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第1章 おとぎの国に住む王子
1.おとぎの国に住む王子★
しおりを挟む「……であるからして……聞いておられますかな王子?」
「いてっ!」
俺の帝王学教育係のエドワードはいつも容赦がない。
並み居る妃候補の中から選ばれた母上の『兄』だけあって見てくれは大変麗しいが、俺がちょっとサボっただけで鬼と化す。
今日もいい陽気だなぁ……なんて少し余所見をしただけで、辞書の角でゴツンとやられた。
「あ~あ。母上はあんなにお優しいのにエドワードの方はなぁ。
普通『カド』でなんて叩くか?」
「愛の鞭ですよ。ありがたくお受けください」
奴は当然! とばかりに胸を張ってにっこりと笑った。
自身も厳しい教育を受けてきたと言うこの若く美しい伯父は、城の他の家臣に比べてもうんと厳しい。
いたいけな11歳の王子の頭を平然と辞書のカドで叩くぐらいだから、他も推して量るべし。
しかしそこが父上に気に入られ、教育係り筆頭に抜擢された。
俺にとっては大変な災難である。
エドワードは帰化を済ませているが母上同様、他国出身である。
身分は、辺境の最貧国リードランドの王子の一人。金髪碧眼の輝くばかりの麗人だが、
「ウチは皇太子に三つ子が出来たのでお前はもういらぬ。
皇族が一人増えるだけでも国の経費が増えるし、お前も大国エルシオンで養ってもらうがよい」
と、王である父君に言われ、
『巨大王国の若き世継ぎに見初められた、輝かしい妹の オ ・ マ ・ ケ』
……として13年前に故国を追い出された。
普通なら激しく凹みそうなところだが、エドワードは
「この国のほうが食事がおいしいから、むしろ良かった!」
など、とんでもないことを言って、幸せそうだ。
実際、『貧国の王子』より『大国の家臣』のほうが良い暮らしが出来るようで、エドワードは教育係としてだけでなく、父上の優秀な臣下として楽しそうに仕えている。
そんなわけで、伯父エドワードは俺が生まれる前からこの国にいるのだった。
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