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再会小話4・リオンのトホホ外伝
再会小話4・リオンのトホホ外伝 3
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「まさか。それは禁句中の禁句だと兄様から教わりました。
その頃には僕にも『世間並みの常識』が備わっていましたので、とても辛かったのですが、兄の話は一言たりとも致しませんでした。
そして――――――まずは受付No.1の村の娘さんから付き合ってみることにしたのです」
リオンはその日々を懐かしむように目を細めた。
「でも……でもね、二人で仲良くデートしていると、村の人々が皆して僕たちを冷やかすのです」
へー。そんなことが。意外だなァ。
でも、リオンにしては『まとも』な青春の1Pを刻んでいるではないか。
ハッキリ言って見直した。
「良いじゃないか。冷やかされるぐらいアツアツなら、上手くいってたってことなのだろう?
何も心配はないんじゃないかァ?」
そう言うと、リオンは真剣なまなざしで首を振った。
「違うのです。『よっ! 彼氏の方が可愛いから○○ちゃんももっと頑張りなよ!』とか『女の子らしさでも彼氏に負けてんじゃん』とか公私にわたって村民に言われまくったせいか、この村の志願者女性・受付No.1~42番さんまでがすべて次々と欝に。
もちろん全員にフラレて終わった上、43~61番までの女の子は店で一緒に写真を撮った後すぐに棄権を申し渡してきました。ふられるまでの平均時間は約30分。付き合った記念の写真が欲しかっただけのようです。酷いと思いませんか?
以後は村の娘さん達から避けられるようになっちゃったし、いったいこの僕のどこが悪かったというのでしょう?」
リオンはそう言ってうつむき、エルはもらい泣きしたのか、そっと涙をハンカチでぬぐっている。
「……そ、そりゃ、災難だったな。
でもオマエや少女たちより、冷やかすヤツラの方が悪いよなァ?」
あんなリオンでも『まとも』になれる分岐点があったのに、とんでもない村人たちだ。
ワタシがその場にいたなら、ヤジを飛ばす奴らは全員シメ上げて、ちゃんと若いカップルを温かく見守ってやったぞ?
「それで今度は、村の外から来たお客さんの女の子と付き合いました。
デートは冷やかされたりしないように、村の外のみです。
健全に、大きな公園にお弁当を持って出かけました」
「おお、リオンにしては中々やるなァ。
今度は外野も煩くないし、イケルんじゃないか?」
そう声をかけると、リオンは首を振った。
「ところが、僕の作ったお弁当を食べた女の子は段々と顔色が悪くなっていき、その後すぐフラレてしまいました」
ハテナ?
リオンのメシって、そんなに不味かったっけ?
「何でだ?
前に食わせてもらったときは行列レストラン並みの味だったんだがなァ。
管理が悪かったとかで腐っていたのか?」
「いえまさか。
衛生面にも気温にも気を配っていました。失礼なこと言わないでください。
もちろん、味にも自信はありました。
でも次の女の子にも、その次の女の子のときも……更に頑張って美味しく作ったのに全員にふられました。
最後の子の捨て台詞から察するに、僕の方が格段にお料理が上手かった事が気に障ったようです」
リオンがちょっとしょんぼりと言う。
「へえ。人間の女は意外と心が狭いのだなァ。
いや、アリシアやエリスはそんなことはなかったぞ?
きっと偶然、狭量な女ばかりを引き当ててしまったのに違いない」
そう言うと、リオンはうなずいた。
「ですよね。
兄様も同意見でした。
でもこのまま引き下がっては悔しいので、次の女の子からはやり方を変えて、街の素敵なレストランでお食事をしてみることにしました」
おお!!
リオンにしては、結構工夫しているではないかァ。
「なるほど良い考えだ。それなら狭量な女でも文句はあるまい」
「でしょう? 良い考えなはずだったのです。
僕は兄様からお給料をいただいてます。男らしく飲食料金も全額こちらで持つつもりでした。
なのに、店内の男性客数人から『僕にだけ』いろんな飲み物や料理がプレゼントされ、しかも店員さん達からまで『僕にだけ』特別サービスがあったためか、女の子たちは怒って帰ってしまいました」
エエッ!?
まさか……とは思わない。ワタシ自身、そうやって客や店員からおごられることがとても多いのだ。
ふむ。
きっとリオンが『超絶美少女』に見えたのだろうなァ。
奴は善良なワタシと違って、ウサギの皮をかぶった狼なのに、見る目のない奴らだ――――というか、そもそも男だ。本当に見る目がない。
「兄様と食事に行っても、こういうことはめったにないのに……よりによって、女の子とのデートのときにのみ毎回……。
なんと間が悪いのでしょう」
リオンはそう言うが、間が悪いというより、エルと一緒にいたら、男達も気おくれして声をかけられないのだろう。
あの馬鹿兄は『見てくれだけ』は無駄に良いからなァ。
元王子なので立ち振る舞いも優雅だし、華美な格好でなくともどこぞの坊ちゃんがお忍びで来ている風情に映る。
その上、長身でいかにも腕がたちそうだから、一般人なら多分、リオンとラブラブ飯を食っているであろうエルを押しのけてまで前に出る勇気はあるまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この時代の田舎だと、料理は普通彼女やお嫁さんが作ります。
普通の飯屋や宿屋、エルシオン城の厨房だと男性料理人の方が多いし王都レベルで都会だと男性もそれなりに作るので、エルやリオン、ヴァティールはあんまりピンときてません。
しかし彼氏より料理が格段に下手というのは、女の子たちにとって耐えがたい事でした。
その頃には僕にも『世間並みの常識』が備わっていましたので、とても辛かったのですが、兄の話は一言たりとも致しませんでした。
そして――――――まずは受付No.1の村の娘さんから付き合ってみることにしたのです」
リオンはその日々を懐かしむように目を細めた。
「でも……でもね、二人で仲良くデートしていると、村の人々が皆して僕たちを冷やかすのです」
へー。そんなことが。意外だなァ。
でも、リオンにしては『まとも』な青春の1Pを刻んでいるではないか。
ハッキリ言って見直した。
「良いじゃないか。冷やかされるぐらいアツアツなら、上手くいってたってことなのだろう?
何も心配はないんじゃないかァ?」
そう言うと、リオンは真剣なまなざしで首を振った。
「違うのです。『よっ! 彼氏の方が可愛いから○○ちゃんももっと頑張りなよ!』とか『女の子らしさでも彼氏に負けてんじゃん』とか公私にわたって村民に言われまくったせいか、この村の志願者女性・受付No.1~42番さんまでがすべて次々と欝に。
もちろん全員にフラレて終わった上、43~61番までの女の子は店で一緒に写真を撮った後すぐに棄権を申し渡してきました。ふられるまでの平均時間は約30分。付き合った記念の写真が欲しかっただけのようです。酷いと思いませんか?
以後は村の娘さん達から避けられるようになっちゃったし、いったいこの僕のどこが悪かったというのでしょう?」
リオンはそう言ってうつむき、エルはもらい泣きしたのか、そっと涙をハンカチでぬぐっている。
「……そ、そりゃ、災難だったな。
でもオマエや少女たちより、冷やかすヤツラの方が悪いよなァ?」
あんなリオンでも『まとも』になれる分岐点があったのに、とんでもない村人たちだ。
ワタシがその場にいたなら、ヤジを飛ばす奴らは全員シメ上げて、ちゃんと若いカップルを温かく見守ってやったぞ?
「それで今度は、村の外から来たお客さんの女の子と付き合いました。
デートは冷やかされたりしないように、村の外のみです。
健全に、大きな公園にお弁当を持って出かけました」
「おお、リオンにしては中々やるなァ。
今度は外野も煩くないし、イケルんじゃないか?」
そう声をかけると、リオンは首を振った。
「ところが、僕の作ったお弁当を食べた女の子は段々と顔色が悪くなっていき、その後すぐフラレてしまいました」
ハテナ?
リオンのメシって、そんなに不味かったっけ?
「何でだ?
前に食わせてもらったときは行列レストラン並みの味だったんだがなァ。
管理が悪かったとかで腐っていたのか?」
「いえまさか。
衛生面にも気温にも気を配っていました。失礼なこと言わないでください。
もちろん、味にも自信はありました。
でも次の女の子にも、その次の女の子のときも……更に頑張って美味しく作ったのに全員にふられました。
最後の子の捨て台詞から察するに、僕の方が格段にお料理が上手かった事が気に障ったようです」
リオンがちょっとしょんぼりと言う。
「へえ。人間の女は意外と心が狭いのだなァ。
いや、アリシアやエリスはそんなことはなかったぞ?
きっと偶然、狭量な女ばかりを引き当ててしまったのに違いない」
そう言うと、リオンはうなずいた。
「ですよね。
兄様も同意見でした。
でもこのまま引き下がっては悔しいので、次の女の子からはやり方を変えて、街の素敵なレストランでお食事をしてみることにしました」
おお!!
リオンにしては、結構工夫しているではないかァ。
「なるほど良い考えだ。それなら狭量な女でも文句はあるまい」
「でしょう? 良い考えなはずだったのです。
僕は兄様からお給料をいただいてます。男らしく飲食料金も全額こちらで持つつもりでした。
なのに、店内の男性客数人から『僕にだけ』いろんな飲み物や料理がプレゼントされ、しかも店員さん達からまで『僕にだけ』特別サービスがあったためか、女の子たちは怒って帰ってしまいました」
エエッ!?
まさか……とは思わない。ワタシ自身、そうやって客や店員からおごられることがとても多いのだ。
ふむ。
きっとリオンが『超絶美少女』に見えたのだろうなァ。
奴は善良なワタシと違って、ウサギの皮をかぶった狼なのに、見る目のない奴らだ――――というか、そもそも男だ。本当に見る目がない。
「兄様と食事に行っても、こういうことはめったにないのに……よりによって、女の子とのデートのときにのみ毎回……。
なんと間が悪いのでしょう」
リオンはそう言うが、間が悪いというより、エルと一緒にいたら、男達も気おくれして声をかけられないのだろう。
あの馬鹿兄は『見てくれだけ』は無駄に良いからなァ。
元王子なので立ち振る舞いも優雅だし、華美な格好でなくともどこぞの坊ちゃんがお忍びで来ている風情に映る。
その上、長身でいかにも腕がたちそうだから、一般人なら多分、リオンとラブラブ飯を食っているであろうエルを押しのけてまで前に出る勇気はあるまい。
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この時代の田舎だと、料理は普通彼女やお嫁さんが作ります。
普通の飯屋や宿屋、エルシオン城の厨房だと男性料理人の方が多いし王都レベルで都会だと男性もそれなりに作るので、エルやリオン、ヴァティールはあんまりピンときてません。
しかし彼氏より料理が格段に下手というのは、女の子たちにとって耐えがたい事でした。
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