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第1章 おとぎの国に住む王子
3.おとぎの国に住む王子
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勉強の時間が終わると俺はいつも、こっそりと厨房に行く。
おやつは王族専用の菓子職人が作るそれなりのものが出るのだが、俺はジェーンおばさんが残り物でぱぱっと作る素朴なお菓子の方が好きで、いつもたかりに行っているのだ。
おばさんは本当に腕のいい料理人で、俺のことも小さい頃からとても可愛がってくれている。だから勉強の骨休めにもなってすごく楽しい。
その日もエドワードに見つからないようこっそりと忍んで行き、薄く開いた窓からのぞき込むと……おばさんは珍しく神妙な顔をしてチーフと話をしていた。
別に立ち聞きするつもりではなかったが、俺はその話の内容に出て行くに行けなくなった。
ええっ!!
父上が浮気っ!!!
いや、無い無い。絶対無い!!
確かに父上は金髪・金眼の正統派美形で、いまだ城のミーハーな女たちにキャーキャー言われている。
でもそんな声なぞ耳に入らないぐらい父は母上にぞっこんで、超でろ甘だ。
それにうちの国には始祖王が定めた絶対法律があり、后は一人と決まっている。
もちろん妾など、もってのほかだ。
愛妻家で有名だった『始祖王シヴァ』は、自身も複数の后や妾を置くことは絶対になかった。
同じくシヴァ王の右腕であり、法律の作成に深く関わったとされる『大魔道士アースラ』は神官を兼任していたため生涯独身。
かなりの潔癖症と伝わっている。
それゆえこのような絶対法律を作ったのだろうが、罰則も中々厳しいものを遺している。
違反した王や王族は上半身裸になって腹に愉快な顔を描いた上、鼻の穴に羽ペンを突っ込んで国中隅々までザルを持って踊り回らねばならないのだ。
その地味に恐ろしい刑罰のためか、浮気を試みたチャレンジャーな王は有史以来一人もいない。
「……で……本当にお気の毒で……王妃様は……」
何々、肝心なところがよく聞こえない。
バレないように窓にへばりついて聞き耳を立てていたら、ポン……と頭を叩かれた。
げ。エドワード!!
こんなタイミングで来るなよ!!
おやつは王族専用の菓子職人が作るそれなりのものが出るのだが、俺はジェーンおばさんが残り物でぱぱっと作る素朴なお菓子の方が好きで、いつもたかりに行っているのだ。
おばさんは本当に腕のいい料理人で、俺のことも小さい頃からとても可愛がってくれている。だから勉強の骨休めにもなってすごく楽しい。
その日もエドワードに見つからないようこっそりと忍んで行き、薄く開いた窓からのぞき込むと……おばさんは珍しく神妙な顔をしてチーフと話をしていた。
別に立ち聞きするつもりではなかったが、俺はその話の内容に出て行くに行けなくなった。
ええっ!!
父上が浮気っ!!!
いや、無い無い。絶対無い!!
確かに父上は金髪・金眼の正統派美形で、いまだ城のミーハーな女たちにキャーキャー言われている。
でもそんな声なぞ耳に入らないぐらい父は母上にぞっこんで、超でろ甘だ。
それにうちの国には始祖王が定めた絶対法律があり、后は一人と決まっている。
もちろん妾など、もってのほかだ。
愛妻家で有名だった『始祖王シヴァ』は、自身も複数の后や妾を置くことは絶対になかった。
同じくシヴァ王の右腕であり、法律の作成に深く関わったとされる『大魔道士アースラ』は神官を兼任していたため生涯独身。
かなりの潔癖症と伝わっている。
それゆえこのような絶対法律を作ったのだろうが、罰則も中々厳しいものを遺している。
違反した王や王族は上半身裸になって腹に愉快な顔を描いた上、鼻の穴に羽ペンを突っ込んで国中隅々までザルを持って踊り回らねばならないのだ。
その地味に恐ろしい刑罰のためか、浮気を試みたチャレンジャーな王は有史以来一人もいない。
「……で……本当にお気の毒で……王妃様は……」
何々、肝心なところがよく聞こえない。
バレないように窓にへばりついて聞き耳を立てていたら、ポン……と頭を叩かれた。
げ。エドワード!!
こんなタイミングで来るなよ!!
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