26 / 437
第4章 鳥篭の外へ
1.鳥篭の外へ
しおりを挟む
その年の春は父王について国外に行っていたため、半月以上リオンには会えなかった。
これまでにもそういうことはあったが、今回が一番長い。
あの小さな弟は、さぞ寂しがっているだろう。
リオンは11歳になったというのに、いつまでも小柄なままだ。
もちろん多少背は伸びたのだが、その分俺の背がもっと伸びているので、身長差は益々開いている。
淡い色のふわふわの髪と、すけるように白い肌がなんだか頼りなく、俺は小さな弟をどうしても放っておけない。
リオンは、陽のさす事の無い地下でずっと暮らしてきた。
成長の遅れは、そのせいのように思われる。
もしくは体に施されたという『魔的処理』のせいだろうか?
俺も決して大柄なほうではないが、あの年にはもっと背が高かった。
せめて短時間でも、陽に当ててやりたい。
自由にしてやりたい。
そう思うのに、次期王位継承者である俺に、たったそれだけの力が無い。
己のふがいなさが本当に恨めしい。
帰城後のあれこれを済ませ、いつものようにリオンの元を訪れると、今日は誰も迎えに来なかった。
おかしい。
クロスⅦが祈りの間に篭っている今の時間帯なら、リオンは俺の元に来れるはず。
帰城の日は、あらかじめ伝えておいた。
いつも子犬のように嬉しそうに駆けてくるリオンが、俺の訪れを待っていないなんて。
嫌な予感がしたとき、大部屋から続く金属製の扉が開き、髪を乱れさせ、白い神官服を赤く染めたリオンが現れた。
「……兄様っ!!」
リオンは、はめこまれた皮製の目隠しから涙をあふれさせて、俺に抱きついてきた。
それからハッとしたように、あわてて離れた。
「申し訳ありません。兄様のお衣装が……」
「そんなことはどうでもいい!! 血まみれじゃないか!!
訓練で怪我でもしたのか!?」
「……いいえ。その……そうではなく……」
リオンは言いづらそうに、うつむいた。
これまでにもそういうことはあったが、今回が一番長い。
あの小さな弟は、さぞ寂しがっているだろう。
リオンは11歳になったというのに、いつまでも小柄なままだ。
もちろん多少背は伸びたのだが、その分俺の背がもっと伸びているので、身長差は益々開いている。
淡い色のふわふわの髪と、すけるように白い肌がなんだか頼りなく、俺は小さな弟をどうしても放っておけない。
リオンは、陽のさす事の無い地下でずっと暮らしてきた。
成長の遅れは、そのせいのように思われる。
もしくは体に施されたという『魔的処理』のせいだろうか?
俺も決して大柄なほうではないが、あの年にはもっと背が高かった。
せめて短時間でも、陽に当ててやりたい。
自由にしてやりたい。
そう思うのに、次期王位継承者である俺に、たったそれだけの力が無い。
己のふがいなさが本当に恨めしい。
帰城後のあれこれを済ませ、いつものようにリオンの元を訪れると、今日は誰も迎えに来なかった。
おかしい。
クロスⅦが祈りの間に篭っている今の時間帯なら、リオンは俺の元に来れるはず。
帰城の日は、あらかじめ伝えておいた。
いつも子犬のように嬉しそうに駆けてくるリオンが、俺の訪れを待っていないなんて。
嫌な予感がしたとき、大部屋から続く金属製の扉が開き、髪を乱れさせ、白い神官服を赤く染めたリオンが現れた。
「……兄様っ!!」
リオンは、はめこまれた皮製の目隠しから涙をあふれさせて、俺に抱きついてきた。
それからハッとしたように、あわてて離れた。
「申し訳ありません。兄様のお衣装が……」
「そんなことはどうでもいい!! 血まみれじゃないか!!
訓練で怪我でもしたのか!?」
「……いいえ。その……そうではなく……」
リオンは言いづらそうに、うつむいた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。

噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる