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第12章 転機
11.転機
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足取りの重い俺とは対照的に、アリシアは怯えるウルフの腕をガシッと掴み、組みながら、堂々と案内の男に続いて城の中に足を踏み入れていった。
正直言って大した度胸だ。
とても妙齢の女性とは思えない。
一瞬ためらったが、俺たちもその後をついていった。
いくつかの回廊を通り抜け、俺たちは王のごとく玉座に座る30才前後の一見平凡そうな男の前に引き出された。
側には屈強そうな黒服の男たちが50人ほど控えている。
……しまった。
いくら正式な紹介者がいるとはいえ、うかつについて行っては駄目だったのではないだろうか?
今までのパターンを省みると、あの50人がいきなり襲いかかってきて俺たちを捕まえようとするかもしれない。
好きでこの顔に生まれたわけではないが、俺やリオンを売れば相当の額になるらしいということだけはよく分かった。
それにアリシアだって性格はともかく、外見だけならどこぞの王妾としてでも売れそうな美しさだ。
俺たちをまとめて捕まえ叩き売るというのはいかにもありそうな事で、玉座の男を前に、自然と身構えてしまう。
「……なるほど、君たちがバーリーの連れてきた客人か。確かに美しい」
男はそう言うと玉座からゆっくりと立ち上がり、アリシアの横を素通りして真っ直ぐ俺の前に来た。
あれ?
バーリーとやらがご執心だったのは、確かアリシアのはずだった。
なのに何で素通りなのだ……?
「これほど美しい少年は十数年ぶりに見たよ。
よく連れてきてくれたなバーリー。礼を言う」
男は穏やかにそう言ったが、俺はこんなオッサンに『美しい』とか言われて正直背筋がぞーっとする。
確かにうちは代々美形の家系だ。
王たちはたった一人の妃しか娶れないせいか、それぞれ選びに選んだ物凄く美しい妻を娶ってきた。
したがって王家の子供は一人残らず美形だ。
俺に限らず、リオンや妹のヴィアリリスも兄の欲目を除いてもドキドキするほどの可愛さだ。
しかし男にうっとりと囁かれると、もの凄く気持ちが悪い。
噂に聞くアレなんだろうか……。
だとするとリオンを連れて今すぐ逃げねば。
隣では、
「失礼ねっ!! 美しいと言ったら私が一番でしょ!!」
とアリシアが小声で憤慨しているが、かまっている場合じゃない。
「ああ。違うのだよ。どうも警戒させてしまったようだね。
実はラフレイム……旧ブルボア王国領には私の組織ガルーダの他に後二つの勢力がある。
しかし私は他のならず者が作った組織と差をつけたい。
実は私は、崩壊したブルボア王家の血を引く最後の一人なのだ。
私はこの地に、高貴なるブルボア王国を再建したい……という崇高な望みがあるのだよ」
オッサンは中途半端に長い麦わらみたいな髪をかきあげたが、美形でないため今ひとつ様にならない。
う~んこの人も王族か……人は見かけによらないものだ。
別にブサイクとは言わないが、十人並の容姿に十人並の体格。髪はやや金色がかっているが、それぐらいならうちの国の平民に山ほどいた。
オッサン……いや、王族の末裔の人は言葉を続けた。
「まずはこの国のブランドとなるような高貴な組織を作りたい。
だから今度作る私の親衛隊には、強く美しい男を入れようと前々から決めていたのだ」
男は平凡な顔に似合わぬ中々渋い声で、そう言った。
いや、『決めていた』って突然言われても困るんですけど……。
正直言って大した度胸だ。
とても妙齢の女性とは思えない。
一瞬ためらったが、俺たちもその後をついていった。
いくつかの回廊を通り抜け、俺たちは王のごとく玉座に座る30才前後の一見平凡そうな男の前に引き出された。
側には屈強そうな黒服の男たちが50人ほど控えている。
……しまった。
いくら正式な紹介者がいるとはいえ、うかつについて行っては駄目だったのではないだろうか?
今までのパターンを省みると、あの50人がいきなり襲いかかってきて俺たちを捕まえようとするかもしれない。
好きでこの顔に生まれたわけではないが、俺やリオンを売れば相当の額になるらしいということだけはよく分かった。
それにアリシアだって性格はともかく、外見だけならどこぞの王妾としてでも売れそうな美しさだ。
俺たちをまとめて捕まえ叩き売るというのはいかにもありそうな事で、玉座の男を前に、自然と身構えてしまう。
「……なるほど、君たちがバーリーの連れてきた客人か。確かに美しい」
男はそう言うと玉座からゆっくりと立ち上がり、アリシアの横を素通りして真っ直ぐ俺の前に来た。
あれ?
バーリーとやらがご執心だったのは、確かアリシアのはずだった。
なのに何で素通りなのだ……?
「これほど美しい少年は十数年ぶりに見たよ。
よく連れてきてくれたなバーリー。礼を言う」
男は穏やかにそう言ったが、俺はこんなオッサンに『美しい』とか言われて正直背筋がぞーっとする。
確かにうちは代々美形の家系だ。
王たちはたった一人の妃しか娶れないせいか、それぞれ選びに選んだ物凄く美しい妻を娶ってきた。
したがって王家の子供は一人残らず美形だ。
俺に限らず、リオンや妹のヴィアリリスも兄の欲目を除いてもドキドキするほどの可愛さだ。
しかし男にうっとりと囁かれると、もの凄く気持ちが悪い。
噂に聞くアレなんだろうか……。
だとするとリオンを連れて今すぐ逃げねば。
隣では、
「失礼ねっ!! 美しいと言ったら私が一番でしょ!!」
とアリシアが小声で憤慨しているが、かまっている場合じゃない。
「ああ。違うのだよ。どうも警戒させてしまったようだね。
実はラフレイム……旧ブルボア王国領には私の組織ガルーダの他に後二つの勢力がある。
しかし私は他のならず者が作った組織と差をつけたい。
実は私は、崩壊したブルボア王家の血を引く最後の一人なのだ。
私はこの地に、高貴なるブルボア王国を再建したい……という崇高な望みがあるのだよ」
オッサンは中途半端に長い麦わらみたいな髪をかきあげたが、美形でないため今ひとつ様にならない。
う~んこの人も王族か……人は見かけによらないものだ。
別にブサイクとは言わないが、十人並の容姿に十人並の体格。髪はやや金色がかっているが、それぐらいならうちの国の平民に山ほどいた。
オッサン……いや、王族の末裔の人は言葉を続けた。
「まずはこの国のブランドとなるような高貴な組織を作りたい。
だから今度作る私の親衛隊には、強く美しい男を入れようと前々から決めていたのだ」
男は平凡な顔に似合わぬ中々渋い声で、そう言った。
いや、『決めていた』って突然言われても困るんですけど……。
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