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第5章 外の世界
1.外の世界
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我が国は他国と違い、城の警備は物々しくはない。
別にそれ自体は昔からの事で、ごく普通の見慣れた光景である。
もちろん国境沿いはそれなりに兵士がいるし、各地方も備えは十分にある。
王が国外に出るときは、相当数の精鋭を引き連れていく。
しかし王が住まう城中は警備兵が少なく、女官なども少ない。
ロイヤルエリアでさえ、他国に比べればありえないぐらい手薄いのだ。
それでいて、城に間者が入り込んだとか、王族や重臣が暗殺されたという話は、全く聞かない。
王子や貴族が街に単身遊びに行ってさえ、殺されたり盗まれたりすることはない。
ずっとその事が不思議だったけど、『善の結界』が存在しているなら不思議なことでも何でもないのだろう。
結界内にいる者たちは『悪意』を持ち続ける事ができないのだから。
しかし、これから我が国は変わっていかねばならない。
罪の無い子供一人に全てを押し付けて、安穏とした暮らしをおくるのは、もう終わりだ。
我が国は大国。結界の力無しでも、きちんと防衛出来るぐらいの財力も人力もある。だから、結界や怪しげな魔獣の力になどには頼らず、人の力だけでやっていくべきなのだ。
俺は、見回りをする兵達のタイムスケジュールを頭に叩き込んだ。そして深夜、弟と共にそっと部屋を抜け出した。
もちろん、王族の私室を集めた第四フロアに通ずるロイヤルエリアの前には、いつも複数の兵が待機している。
でも、警備のゆるいウチの城だから、そんなのはどうにでもなる。
例えばエリア内の北端の窓。ここは警備兵から死角となる。
その窓から黒いロープをつり、下の階のバルコニーへ降りる。
この暗さなら、まず外からはわからない。
そのために、わざわざ月のない夜を選んだのだ。
バルコニーは王族クラスの貴賓室に続いているが、今は特に使用されていない。
夕刻に、こっそり鍵を開けておいたそこの窓から室内に侵入することでいったん城内に戻り、足を忍ばせて荷物搬入用の裏階段を下りる。
あとワンフロア。
一番下の階の階段横は、厨房になっている。
この時間なら、もちろん無人のはずだ。
厨房には食料を運び込むための裏口がある。そこから程ない場所に、裏門もある。
正門と違って、夜間は鍵が閉められるだけで、警備兵もいない。
そこから逃げられる。
厨房の鍵は、すでに複製品を作っておいた。
気を鎮めながら、ポケットに入れておいた鍵を確かめる。
あれ……?
俺は厨房の窓を見て、驚いた。
別にそれ自体は昔からの事で、ごく普通の見慣れた光景である。
もちろん国境沿いはそれなりに兵士がいるし、各地方も備えは十分にある。
王が国外に出るときは、相当数の精鋭を引き連れていく。
しかし王が住まう城中は警備兵が少なく、女官なども少ない。
ロイヤルエリアでさえ、他国に比べればありえないぐらい手薄いのだ。
それでいて、城に間者が入り込んだとか、王族や重臣が暗殺されたという話は、全く聞かない。
王子や貴族が街に単身遊びに行ってさえ、殺されたり盗まれたりすることはない。
ずっとその事が不思議だったけど、『善の結界』が存在しているなら不思議なことでも何でもないのだろう。
結界内にいる者たちは『悪意』を持ち続ける事ができないのだから。
しかし、これから我が国は変わっていかねばならない。
罪の無い子供一人に全てを押し付けて、安穏とした暮らしをおくるのは、もう終わりだ。
我が国は大国。結界の力無しでも、きちんと防衛出来るぐらいの財力も人力もある。だから、結界や怪しげな魔獣の力になどには頼らず、人の力だけでやっていくべきなのだ。
俺は、見回りをする兵達のタイムスケジュールを頭に叩き込んだ。そして深夜、弟と共にそっと部屋を抜け出した。
もちろん、王族の私室を集めた第四フロアに通ずるロイヤルエリアの前には、いつも複数の兵が待機している。
でも、警備のゆるいウチの城だから、そんなのはどうにでもなる。
例えばエリア内の北端の窓。ここは警備兵から死角となる。
その窓から黒いロープをつり、下の階のバルコニーへ降りる。
この暗さなら、まず外からはわからない。
そのために、わざわざ月のない夜を選んだのだ。
バルコニーは王族クラスの貴賓室に続いているが、今は特に使用されていない。
夕刻に、こっそり鍵を開けておいたそこの窓から室内に侵入することでいったん城内に戻り、足を忍ばせて荷物搬入用の裏階段を下りる。
あとワンフロア。
一番下の階の階段横は、厨房になっている。
この時間なら、もちろん無人のはずだ。
厨房には食料を運び込むための裏口がある。そこから程ない場所に、裏門もある。
正門と違って、夜間は鍵が閉められるだけで、警備兵もいない。
そこから逃げられる。
厨房の鍵は、すでに複製品を作っておいた。
気を鎮めながら、ポケットに入れておいた鍵を確かめる。
あれ……?
俺は厨房の窓を見て、驚いた。
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