11 / 437
第2章 名前のない少年
5.名前のない少年
しおりを挟む
部屋には数え切れないぐらいたくさんの白い帯状の紐が、ロープのように壁から壁に高い位置で縦横につなぎとめられていた。
隣に続く間がいくつかあるようだが、ここ同様、頑丈な金属製の扉が閉められている。
一歩部屋に踏み出したところで、首筋に冷やりとした物が当たった。
刀の切っ先!?
いやそれは刀と呼ぶには細すぎたが、十分以上の長さがあり、刃物特有の光を放っていた。
「動いたら殺します」
斜め後ろから発せられた声は、思いのほか幼かった。
高く透き通るような幼い声だ。
「名前と所属を答えなさい。答えたくないなら死になさい」
しかし幼さとは裏腹に、その言葉には心を凍らせるほどの冷たさと迫力があった。
「エ……エルシド……俺はこの国の王子だ。知らないのかっ!! 無礼者!!」
正直言って、この者に『王子の名』が通用するかどうか自信が無かった。
刃を後ろから構えているのは、おそらくあの、忌まわしい異母弟。
俺にはあいつを疎む理由がある。
しかしあいつにだって、俺を憎む理由がある。
同じ王の息子だと言うのに、俺と違ってあいつは城の地下から出る事すら許されていないらしい。
なら、こうやって刃をつきつけ、殺そうとしても不思議じゃない。
隣に続く間がいくつかあるようだが、ここ同様、頑丈な金属製の扉が閉められている。
一歩部屋に踏み出したところで、首筋に冷やりとした物が当たった。
刀の切っ先!?
いやそれは刀と呼ぶには細すぎたが、十分以上の長さがあり、刃物特有の光を放っていた。
「動いたら殺します」
斜め後ろから発せられた声は、思いのほか幼かった。
高く透き通るような幼い声だ。
「名前と所属を答えなさい。答えたくないなら死になさい」
しかし幼さとは裏腹に、その言葉には心を凍らせるほどの冷たさと迫力があった。
「エ……エルシド……俺はこの国の王子だ。知らないのかっ!! 無礼者!!」
正直言って、この者に『王子の名』が通用するかどうか自信が無かった。
刃を後ろから構えているのは、おそらくあの、忌まわしい異母弟。
俺にはあいつを疎む理由がある。
しかしあいつにだって、俺を憎む理由がある。
同じ王の息子だと言うのに、俺と違ってあいつは城の地下から出る事すら許されていないらしい。
なら、こうやって刃をつきつけ、殺そうとしても不思議じゃない。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説


思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる