433 / 437
再会小話5 だから、幸せに1
再会小話5 だから、幸せに4
しおりを挟む
奴らの家は、すぐに見つかった。
意外と聖廟から近い村だった。
これなら元いたところから、馬車で半日かかるかどうかというところだなァ。
村で一軒しかない念写師の家だったので、誰に聞いても奴らを知っていた。
容姿も目立つしな。
しかしまだ夕暮れ前だというのに、『本日休業』の看板がかかったままだ。
とりあえず呼び鈴を鳴らそうと手を上げたところで、いきなりドアが開いた。
そう、リオンだ。
相変わらず心臓に悪い奴である。
「……………………いらっしゃい、ヴァティールさん」
フリルいっぱいの可愛らしいワンピースを着たリオンだが、テンションは限りなく低く、葬式のような暗さを醸し出している。
うお、何かあったのかッ!?
つい条件反射で身構えてしまう。
「……とりあえず、中にお入り下さい」
リオンがうなだれたままワタシを案内する。
通されたリビングは品良くまとめられ、田舎にしてはこぎれいにしてある。
窓辺には花も飾ってあった。
しかし、何かが足りない。
ああ、あれだ。
金魚のフンのように弟にくっついて回っている、あの馬鹿兄の姿が見あたらないのだ。
「エルはどうしているのだ?
家からも近所からも気配が感じられないがァ……。
喧嘩でもしたのか?」
そう問うと、リオンはしょんぼりとしたまま首を振った。
「兄様はブルボア王都に用があって、僕だけがお留守番なのです」
へえ?
「ナゼ一緒に行かなかったのだ? オマエらしくも無い」
「はあ……少々わけがありまして」
リオンは言いづらそうに言葉を濁した。
「まさか浮気か!?」
反射的に言ってからマズイと気がついたが、もう遅かった。
「……そんな事を言う口は、封じてしまいましょうかねぇぇ」
顔はにこやかだが、目は笑っていない。
アースラそっくりの邪悪な笑みだ。
今のワタシの体が本来の物なら、特別な罠でも仕掛けられてない限り、リオンには間違いなく勝てる。
しかし今使っているのは、愛娘の体。
本気で戦えば、アリシアの体は壊れてしまうだろう。
悔しいが、ここは『謝る』一択だ。
「あ、いや、これはワタシが悪かった!
オマエたちほど似合いな夫婦はいないともッ!!」
心の中で『割れ鍋に綴じ蓋的な意味でなァ』と付け足しながらも、その場を取り繕う。
「そ、そうですよねっ!」
リオンの顔が少し明るくなる。
「そうとも! オマエは可愛いし、料理も掃除も上手い。良き妻ではないか!」
『とんでもないヤンデレだけどな』と、心の中で更に付け足しつつ歯の浮くようなセリフを並べる。
しかしその甲斐あってか、リオンの瞳から邪悪な炎は完全に消えた。
「ですよねっ。
兄様もいつもいつも、僕のことを『可愛い』って言って下さいますもの~❤」
邪悪な炎が消えた事は喜ばしいのだが、何だか別の炎がともってしまったらしい。
そこから地獄のノロケがスタートした。
兄が居なくてよっぽど暇だったのか、リオンはそれから14時間もノロケ続けた。
リオンたちの家に着いたのは夕刻前だったので、食事は出してくれた。
しかし、作っている間も台所に引っ張っていかれ、ノロケを聞かされ続けた。
食事が終わったら皿洗いを手伝わされ、もちろんその間もノロケは続行だ。
しかも、そろそろ話を切り出そうとしたその瞬間、
「僕、一度女子会?……と、いうのをやってみたかったのです❤
今夜は二人で楽しくお喋りしましょうねっ♪」
と言いやがり、徹夜でノロケに付き合わされた。
誰が女子なんだ?
女子なんてココには一人も居ないだろうがッ!!
以前より明るくなったのは喜ばしいが、付き合うこっちの身にもなってくれ……。
夜も白々と明け、鳥たちのさえずりが聞こえだす。
そろそろ我慢も限界かと思われた頃、リオンが思い出したように呟いた。
「……そういえばヴァティールさん、わざわざ訪ねていらしたのは、何か御用でもお有りだったからでしょうか?」
気づくのが遅せェ!!
しかし、リオンに頼みごとをするなら今がチャンスだ!
14時間もノロケを聞いてやったのだから、今度はこちらの望みも聞いてくれッ!!
意外と聖廟から近い村だった。
これなら元いたところから、馬車で半日かかるかどうかというところだなァ。
村で一軒しかない念写師の家だったので、誰に聞いても奴らを知っていた。
容姿も目立つしな。
しかしまだ夕暮れ前だというのに、『本日休業』の看板がかかったままだ。
とりあえず呼び鈴を鳴らそうと手を上げたところで、いきなりドアが開いた。
そう、リオンだ。
相変わらず心臓に悪い奴である。
「……………………いらっしゃい、ヴァティールさん」
フリルいっぱいの可愛らしいワンピースを着たリオンだが、テンションは限りなく低く、葬式のような暗さを醸し出している。
うお、何かあったのかッ!?
つい条件反射で身構えてしまう。
「……とりあえず、中にお入り下さい」
リオンがうなだれたままワタシを案内する。
通されたリビングは品良くまとめられ、田舎にしてはこぎれいにしてある。
窓辺には花も飾ってあった。
しかし、何かが足りない。
ああ、あれだ。
金魚のフンのように弟にくっついて回っている、あの馬鹿兄の姿が見あたらないのだ。
「エルはどうしているのだ?
家からも近所からも気配が感じられないがァ……。
喧嘩でもしたのか?」
そう問うと、リオンはしょんぼりとしたまま首を振った。
「兄様はブルボア王都に用があって、僕だけがお留守番なのです」
へえ?
「ナゼ一緒に行かなかったのだ? オマエらしくも無い」
「はあ……少々わけがありまして」
リオンは言いづらそうに言葉を濁した。
「まさか浮気か!?」
反射的に言ってからマズイと気がついたが、もう遅かった。
「……そんな事を言う口は、封じてしまいましょうかねぇぇ」
顔はにこやかだが、目は笑っていない。
アースラそっくりの邪悪な笑みだ。
今のワタシの体が本来の物なら、特別な罠でも仕掛けられてない限り、リオンには間違いなく勝てる。
しかし今使っているのは、愛娘の体。
本気で戦えば、アリシアの体は壊れてしまうだろう。
悔しいが、ここは『謝る』一択だ。
「あ、いや、これはワタシが悪かった!
オマエたちほど似合いな夫婦はいないともッ!!」
心の中で『割れ鍋に綴じ蓋的な意味でなァ』と付け足しながらも、その場を取り繕う。
「そ、そうですよねっ!」
リオンの顔が少し明るくなる。
「そうとも! オマエは可愛いし、料理も掃除も上手い。良き妻ではないか!」
『とんでもないヤンデレだけどな』と、心の中で更に付け足しつつ歯の浮くようなセリフを並べる。
しかしその甲斐あってか、リオンの瞳から邪悪な炎は完全に消えた。
「ですよねっ。
兄様もいつもいつも、僕のことを『可愛い』って言って下さいますもの~❤」
邪悪な炎が消えた事は喜ばしいのだが、何だか別の炎がともってしまったらしい。
そこから地獄のノロケがスタートした。
兄が居なくてよっぽど暇だったのか、リオンはそれから14時間もノロケ続けた。
リオンたちの家に着いたのは夕刻前だったので、食事は出してくれた。
しかし、作っている間も台所に引っ張っていかれ、ノロケを聞かされ続けた。
食事が終わったら皿洗いを手伝わされ、もちろんその間もノロケは続行だ。
しかも、そろそろ話を切り出そうとしたその瞬間、
「僕、一度女子会?……と、いうのをやってみたかったのです❤
今夜は二人で楽しくお喋りしましょうねっ♪」
と言いやがり、徹夜でノロケに付き合わされた。
誰が女子なんだ?
女子なんてココには一人も居ないだろうがッ!!
以前より明るくなったのは喜ばしいが、付き合うこっちの身にもなってくれ……。
夜も白々と明け、鳥たちのさえずりが聞こえだす。
そろそろ我慢も限界かと思われた頃、リオンが思い出したように呟いた。
「……そういえばヴァティールさん、わざわざ訪ねていらしたのは、何か御用でもお有りだったからでしょうか?」
気づくのが遅せェ!!
しかし、リオンに頼みごとをするなら今がチャンスだ!
14時間もノロケを聞いてやったのだから、今度はこちらの望みも聞いてくれッ!!
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中


思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる