424 / 437
再会小話3 そうだ、バイトをしよう
再会小話3 そうだ、バイトをしよう 8
しおりを挟む
トランプは中々楽しかった。
ワタシが勝ったら逆ギレして封印しようとするのではないかと最初は戦々恐々だったが、そんなこともなく普通に過ごせた。
そろそろ夜明けが近づいてきて、エルの方は半分ウトウトしている。
体力はあるヤツだが、同じ失敗(ワタシとアリシアを混同して痛い目に合う)を繰り返すまいと頑張ってはいたし、気力の方が尽てきたのだろう。
リオンはまだまだ元気いっぱいで『いつもは兄様と二人でするのですけど、3人でする方が楽しいですね♪」と始終ニコニコ顔だった。
毎回迷惑ばかりかけられるけど、ニコニコ無邪気に笑っている時のリオンはけっこう可愛いんだよなァ。
アレ?
リオンって、笑うとアッシャに似てなくないか?
ふとした表情の中に『我が娘』の面影が垣間見える。
そうだ。エリスよりもアリシアよりも、リオンが一番『アッシャ』に似ている。
遠いとは言え同じ血を引いているのだから、そういうこともあるのだろう。
リオンがアレス兵たちに殺されたとき、道理を曲げてまで十数万の兵たちを焼き溶かしてしまったのは、奴の中に無意識に『アッシャの面影』を見てしまったからなのかもしれない。
我が娘はあの後どうなったのだろう。
アースラにひどい目に合わされていなければ良いが……。
思わず涙がにじむ。
「ど、どうしたのですかっ……?」
リオンが慌てたように覗き込む。
「……実はなァ。ワタシにはかつて『アッシャ』という娘がいたのだが、アースラに取り上げられて消息不明なのだ。
その娘がオマエに少し似ていて……」
ワタシはどうしてこんな話をリオンにしているのだろう。
奴は『アースラの人器』なのに。
リオンはしばらくの間黙って聞いていたが、
「アースラ様にもきっと、ご事情がお有りだったのだと思います。
それでも……本当に申し訳ありませんでした。
アースラ様の代わりに僕がお詫びさせて頂きます」
と言い、椅子から立ち上がって深々と頭を下げた。
ああ……コイツはアースラの人器ではあるが、アースラではない。
別の人格を持ち、別の考えを持つひとりの人間なのだ。
混同してはいけない。
そうして顔を上げた時の悲しげな表情が、益々わが娘に似ていた。
「アッシャ……!!」
ついうっかりアッシャに似たリオンを抱きしめると、エルが鬼の形相でワタシを見ていた。
オマエ、さっきまで寝こけていたじゃないかッ!?
「俺のリオンに何をするッ!!」
ワタシはエルに部屋から追い出された。
リオンはワタシをかばおうとしていたようだが、頭に血の上ったバカ男には全く聞こえていない。
う~む。リオンとは完全に和解できたが、やっぱり今回もろくなことにならなかった。
やはり奴らには近づかないに限る。
部屋に戻ったワタシは、荷物を持ってホテルから直ちに転進した。
自分のことを棚に上げて怒るエルは真性のアホだが、追い出された身だからありがたく出て行ってやろう。
これ以上奴らに振り回されていたら、期限内に本体を探し出すことが出来なくなってしまう。
ま……エルのあの剣幕なら、当分はワタシの近くには寄って来ないだろう。
うん。来ないといいな。
どうか来ませんように……。
大いなる希望と一抹の不安を抱えてワタシは豪華なホテルを後にした。
Fin
読んで下さった皆様、ありがとうございます❤
一応リオンは『滅びの呪文』は使うつもりはありませんでした。気分を落ち着けるために、途中まで唱えてみただけです。
普段は魔術は使いませんが、以前魔術の修業をさぼった時、コントロールが効かなくて困った経験があるので、ある程度はコントロール能力を磨く目的で修行しています。
ブルボア王が支配人をとっちめたのは、魔獣が暴れる以前に、王家の商売の信用度が落ちるようなやり方を彼がしていたからです。
商売は信用第一!!(だけど王は悪徳業者には容赦なし。姑息に騙して身ぐるみはいでポイ捨てしたりはしてますけどね)
ではまた次の外伝で♪
ワタシが勝ったら逆ギレして封印しようとするのではないかと最初は戦々恐々だったが、そんなこともなく普通に過ごせた。
そろそろ夜明けが近づいてきて、エルの方は半分ウトウトしている。
体力はあるヤツだが、同じ失敗(ワタシとアリシアを混同して痛い目に合う)を繰り返すまいと頑張ってはいたし、気力の方が尽てきたのだろう。
リオンはまだまだ元気いっぱいで『いつもは兄様と二人でするのですけど、3人でする方が楽しいですね♪」と始終ニコニコ顔だった。
毎回迷惑ばかりかけられるけど、ニコニコ無邪気に笑っている時のリオンはけっこう可愛いんだよなァ。
アレ?
リオンって、笑うとアッシャに似てなくないか?
ふとした表情の中に『我が娘』の面影が垣間見える。
そうだ。エリスよりもアリシアよりも、リオンが一番『アッシャ』に似ている。
遠いとは言え同じ血を引いているのだから、そういうこともあるのだろう。
リオンがアレス兵たちに殺されたとき、道理を曲げてまで十数万の兵たちを焼き溶かしてしまったのは、奴の中に無意識に『アッシャの面影』を見てしまったからなのかもしれない。
我が娘はあの後どうなったのだろう。
アースラにひどい目に合わされていなければ良いが……。
思わず涙がにじむ。
「ど、どうしたのですかっ……?」
リオンが慌てたように覗き込む。
「……実はなァ。ワタシにはかつて『アッシャ』という娘がいたのだが、アースラに取り上げられて消息不明なのだ。
その娘がオマエに少し似ていて……」
ワタシはどうしてこんな話をリオンにしているのだろう。
奴は『アースラの人器』なのに。
リオンはしばらくの間黙って聞いていたが、
「アースラ様にもきっと、ご事情がお有りだったのだと思います。
それでも……本当に申し訳ありませんでした。
アースラ様の代わりに僕がお詫びさせて頂きます」
と言い、椅子から立ち上がって深々と頭を下げた。
ああ……コイツはアースラの人器ではあるが、アースラではない。
別の人格を持ち、別の考えを持つひとりの人間なのだ。
混同してはいけない。
そうして顔を上げた時の悲しげな表情が、益々わが娘に似ていた。
「アッシャ……!!」
ついうっかりアッシャに似たリオンを抱きしめると、エルが鬼の形相でワタシを見ていた。
オマエ、さっきまで寝こけていたじゃないかッ!?
「俺のリオンに何をするッ!!」
ワタシはエルに部屋から追い出された。
リオンはワタシをかばおうとしていたようだが、頭に血の上ったバカ男には全く聞こえていない。
う~む。リオンとは完全に和解できたが、やっぱり今回もろくなことにならなかった。
やはり奴らには近づかないに限る。
部屋に戻ったワタシは、荷物を持ってホテルから直ちに転進した。
自分のことを棚に上げて怒るエルは真性のアホだが、追い出された身だからありがたく出て行ってやろう。
これ以上奴らに振り回されていたら、期限内に本体を探し出すことが出来なくなってしまう。
ま……エルのあの剣幕なら、当分はワタシの近くには寄って来ないだろう。
うん。来ないといいな。
どうか来ませんように……。
大いなる希望と一抹の不安を抱えてワタシは豪華なホテルを後にした。
Fin
読んで下さった皆様、ありがとうございます❤
一応リオンは『滅びの呪文』は使うつもりはありませんでした。気分を落ち着けるために、途中まで唱えてみただけです。
普段は魔術は使いませんが、以前魔術の修業をさぼった時、コントロールが効かなくて困った経験があるので、ある程度はコントロール能力を磨く目的で修行しています。
ブルボア王が支配人をとっちめたのは、魔獣が暴れる以前に、王家の商売の信用度が落ちるようなやり方を彼がしていたからです。
商売は信用第一!!(だけど王は悪徳業者には容赦なし。姑息に騙して身ぐるみはいでポイ捨てしたりはしてますけどね)
ではまた次の外伝で♪
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
115
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる