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第4章 鳥篭の外へ
8.鳥篭の外へ★
しおりを挟むいつものルートで、俺たちはこっそりと自室まで戻った。
まだ早朝のため人はほとんどいなかったが、リオンが見つからないよう細心の注意を払う。
フードを深くかぶり、ずっと顔を伏せながら歩いていたリオンは、俺の部屋に入るなり歓声を上げた。
「わあ……! ここが兄様のお部屋なのですね!! 色がいっぱいです!!」
何もかも真っ白い部屋に、物心ついたときから住んでいたリオンは、色にとても興味を示す。
神殿に通っている間に色についてはいくらか教えたし、外の世界には色があふれていることも教えた。
でも、聞くのと実際見るのとでは、やはり全然異なるようだ。
しげしげと眺めては、そっと触ってみる様子が、何とも愛らしく微笑ましい。
「お前、脱出するまで俺と一緒にこの部屋に住めばいいよ。
あんな死体の置いているところに、お前を戻したくないし。
母上はヴィーの世話で忙しいから、めったに自分からはいらっしゃらない。父やエドワードもここ1年は国事が忙しくて、まず部屋にまでは来ない。
女官たちにも、この部屋への入室は禁じておく。
……まあ、元々そんなにこないけどな。12才を機に『なんでも一人でやりなさい』って母上が……。
っと、それよりお前のほうも、地下神殿での食事の差し入れは朝にまとめて1度だって言ってただろ?
その時間だけ、俺が戻って何とかするから、お前はここに居ればいい」
「……でも、僕には訓練とお祈りが……。
僕はまだ仮の継承式しかしていない半人前ですけど、クロスⅦの代わりにきちんとしないと……それに修行もしないと、兄様のお役に立てる立派な神官魔道士になれません」
リオンはそう言って、首を振った。
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