滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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第2章 名前のない少年

11.名前のない少年

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 それから俺は、この秘密の地下神殿に通うようになった。
 もちろんそれには細心の注意が必要だ。

 絶対に見つからないよう、エドワードたちの仕事の隙をうかがわなければならないし、リオンはクロスⅦから与えられた課題を奴がいない間にこなさねばならない。 

 だから会えるのは、ホンの数分だけだ。

 それに、外界から持ち込んだものは、その存在を知られるとまずいので何も受け取ってはくれない。
 代わりに、食べれば無くなる菓子などは凄く喜んでくれた。

 でも、その様子を見るにつけ、俺の心はまた痛くなる。

 リオンは菓子の存在も知らなかった。
 『甘い』という言葉も『おいしい』という言葉も知らなかった。
 王子だというのに、粗末な冷めた食事しか与えられていないようだ。

 驚いたのは、それだけではない。

 ある日俺は、数分会うだけでは満足できなくて、せめてエドワードが出張の時ぐらいは長く弟の姿を見ていたいと思い、リオンの課題を見せてもらうことにした。

 リオンは少しためらったものの、すぐに頷いてくれた。
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