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第2章 名前のない少年
6.名前のない少年★
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「エ……エルシド王子……エルシド……兄、様……?」
カラン……と、刀にも似た不思議な得物が床に落ちた。
刀身はまるで光が溶けるように無くなり、柄もその形を小さく変える。
何なんだコレは?
まるで、伝承に伝わる魔剣のようだ。
剣に気を取られていると、後ろから叫ぶような声がした。
「申し訳ありません!!
クロスⅦ(セブン)以外に人間を見たことがなくて僕……」
振り返って見ると、そこには白い神官服を着た可愛らしい子供がへたり込んでいた。
これが俺の弟……?
メチャクチャ可愛いんだけどっ!!!
どちらかというと、その容姿は女の子みたいだ。
というか、…………じっくり見ても女の子にしか見えない。
髪の色は俺や父上と同じブロンドだがやや淡い。
胸には十字を文様化した例の形の飾り留めがあり、体つきはとても華奢。
腰より長い柔らかな髪と小造りな白い顔も、少年というより愛らしい少女を思わせる要素となっていた。
しかし眼には、幾重にもきつく包帯が巻かれていた。
何か重篤な病気なのだろうか?
だとすれば、少しかわいそうな気がした。
「……本当に申し訳ありませんっ!
次期国王たる尊き兄様に対してこのようなご無礼。どうぞ……どうぞお許しを……」
平伏しながら小さく震える異母弟を見ていると、なんだか自分が幼い女の子をいじめている悪者のような気がしてならない。
「別にそんなにかしこまらなくてもいいよ、兄弟なんだから。
ほら、つかまって?」
そっと手を伸ばして引き起こしてやると、少年は花が咲いたように笑った。
うぁ……可愛いっ!! 可愛過ぎるっっ!!!
母上を悩ませる不義の子を追っ払ってやるつもりだったのに、不覚にも心がざわめく。
妹も可愛いが、『弟』というのもこんなに可愛いものなのかぁ……。
カラン……と、刀にも似た不思議な得物が床に落ちた。
刀身はまるで光が溶けるように無くなり、柄もその形を小さく変える。
何なんだコレは?
まるで、伝承に伝わる魔剣のようだ。
剣に気を取られていると、後ろから叫ぶような声がした。
「申し訳ありません!!
クロスⅦ(セブン)以外に人間を見たことがなくて僕……」
振り返って見ると、そこには白い神官服を着た可愛らしい子供がへたり込んでいた。
これが俺の弟……?
メチャクチャ可愛いんだけどっ!!!
どちらかというと、その容姿は女の子みたいだ。
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胸には十字を文様化した例の形の飾り留めがあり、体つきはとても華奢。
腰より長い柔らかな髪と小造りな白い顔も、少年というより愛らしい少女を思わせる要素となっていた。
しかし眼には、幾重にもきつく包帯が巻かれていた。
何か重篤な病気なのだろうか?
だとすれば、少しかわいそうな気がした。
「……本当に申し訳ありませんっ!
次期国王たる尊き兄様に対してこのようなご無礼。どうぞ……どうぞお許しを……」
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「別にそんなにかしこまらなくてもいいよ、兄弟なんだから。
ほら、つかまって?」
そっと手を伸ばして引き起こしてやると、少年は花が咲いたように笑った。
うぁ……可愛いっ!! 可愛過ぎるっっ!!!
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