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第5章 外の世界
6.外の世界
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俺は王子なので、家事なんてやったことが無い。
そりゃ自室の片付けは自分でやってたけど、勉強や剣術の稽古で、ほぼ自室になんかいなかった。
昔は休日は町によく行っていたし、妹ヴィアリリスのところで過ごす時間も多かった。
リオンに出会ってからは、暇さえあれば地下神殿に通っていたし、部屋はほとんど汚れない。
たまにやってくる鬼の教育係エドワードが、
「ここ! ここにホコリが溜まってますよ。だらしないっ!」
と怒るので、1週間に1回ぐらいは雑巾がけをしていたけど、頑張ってやっていた家事(?)はその程度だ。
リオンを自室に迎えてからは、他には行かず、できるだけ真っ直ぐ部屋に帰っていたけれど、弟は部屋を散らかすようなマネは、一切しなかった。
むしろピカピカに磨き上げてくれていた。
ああ、掃除が大好きなお嫁さん……いいなァ。
デレっと頬が緩む。
いやいや、リオンは弟。弟だから。
兄としてだけでなく、『親』にもなろうと誓ったばかりだから。
うっとりとしていた妄想を振り払って、俺は掃除をするべく、ほうきを手にしてみた。
幸い、新しく手に入れたこの家には掃除のための備品一式が揃っている。
うん。
掃き掃除は難しくないはずだ。
見よう見まねでも、きっと簡単に出来る。
いける。いけるぞ俺。
王子ではなくなったけど、庶民としても、バッチリ暮らしていけそうだ。
「あの兄様……差し出がましいことは申し上げたくないのですけど……丸くお掃きになるのはいかがなものかと。
よろしかったら、僕にほうきを貸して下さいませんか?」
絶妙の角度で見上げ、おずおずと聞いてくる弟は、やはりとんでもなくかわゆい。
ほうきを手渡すと、リオンは本当に掃除上手だった。
なるほど……。
掃除はそうやって、隅まで掃かなきゃいけないのか。
それから、ゴミは家具の下とかに掃きこんで誤魔化すのとかも、駄目なんだな。
まじまじと見たことが無かったから、気がつかなかった。
「お前上手だな」
感心して言うと、
「魔獣継承の儀式を済ませたあとは、地下神殿の掃除のほとんどが僕の担当でしたから」
という言葉が返ってきた。
ええっ!!
あの広い神殿のほとんどを、幼いリオンにやらせていたなんて。
城内は常に掃除係が綺麗にしていた。
俺の部屋も、月に1度は専門の掃除係が入っている。
でも、機密だらけの地下神殿に掃除係を入れるわけにはいかなかったのだろう。
そうは言っても、リオンは幼い。
リオンにばかり押し付けるなんて……クロスⅦは本当に嫌な奴だ。
物語に出てくる、底地悪の悪い継母みたいだ。
かわいそうなリオン。これからは、俺が守ってやるからなっ!!
まずは掃除だ。
このままリオンに任せっぱなしなら、クロスⅦのことばかりは言えない。
俺だって『底地悪の悪い継母』コース一直線だ。
「リオン、俺にも何かやらせてくれっ!
俺も掃除上手になりたいんだ!!」
そう力強く言うと、
「あ、あの兄様、それでは……ちり取りの係りをお願いしても、よろしいでしょうか?」
控えめな瞳を向けながら、リオンがかわいらしくお願いしてくる。
あんな嫌な師に育てられたのに、こんなに健気に育って……。
思わず目頭を押さえる。
隣国の姫は、たいした美人でもないくせにつんつんしていたし、噂で聞くアレス帝国の第一皇女にいたっては、自分を袖にする男の首を切らせていたという。
皇女は大変な美女らしいが、そんな性格なので、すでに行き遅れの年となっているらしい。ザマァみろ。
それに比べて、ウチのリオンの可愛いことったら!!
俺の保護欲を常にくすぐってやまない。
そりゃ自室の片付けは自分でやってたけど、勉強や剣術の稽古で、ほぼ自室になんかいなかった。
昔は休日は町によく行っていたし、妹ヴィアリリスのところで過ごす時間も多かった。
リオンに出会ってからは、暇さえあれば地下神殿に通っていたし、部屋はほとんど汚れない。
たまにやってくる鬼の教育係エドワードが、
「ここ! ここにホコリが溜まってますよ。だらしないっ!」
と怒るので、1週間に1回ぐらいは雑巾がけをしていたけど、頑張ってやっていた家事(?)はその程度だ。
リオンを自室に迎えてからは、他には行かず、できるだけ真っ直ぐ部屋に帰っていたけれど、弟は部屋を散らかすようなマネは、一切しなかった。
むしろピカピカに磨き上げてくれていた。
ああ、掃除が大好きなお嫁さん……いいなァ。
デレっと頬が緩む。
いやいや、リオンは弟。弟だから。
兄としてだけでなく、『親』にもなろうと誓ったばかりだから。
うっとりとしていた妄想を振り払って、俺は掃除をするべく、ほうきを手にしてみた。
幸い、新しく手に入れたこの家には掃除のための備品一式が揃っている。
うん。
掃き掃除は難しくないはずだ。
見よう見まねでも、きっと簡単に出来る。
いける。いけるぞ俺。
王子ではなくなったけど、庶民としても、バッチリ暮らしていけそうだ。
「あの兄様……差し出がましいことは申し上げたくないのですけど……丸くお掃きになるのはいかがなものかと。
よろしかったら、僕にほうきを貸して下さいませんか?」
絶妙の角度で見上げ、おずおずと聞いてくる弟は、やはりとんでもなくかわゆい。
ほうきを手渡すと、リオンは本当に掃除上手だった。
なるほど……。
掃除はそうやって、隅まで掃かなきゃいけないのか。
それから、ゴミは家具の下とかに掃きこんで誤魔化すのとかも、駄目なんだな。
まじまじと見たことが無かったから、気がつかなかった。
「お前上手だな」
感心して言うと、
「魔獣継承の儀式を済ませたあとは、地下神殿の掃除のほとんどが僕の担当でしたから」
という言葉が返ってきた。
ええっ!!
あの広い神殿のほとんどを、幼いリオンにやらせていたなんて。
城内は常に掃除係が綺麗にしていた。
俺の部屋も、月に1度は専門の掃除係が入っている。
でも、機密だらけの地下神殿に掃除係を入れるわけにはいかなかったのだろう。
そうは言っても、リオンは幼い。
リオンにばかり押し付けるなんて……クロスⅦは本当に嫌な奴だ。
物語に出てくる、底地悪の悪い継母みたいだ。
かわいそうなリオン。これからは、俺が守ってやるからなっ!!
まずは掃除だ。
このままリオンに任せっぱなしなら、クロスⅦのことばかりは言えない。
俺だって『底地悪の悪い継母』コース一直線だ。
「リオン、俺にも何かやらせてくれっ!
俺も掃除上手になりたいんだ!!」
そう力強く言うと、
「あ、あの兄様、それでは……ちり取りの係りをお願いしても、よろしいでしょうか?」
控えめな瞳を向けながら、リオンがかわいらしくお願いしてくる。
あんな嫌な師に育てられたのに、こんなに健気に育って……。
思わず目頭を押さえる。
隣国の姫は、たいした美人でもないくせにつんつんしていたし、噂で聞くアレス帝国の第一皇女にいたっては、自分を袖にする男の首を切らせていたという。
皇女は大変な美女らしいが、そんな性格なので、すでに行き遅れの年となっているらしい。ザマァみろ。
それに比べて、ウチのリオンの可愛いことったら!!
俺の保護欲を常にくすぐってやまない。
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