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第2章 名前のない少年
12.名前のない少年
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クロスⅦがいない間に、リオンは定められた修行をしなければならない。
神官候補生なら、普通は『修行』と言っても精神的なものが多いと聞いている。
しかしリオンのそれは、俺の想像のはるか上を行くものだった。
リオンは初めて会ったあの時に持っていた、刀のようなもの……代々のクロス神官が9歳になれば受け継ぐという不思議な魔剣『エラジー』を携えると壁を蹴って跳躍し、なんと部屋の頭上に縦横に張ってある白い帯状のロープに飛び乗った。
そして眼も見えていないのに、かすかな音をたてる小さな鈴状の的を次々と刺し貫いていったのだ。
俺も王子なので、毎日相当の時間を武術の訓練に充てて鍛えている。でもこれは、そんな甘っちょろい訓練じゃない。
落ちても死にはしないかもしれないが、それでも相当の高さだ。
唖然としていると、すべての的を軽々と破壊したリオンが、まるで羽をまとったかのような軽い音を立てて、ロープから俺の目の前に飛び降りてきた。
「お前……毎日あんな危険な修行をしているのか?」
「はい。毎日です。20歳になれば僕は仮神官を経て、晴れて正式な神官となることが出来ます。いずれ神務の全てと『魔獣の魂』を受け継ぐ僕には、強い体と精神がいるのです。
この訓練は、それに最適だとクロスⅦがおっしゃっていました。
でも、もう慣れましたので、そんなに危険はないのですよ。むしろ祈りの修行のほうが堪えます。
……あ、でも大丈夫です。
尊き兄様のお役に立てるよう、僕、一生懸命がんばります!!」
リオンが嬉しそうに笑う。
お役に?
何のために?
俺のために?
わが国はもう、300年近く平和に過ごしている。
歴史のある、押しも押されぬ大国だ。
つらい修行や時代錯誤な祈りが、どれほどの役に立つと言うのだ。
神官候補生なら、普通は『修行』と言っても精神的なものが多いと聞いている。
しかしリオンのそれは、俺の想像のはるか上を行くものだった。
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そして眼も見えていないのに、かすかな音をたてる小さな鈴状の的を次々と刺し貫いていったのだ。
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落ちても死にはしないかもしれないが、それでも相当の高さだ。
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でも、もう慣れましたので、そんなに危険はないのですよ。むしろ祈りの修行のほうが堪えます。
……あ、でも大丈夫です。
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お役に?
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