滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)

そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)10

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 その後は穏便に、貸衣装などを皆で着てみた。
 これなら平和的に過ごせるだろう。

 リオンは姫君の豪華な衣装を着て兄に手を取られ、すっかり機嫌を直していた。
 何というゲンキンな奴だ。

 本気で心配して損した。

 でも、アイツは生まれる性別を間違っているよなァ。
 どう見ても、極上に可愛らしい少女にしか見えない。(胸がなくても)

 異母兄妹婚を認める国はそれなりにあるのだから、奴が初めから『異母妹』として生まれていたら、こんなにヤヤコシイ事にはなっていなかったはずなのに。

 運命を恨めしく思う。

 でもそれはそれ、ワタシは気を取り直して自分のための衣装を選ぶことにした。

 せっかくココまで来たのだ。
 楽しまないという選択は無い。

 手にしたのは、鮮やかな青を基調とした王妃の衣装。
 貸衣装なので布地のランクは一般品より少々劣るようだが、縫製は素晴らしく、たっぷりのレースと古代エルシオン風の刺繍が見事に調和している素晴らしい品だ。

 ワタシはそれを着て一人、鏡の前に立ってみた。

 やはりワタシの娘、アリシアは美しいなァ。
 前回来た時も念写真撮影のために色々な衣装を着てみたが、どれもとても似合っていた。
 今回も、とても似合っている。

 それは良いのだが…………。

「美しき王妃様。もしよろしかったらオレとお茶でもしませんか?」

 きらびやかな貸衣装を着た見知らぬ男がモーションをかけてきた。

 それも、一人や二人ではない。
 あっという間に十人以上に囲まれた。

 どうやら王や王子の服を着ると、人間たちはハシャギたくなるようだ。
 アホが次々と湧いて、ワタシの手を取ろうとする。

 それを押しのけて、キング オブ バカ が来た。

「アリシアは俺の大切な妻だっ!! 何をする!!」

 言った瞬間、エルは自分でもマズイと思ったようで動きを止め、恐る恐る後ろを振り返った。
 そこには、ひきつった笑みのリオンが居た。

 怖えぇぇぇ!!

「にーさま、…………ホテルに帰って、…………ゆ~っくりとお話をしましょ~ねっ!!」

 あ~あ、せっかくワタシがトイレでリオンをなだめてやったのに、自ら地雷を踏みに行くなんて。
 なんという空気の読めない男なのだろう。

「ちょ…………、助けて、ヴァティー……」

 エルの手が伸びてきたが、知るか。

 今のはオマエが悪い。
 せいぜいリオンに絞られろ。

 ワタシはエルがリオンに捕まっている間にばっくれた。

 は~。
 やっぱり一人はいいなァ。

 気を取り直してのんびり遊ぶか。
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