9 / 437
第2章 名前のない少年
4.名前のない少年
しおりを挟む
昔……300年もの昔、建国の能臣・大魔道士アースラが代々の王に受け継がせたという不思議な文様に、それがとても似ているのだ。
それは王の子供である俺の手のひらにもあり、特定の呪文を唱えることで浮かび上がってくる。
文様が浮かび上がることはすなわち『王の実子』である証明であり、王位を継ぐための資格の第一条件でもある。
もっとも、そういう不思議な事が王やその子供の体に起こりうると言っても、魔法はわが国ではとうにすたれ、今は魔道士の一人さえもいない。
でも、そうであったとしても……もしかしたらこの十字文様が、ここを開ける鍵となるのでは……?
俺はドキドキしながら呪文を唱え、浮かび上がらせた文様をレリーフに押し当てた。
ドアはそのとたん、鈍い音を立ててゆっくりと横に開き始めた。
ここにきっと、母上を悩ませた不義の子がいる。
心優しい母上は、その子の事を気に病んでいらっしゃたけど、所詮血統を維持するためにだけ取り寄せられた、表にも出せない女との間に出来た子供だ。
見つけ出してから脅し文句の一つも言って、それから……まあ行く当てのない子供を身一つで追い出すのも何だか可哀想なので、お金でも握らせて……口の堅い後見人をつけ、密 かに城から遠いところに追い出してしまえばいい。
ドアが完全に開いた。
真っ白い部屋だった。
天井が高く、ひたすら広い。
けれど、それだけ。
生活感も何もない、真っ白い部屋に真っ白いベットと真っ白い机。
白い本棚には古語で書かれた分厚い本。
見ているだけで、なんとも奇妙な感覚を覚えてしまう。
それは王の子供である俺の手のひらにもあり、特定の呪文を唱えることで浮かび上がってくる。
文様が浮かび上がることはすなわち『王の実子』である証明であり、王位を継ぐための資格の第一条件でもある。
もっとも、そういう不思議な事が王やその子供の体に起こりうると言っても、魔法はわが国ではとうにすたれ、今は魔道士の一人さえもいない。
でも、そうであったとしても……もしかしたらこの十字文様が、ここを開ける鍵となるのでは……?
俺はドキドキしながら呪文を唱え、浮かび上がらせた文様をレリーフに押し当てた。
ドアはそのとたん、鈍い音を立ててゆっくりと横に開き始めた。
ここにきっと、母上を悩ませた不義の子がいる。
心優しい母上は、その子の事を気に病んでいらっしゃたけど、所詮血統を維持するためにだけ取り寄せられた、表にも出せない女との間に出来た子供だ。
見つけ出してから脅し文句の一つも言って、それから……まあ行く当てのない子供を身一つで追い出すのも何だか可哀想なので、お金でも握らせて……口の堅い後見人をつけ、密 かに城から遠いところに追い出してしまえばいい。
ドアが完全に開いた。
真っ白い部屋だった。
天井が高く、ひたすら広い。
けれど、それだけ。
生活感も何もない、真っ白い部屋に真っ白いベットと真っ白い机。
白い本棚には古語で書かれた分厚い本。
見ているだけで、なんとも奇妙な感覚を覚えてしまう。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる