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第5章 外の世界
7.外の世界
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ここに来て数日がたった。
王宮にいた頃とは全く違う暮らしに戸惑うことは多かったけど、それでも慣れればどうと言うことはない。
最初、料理は近くの山里まで出かけて行って買っていた。
歩いて1時間以上かかるけど、作れないのだから仕方ない。
でも、そのうち料理店のおばさんと仲良くなり、料理の方法も教わって不自由することは無くなった。
「はい、リオン、あ~んして?」
「美味しいっ! 兄様の料理はいつもとっても美味しいですっ!」
リオンが、ほっぺを押さえるようにして言う。
ああ可愛い!!
料理を覚えて本当に良かった!!
リオンは掃除は上手かった。けれど、料理は下手だった。
なので、料理は主に俺が作っている。
リオンは今まで誰かが『料理』をしているところは、1回も見たことが無いらしい。
調味料の存在さえも知らなかったリオンに、いきなり料理が出来るわけがない。
でも俺は、厨房のおばさんに可愛がられていたので、少しはイメージがわく。
ちょっとした手伝いならやらせてもらったこともあるし、簡単な料理なら、すぐに出来るようになった。
今のところ、リオンの役目は、単純な野菜切り作業や味見だ。
最初、弟に野菜切り係をお願いしたときは、ビックリした。
弟は、地下神殿から持ち出してきていたらしい、あの魔剣で野菜を切ろうとしたのだ。
エラジーという名のあの魔剣は、未使用持にはとても小さくなる。
なので、俺はリオンがそんなものを持ち出していたことにすら、気がついていなかった。
慌てて止めて、普通の包丁の使い方を教えると、間もなく上手にできるようになった。
リオンが一生懸命野菜を切っている姿は、とても可愛い。
新緑色のエプロンをつけて、リズム良く野菜を刻むと、淡い金の髪が柔らかに揺れる。俺はそのさまに、思わず見とれてしまう。
噂に聞く『庶民の新妻』ってきっとこういうのだろうな~~。
カワイイな~~。
……ハッ!
いけない、いけない。
またオカシナ妄想をするところだった。いい加減にしろ、俺っ!!
しかし俺の弟は、本当にかわゆいのだ。
野菜を切っている姿も可愛いけど、味見している姿は、更にかわゆくて悩ましい。
俺が差し出すスプーンに小さな唇を寄せ、鈴の音のような透き通る声で、
「美味しいです。兄様」
と、本当に嬉しそうに微笑む、弟の姿。
ああ、『生きてて良かった』と神に感謝するレベルである。
教育係エドワードの、
「どこの新婚さんですか?」
という、冷たい空耳がまた聞こえてきたような気がしたけれど、可愛いんだからしょうがないだろうっ!!
可愛過ぎる弟の喜ぶ顔が見たくて、俺の料理の腕は、どんどん上達していった。
王宮にいた頃とは全く違う暮らしに戸惑うことは多かったけど、それでも慣れればどうと言うことはない。
最初、料理は近くの山里まで出かけて行って買っていた。
歩いて1時間以上かかるけど、作れないのだから仕方ない。
でも、そのうち料理店のおばさんと仲良くなり、料理の方法も教わって不自由することは無くなった。
「はい、リオン、あ~んして?」
「美味しいっ! 兄様の料理はいつもとっても美味しいですっ!」
リオンが、ほっぺを押さえるようにして言う。
ああ可愛い!!
料理を覚えて本当に良かった!!
リオンは掃除は上手かった。けれど、料理は下手だった。
なので、料理は主に俺が作っている。
リオンは今まで誰かが『料理』をしているところは、1回も見たことが無いらしい。
調味料の存在さえも知らなかったリオンに、いきなり料理が出来るわけがない。
でも俺は、厨房のおばさんに可愛がられていたので、少しはイメージがわく。
ちょっとした手伝いならやらせてもらったこともあるし、簡単な料理なら、すぐに出来るようになった。
今のところ、リオンの役目は、単純な野菜切り作業や味見だ。
最初、弟に野菜切り係をお願いしたときは、ビックリした。
弟は、地下神殿から持ち出してきていたらしい、あの魔剣で野菜を切ろうとしたのだ。
エラジーという名のあの魔剣は、未使用持にはとても小さくなる。
なので、俺はリオンがそんなものを持ち出していたことにすら、気がついていなかった。
慌てて止めて、普通の包丁の使い方を教えると、間もなく上手にできるようになった。
リオンが一生懸命野菜を切っている姿は、とても可愛い。
新緑色のエプロンをつけて、リズム良く野菜を刻むと、淡い金の髪が柔らかに揺れる。俺はそのさまに、思わず見とれてしまう。
噂に聞く『庶民の新妻』ってきっとこういうのだろうな~~。
カワイイな~~。
……ハッ!
いけない、いけない。
またオカシナ妄想をするところだった。いい加減にしろ、俺っ!!
しかし俺の弟は、本当にかわゆいのだ。
野菜を切っている姿も可愛いけど、味見している姿は、更にかわゆくて悩ましい。
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「美味しいです。兄様」
と、本当に嬉しそうに微笑む、弟の姿。
ああ、『生きてて良かった』と神に感謝するレベルである。
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「どこの新婚さんですか?」
という、冷たい空耳がまた聞こえてきたような気がしたけれど、可愛いんだからしょうがないだろうっ!!
可愛過ぎる弟の喜ぶ顔が見たくて、俺の料理の腕は、どんどん上達していった。
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