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第11章 暗転

1.暗転

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 気がつくと見知らぬ場所だった。
 薄暗くて、じめじめしている。

 おばさんの宿の自分の部屋にいたはずなのに、いったいここは何処なんだ?
 起き上がろうとして、鎖のじゃらりという音に気がついた。

 隣にはリオンが白い顔で眠っている。
 その隣にも、数人の子供が鎖につながれたままうなだれている。

「こ、ここはどこなんだ!?」

 そう問うと、鎖で繋がれていた10歳ぐらいの可愛らしい少年が顔を上げた。

「……ここは奴隷の牢獄だよ。お兄ちゃんたちは捕まって売られてきたみたい。
 お兄ちゃんたちを連れてきた番人が、そう言っていたよ」

「お前たちもそうなのか?」

 少年に問うと、黒髪を揺らして首を振った。

「僕は親に売られたの。もう食べ物が無いし、下に四人も兄弟がいるから僕を売るしかなかったの」

 少年の瞳から涙がポトンと落ちた。
 他の少年少女たちも、つられて啜り泣きを始める。

「たまに、お兄ちゃんみたいに身寄りの無い子供が捕まって売られてくることがあるけど、うちの国ではそういうのは本当は駄目なんだ。
 でも、僕みたいなのは珍しくないよ。
 僕の親みたいに生活に困って子供を売ったり、返せなかった借金のカタとして子供を取られた親はいっぱいいるよ」

 少年はすすり泣きながら、自分の運命を諦めるかのように言った。

 親が子供を売る。
 それも、こんな年端もいかないような子供を。
 信じられないという思いと、やはりそうなのかという思いが交錯する。

 俺もリオンも親に売られたようなものだ。
 国のため、王子でありながら地下神殿に閉じ込められて育ったリオン。

 愛されて育ったようでもリオンに会い、たかが飴ひとつやっただけで親に殺されそうになった俺。

「お、おいリオン、起きろ!!」

 隣で眠っていたリオンをいささか乱暴に揺り起こす。

「ん……兄様……? もう朝ですか?」

 幼い仕草で伸びをしたリオンが、ギョッとしたように辺りを見渡す。

「リオン……何だかよくわからないが、俺たちさらわれて売られてしまったようなんだ」

「ええっ!! ……やっぱり外の世界は怖いです。
 どうして売られてしまったのですか………………?」

 涙目になりながら、リオンが問う。

「……教えてやろうか?」

 牢の外から若い男の声がした。
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