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第2章 名前のない少年
5.名前のない少年
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部屋には数え切れないぐらいたくさんの白い帯状の紐が、ロープのように壁から壁に高い位置で縦横につなぎとめられていた。
隣に続く間がいくつかあるようだが、ここ同様、頑丈な金属製の扉が閉められている。
一歩部屋に踏み出したところで、首筋に冷やりとした物が当たった。
刀の切っ先!?
いやそれは刀と呼ぶには細すぎたが、十分以上の長さがあり、刃物特有の光を放っていた。
「動いたら殺します」
斜め後ろから発せられた声は、思いのほか幼かった。
高く透き通るような幼い声だ。
「名前と所属を答えなさい。答えたくないなら死になさい」
しかし幼さとは裏腹に、その言葉には心を凍らせるほどの冷たさと迫力があった。
「エ……エルシド……俺はこの国の王子だ。知らないのかっ!! 無礼者!!」
正直言って、この者に『王子の名』が通用するかどうか自信が無かった。
刃を後ろから構えているのは、おそらくあの、忌まわしい異母弟。
俺にはあいつを疎む理由がある。
しかしあいつにだって、俺を憎む理由がある。
同じ王の息子だと言うのに、俺と違ってあいつは城の地下から出る事すら許されていないらしい。
なら、こうやって刃をつきつけ、殺そうとしても不思議じゃない。
隣に続く間がいくつかあるようだが、ここ同様、頑丈な金属製の扉が閉められている。
一歩部屋に踏み出したところで、首筋に冷やりとした物が当たった。
刀の切っ先!?
いやそれは刀と呼ぶには細すぎたが、十分以上の長さがあり、刃物特有の光を放っていた。
「動いたら殺します」
斜め後ろから発せられた声は、思いのほか幼かった。
高く透き通るような幼い声だ。
「名前と所属を答えなさい。答えたくないなら死になさい」
しかし幼さとは裏腹に、その言葉には心を凍らせるほどの冷たさと迫力があった。
「エ……エルシド……俺はこの国の王子だ。知らないのかっ!! 無礼者!!」
正直言って、この者に『王子の名』が通用するかどうか自信が無かった。
刃を後ろから構えているのは、おそらくあの、忌まわしい異母弟。
俺にはあいつを疎む理由がある。
しかしあいつにだって、俺を憎む理由がある。
同じ王の息子だと言うのに、俺と違ってあいつは城の地下から出る事すら許されていないらしい。
なら、こうやって刃をつきつけ、殺そうとしても不思議じゃない。
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