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第2章 名前のない少年
4.名前のない少年
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昔……300年もの昔、建国の能臣・大魔道士アースラが代々の王に受け継がせたという不思議な文様に、それがとても似ているのだ。
それは王の子供である俺の手のひらにもあり、特定の呪文を唱えることで浮かび上がってくる。
文様が浮かび上がることはすなわち『王の実子』である証明であり、王位を継ぐための資格の第一条件でもある。
もっとも、そういう不思議な事が王やその子供の体に起こりうると言っても、魔法はわが国ではとうにすたれ、今は魔道士の一人さえもいない。
でも、そうであったとしても……もしかしたらこの十字文様が、ここを開ける鍵となるのでは……?
俺はドキドキしながら呪文を唱え、浮かび上がらせた文様をレリーフに押し当てた。
ドアはそのとたん、鈍い音を立ててゆっくりと横に開き始めた。
ここにきっと、母上を悩ませた不義の子がいる。
心優しい母上は、その子の事を気に病んでいらっしゃたけど、所詮血統を維持するためにだけ取り寄せられた、表にも出せない女との間に出来た子供だ。
見つけ出してから脅し文句の一つも言って、それから……まあ行く当てのない子供を身一つで追い出すのも何だか可哀想なので、お金でも握らせて……口の堅い後見人をつけ、密 かに城から遠いところに追い出してしまえばいい。
ドアが完全に開いた。
真っ白い部屋だった。
天井が高く、ひたすら広い。
けれど、それだけ。
生活感も何もない、真っ白い部屋に真っ白いベットと真っ白い机。
白い本棚には古語で書かれた分厚い本。
見ているだけで、なんとも奇妙な感覚を覚えてしまう。
それは王の子供である俺の手のひらにもあり、特定の呪文を唱えることで浮かび上がってくる。
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でも、そうであったとしても……もしかしたらこの十字文様が、ここを開ける鍵となるのでは……?
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