滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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第3章 王家の秘密

2・王家の秘密

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 そういう実態がわかるようになると、300年間見事に国を治めてきた歴代の王たちは確かに偉大と言える。

 また、歴代の王たちは『自分のためだけの贅沢』などはしなかった。
 他国の王のように、何人もの妃を娶ることもない。

 俺は王子だが、リオンのように洗濯まで自分でする事はないにしても、身の回りのことは全て自分自身でする。
 着替えも、入浴も、自室の整理も、剣の手入れも……すべて。

 それは俺が王になっても変わることはないだろうし、娶る妃も選びに選んだ一人だけだ。

 もちろん例外はある。
 跡継ぎだけは何が何でも確保せねばならないので、もしもの時は父と同じように、こっそりと妾妃を迎えることになるだろう。

 歴代の王たちは『呪い』を信じて始祖王の定めた、古めかしい法律に従っていたわけではなかったはずだ。
 今の世でも十分尊重に値するから従っていた。
 ただ、それだけなのだということが、今の歳になって、やっと俺にもわかるようになった。

 父の弟は幼くして事故死している。
 俺に跡継ぎがなかったら、王家の血は絶えてしまうだろう。そうすれば国は乱れるに違いない。
 多くの者が内乱、もしくは外圧に巻き込まれ、死ぬかも知れない。

 昔はただただ憤って父上を軽蔑したが、今なら……母上に申し訳ないながら、妾妃を迎えることは正当な行為だったと理解できる。

 父の妾妃は、子をなすまでは城内に密かに住まわされていたらしい。
 エドワードは、一度だけその女性を見たそうだ。
 真っ白い雪を思わせる、可憐かつ、凄い美人だったと言っていた。

 まぁ、リオンを見ればそれは容易に納得できる。
 もしかしたらその人は、母上をしのぐほどの美しさだったかもしれない。

 ただ、彼女の存在は完全に隠されており、食事係が通うだけの寂しい暮らしぶりだったという。

 その女性は亡くなって久しいらしいが、リオンが生きて地下に幽閉されていたのだから、母親の方も生きている可能性はある。そう思い探したが、結局見つからなかった 。

 考えたくは無いが、実子のリオンに対してさえあの仕打ちなのだから、妹姫ヴィアリリスの生まれた今となっては、その女性は始末されたのかもしれない。

 リオン自身は、母親について何も知らなかった。
 生まれてすぐに引き離されたらしく『母』という言葉さえ知らないのだから、それ以上聞きようも無い。
 深く説明して、リオンを傷つけるのもはばかられた。

 それからも俺は、様々な事を調べた。
 悪いとは思ったけれど、母が離宮に療養に行っている間に、母上の部屋まで調べた。

 若い頃の父上が母上に当てたと思われるラブレターの束を、ベットの2重引き出しから見つけた時には思わず笑ってしまったが、笑えないものも発見した。
 母上の昔の日記帳だ。

 そこにはこう書かれていた。
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