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そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)11
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そうして最後の花火までガッツリ見て、無料チケットで予約した部屋に戻ることにした。
無料と言っても馬鹿にしてはいけない。
エルシオン・コーポレーション最大の大株主に送られてくる『特別優待券』で取った部屋なのだから。
心地よい疲れとともに、豪華な装飾のあるドアを開けたら――――――何故か部屋のすみでリオンが丸くなって膝をかかえ、くすんくすんと泣いていた。
ぎゃああ~!
何でこんなところにッ!!
まったく気配がしてなかったぞ!!!
「…………ど、どうしたのかなァ?
…………こんなところで泣いて……?」
エルとリオンの喧嘩に巻き込まれないよう、慎重に言葉を選ぶ。
犬も喰わないという夫婦喧嘩に巻き込まれた挙句、リオンに逆恨みされて封印される……という展開だけは何としてでも避けたいのだ。
「もういいのです、兄様なんて…………どうせ僕と結婚したのは同情でしょうし。
今日は兄の部屋には戻りません」
リオンはくすんくすんと可憐に泣きながら呟いた。
戻りません…………って、まさかここに居座る気かっ!?
冗談ではない。
コイツと一緒で枕を高くして寝られるものか。
何としてでも追い返さねば。
「……さっきのはエルが悪かったよなァ。
でも、エルとアリシアは50年近く夫婦をやっていたのだ。
とっさに間違えてしまっただけなのだろう」
言葉を選びつつもとりあえず慰めてみる。
「でもね、僕には兄様だけなのに、兄様は酷い…………」
リオンは何度も「酷い、酷い」と繰り返したが……おそらく本当に酷いのはリオンの方だろう。
エルの性格なら、リオンが部屋を飛び出したならすぐに追いかけてくるはずだ。
なのにここに居ないという事は……う~ん、エルはちゃんと生きてるのかなァ???
まさか、再生も叶わないほど細切れにされて、窓から捨てられたとか?
それとも消し炭になるまで燃やし尽くされたとか?
アースラの教義を叩き込まれて生まれ育ってきたリオンならやりかねない。
そろそろ心配になってきたところで、ドアの前にエルの気配がした。
どうやらしぶとく生きていやがったようだ。
「開けてくれ、ヴァティール。
リオンは開けてくれないし、話も聞いてくれないし…………オマエが帰るのを待っていたんだ」
ナルホド。
エルとリオンがホテルに戻ってからもう数時間。
リオンとの話し合いに失敗して奴に飛び出され、その後すぐに追いかけたけどドアを閉められたため、こっそりワタシの帰りを待っていたのか。
「どうするリオン。そろそろ開けてやってもいいのではないかァ?」
優しく話しかけてみたが、リオンは膝を抱えたまま頭をふるふると振った。
意外と頑固だな。
しかし、兄と対等な喧嘩が出来るようになったのだから、そこは進歩があったとみなしても良いのかもしれない。
はァ。
リオンには恨まれそうだが、このままではラチがあかない。
無許可ではあるが、ワタシはリオンの意に反してドアを開けた。
ヤツは忘れているかもしれないが、元々ココはワタシの部屋だしな。
そのとたん、エルが飛び込んできた。
そして、膝を抱えてくすんくすんと泣いているリオンを抱きしめた。
「俺が愛しているのはお前だけだよ。お前だけ」
歯の浮くようなセリフを真剣に言う様は、はたから見るとちょっぴり滑稽だ。
だが、エルなんかを好きになる、お馬鹿なリオンには効いたようだ。
「本当に……?
本当に僕だけなのですか?」
「そうだよ」
エルがリオンの耳元で優しくささやく。
「では証明してください……アリシアさんの前で、僕に……キスして下さいっ!」
恥らうように頬を染めるリオンは大変可愛らしいが、エルはエルで引きつっている。
やはり前の妻(体のみだが)の前でというのは抵抗があるのだろう。
無料と言っても馬鹿にしてはいけない。
エルシオン・コーポレーション最大の大株主に送られてくる『特別優待券』で取った部屋なのだから。
心地よい疲れとともに、豪華な装飾のあるドアを開けたら――――――何故か部屋のすみでリオンが丸くなって膝をかかえ、くすんくすんと泣いていた。
ぎゃああ~!
何でこんなところにッ!!
まったく気配がしてなかったぞ!!!
「…………ど、どうしたのかなァ?
…………こんなところで泣いて……?」
エルとリオンの喧嘩に巻き込まれないよう、慎重に言葉を選ぶ。
犬も喰わないという夫婦喧嘩に巻き込まれた挙句、リオンに逆恨みされて封印される……という展開だけは何としてでも避けたいのだ。
「もういいのです、兄様なんて…………どうせ僕と結婚したのは同情でしょうし。
今日は兄の部屋には戻りません」
リオンはくすんくすんと可憐に泣きながら呟いた。
戻りません…………って、まさかここに居座る気かっ!?
冗談ではない。
コイツと一緒で枕を高くして寝られるものか。
何としてでも追い返さねば。
「……さっきのはエルが悪かったよなァ。
でも、エルとアリシアは50年近く夫婦をやっていたのだ。
とっさに間違えてしまっただけなのだろう」
言葉を選びつつもとりあえず慰めてみる。
「でもね、僕には兄様だけなのに、兄様は酷い…………」
リオンは何度も「酷い、酷い」と繰り返したが……おそらく本当に酷いのはリオンの方だろう。
エルの性格なら、リオンが部屋を飛び出したならすぐに追いかけてくるはずだ。
なのにここに居ないという事は……う~ん、エルはちゃんと生きてるのかなァ???
まさか、再生も叶わないほど細切れにされて、窓から捨てられたとか?
それとも消し炭になるまで燃やし尽くされたとか?
アースラの教義を叩き込まれて生まれ育ってきたリオンならやりかねない。
そろそろ心配になってきたところで、ドアの前にエルの気配がした。
どうやらしぶとく生きていやがったようだ。
「開けてくれ、ヴァティール。
リオンは開けてくれないし、話も聞いてくれないし…………オマエが帰るのを待っていたんだ」
ナルホド。
エルとリオンがホテルに戻ってからもう数時間。
リオンとの話し合いに失敗して奴に飛び出され、その後すぐに追いかけたけどドアを閉められたため、こっそりワタシの帰りを待っていたのか。
「どうするリオン。そろそろ開けてやってもいいのではないかァ?」
優しく話しかけてみたが、リオンは膝を抱えたまま頭をふるふると振った。
意外と頑固だな。
しかし、兄と対等な喧嘩が出来るようになったのだから、そこは進歩があったとみなしても良いのかもしれない。
はァ。
リオンには恨まれそうだが、このままではラチがあかない。
無許可ではあるが、ワタシはリオンの意に反してドアを開けた。
ヤツは忘れているかもしれないが、元々ココはワタシの部屋だしな。
そのとたん、エルが飛び込んできた。
そして、膝を抱えてくすんくすんと泣いているリオンを抱きしめた。
「俺が愛しているのはお前だけだよ。お前だけ」
歯の浮くようなセリフを真剣に言う様は、はたから見るとちょっぴり滑稽だ。
だが、エルなんかを好きになる、お馬鹿なリオンには効いたようだ。
「本当に……?
本当に僕だけなのですか?」
「そうだよ」
エルがリオンの耳元で優しくささやく。
「では証明してください……アリシアさんの前で、僕に……キスして下さいっ!」
恥らうように頬を染めるリオンは大変可愛らしいが、エルはエルで引きつっている。
やはり前の妻(体のみだが)の前でというのは抵抗があるのだろう。
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