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再会小話3 そうだ、バイトをしよう
再会小話3 そうだ、バイトをしよう 5
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しかし呪文は発動しなかった。
詠唱を終える前に、エルがリオンをギュッと抱きしめたのだ。
そうして、キッと前を向いた。
「俺たちは心まで売った覚えはない!!
51回の結婚式費用で貯金が心もとなくなったのでつい乗ってしまったが、俺が愛を誓うのは愛しいリオンだけ。
この話、なかったものにしてもらおうッ!!」
と、大変な剣幕で従業員Aを怒鳴りつけた。
従業員Aはその剣幕にタジタジだったが、従業員Bが呼んできた支配人の方は引かなかった。
「では、損害賠償を請求させていただきます。
契約書の隅っこに、灰色の文字で小さく書いてあったはずですよ?」
ニンマリと笑いながら差し出した契約書の隅っこには、とんでもなく小さく、
『なお業務は当日多少の変更がある場合もある。乙はこれを承諾したものとする』
『甲に著しい損害を与えた場合は、乙は規定の賠償金を速やかに支払うものとする』
と書いてあった。
く……やるな、人間め。
しかしコレはエルも悪い。
ワタシはちゃんとサインするときに隅から隅まで見てたぞ?
何しろアースラは、こういうセコイ『騙し』を召喚した魔族にまでやりまくっていたからな。簡単にサインする恐ろしさは十分に承知している。
……ハァ。仕方がないな。
リオンがキレたら厄介だし、そろそろ助けてやるかァ。
ワタシの契約書は、当然のことだが隅々までチェックしてある。
『お茶汲み以外不可』の仕様に変更させているから、それを盾に断われるだろう。
その時、リオンが小声でしょんぼりと言った。
「もういいです、兄様。
僕を想って下さるそのお気持ちだけで……僕は……十分、です……」
そうして、どんな少女よりも可憐に涙を一筋こぼした。
なるほど、もう十分なのか。
あとは自分がカタをつけるために暴れ回るから『もう十分』ってことなのだなッ!?
詠唱を終える前に、エルがリオンをギュッと抱きしめたのだ。
そうして、キッと前を向いた。
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この話、なかったものにしてもらおうッ!!」
と、大変な剣幕で従業員Aを怒鳴りつけた。
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「では、損害賠償を請求させていただきます。
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と書いてあった。
く……やるな、人間め。
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……ハァ。仕方がないな。
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「もういいです、兄様。
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