそうと15才以上には見えないからね。親衛隊ジュニアとしてしばらくは実務には就かせず売り出そうと思っているのだ」

 王はリオンに向かってにっこりと微笑んだが、そのあと眉間に皺を寄せた。

「他にも理由はある。
 実は、最近滅んだ大国の王子をアレス帝国が探していてね。
 ……年齢が明らかに違うから私は君を失踪した王子だと思っているわけではないのだが、瞳の色と髪の色が王子の条件にピッタリと合う。
 近い年齢にすると、変な探索が来るかもしれないからイヤなのだ。
 ……うん、素晴らしい金だが、髪の色はやはり染めたほうがいいかな?」

「え……この髪はせっかく兄様が『綺麗』だって褒めて下さったのに……」

 リオンが早速、瞳をうるませる。

 ……というか、瞳をうるませるだけではなく、魔剣の柄を服の上から握り締めている気がする。
 殺る気満々か!

 慌てる俺をよそに、王はニコニコと笑った。

「何を言ってるのだよ君。
 染めるならお兄さんとお揃いの色だよ。オ・ソ・ロ・イ!!
 大好きなお兄さんと同色の髪っていうのも、良いものだとは思わないかい?」

 王の言葉に、弟は握っていたであろう、変形前の魔剣の柄をふわりと離した。

「……そういえば…………そうですね?
 わかりました。お引き受けします」

 あの事件以来、他人にはほとんど笑わなくなったリオンだが、わずかに頬が緩んでいて、明らかに喜んでいる。

 ……王は何気に子供の扱いが上手いのだな。
 俺ではこうはいかない。

 リオンは俺よりもやや明るい、オレンジがかった薄い茶系色に染めることとなった。

 同時に俺にもリオンと同色に染めるよう指令が出たので、髪の色はこげ茶⇒薄茶に変えることになった。
 これで兄弟そろってほぼ同色となる。

 王いわく、金だとアレス帝国の目が気になるけど、光が当たったときだけ金にも見える感じが舞台栄えして良いとの事だそうだ。

 俺たちは染料をもらってすぐ髪を染め替え、写真集も後日そこだけ色修正がかけられた。
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