上 下
423 / 437
再会小話3 そうだ、バイトをしよう 

再会小話3 そうだ、バイトをしよう 7

しおりを挟む
 用意された高級ホテルでこれまた『お詫び』のタダ・ディナーをエルたちと食い……気がつけばかなり遅い時間となっていた。

「じゃ、またな!」

 挨拶もそこそこに、部屋に帰ってさっさと荷物をまとめる。
 逃亡……いや、転進の準備をするためだ。

 金は3ヶ月余裕で暮らせるぐらいもらったし、さっき小ぶりの宝石も一つ作っておいた。
 さあ、ココからは魔力を全力で封じて転進だッ!!

 柔らかいベットに少々未練はあったけれど、奴らと関わっているとロクなことがない。
 無用な我慢でアリシアの美しい額にシワでもできたら大変だ。

 よし! 出発!!

 ワタシは荷物を背負って颯爽とドアを開けた。

 開けたらそこに、リオンがニコニコしながら立っていた。

 うおッ!!
 相変わらず気配をさせないことには達人級だな。
 本当にアースラそっくり。嫌な奴だ。

「今日はお疲れ様でした。
 それから、……兄様がヴァティールさんを勝手に『脅し』に使ってしまい、大変申し訳ありませんでした」

 言って、リオンは愛らしく頭を下げる。

 エルなんか侘びの一言もなかったからなァ。
 その点ではリオンの方が『大人』と言える。ここは大きな心で許してやるかァ。

「ま……それぐらいはいいさ。
 それより、ワタシは聞いていたぞ?
 オマエ『滅びの呪文』を使おうとしていただろう。
 流石にアレはマズイんじゃないのか?」

 そう言うと、

「ええっ!
 聞こえちゃってたのですか?
 恥ずかしいです~っ!」

 と、好きな人の名をうっかり知られた女学生のように、リオンは中途半端に顔を隠しつつ頬を染めた。

 うん。恥ずかしいぞ。
 あれぐらいで街一つ壊滅させようとしたオマエの心の狭さ。魔獣のワタシから見ても恥ずかしいぞ。

 一応『途中で止めて発動はさせないつもりだった』『ちょっと気晴らしに唱えてみただけ』とか言っていたが、本心なのだかどうだか……。

「じゃ、そういうことでオヤスミ」

 とりあえずこれ以上深入りしても百害あって一利なし。
 部屋のドアを閉じて追い払おうとしたら、なんと奴は何気にドアの隙間に足を突っ込んでいた。

 オマエは新聞の勧誘員かっ!!

「まだ寝ませんよ? 子供じゃあるまいし。
 前回はせっかく再会できたというのに、ヴァティールさんを一人放っておいて大変申し訳ありませんでした。
 ……だから、今日は一緒に夜を徹してトランプをして親睦を深めましょうよ☆」

 奴はニコニコ笑いながら言った。

 ウザ……。
 前より明るくなったのは喜ばしいが、頼むから放っておいてくれ……。
 それが『本当の親切』というものだ。

 しかし、せっかくの好意なので頷いた。
 断ったら逆ギレして封印されそうな気がしたのだ。

 まァいいかァ。
 トランプぐらい、付き合ってやろう。

 そういえば娘たちともよくやっていたっけなァ?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

俺のスキルは〚幸運〛だけ…運が良ければ世の中なんとか成るもんだ(笑)

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:420pt お気に入り:99

天獄パラドクス~夢魔と不良とギリギリライフ

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:54

【本編完結】絶対零度の王子様をうっかり溶かしちゃってた件。

BL / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,778

【完】性依存した末の王子の奴隷は一流

BL / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:55

国王陛下に溺愛されて~メイド騎士の攻防戦~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:140

俺はモブなので。

BL / 連載中 24h.ポイント:5,140pt お気に入り:6,527

悪役?婚約破棄?要らないなら俺が貰いますね!

zzz
BL / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:60

目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:279

処理中です...