滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
410 / 437
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)

そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)6

しおりを挟む
 薄暗い各牢獄は幾通りもの小さな抜け道で繋がっており、上手く正解の道を通ればゴールに至る。
 地下の隠し階段や横穴はアルフレッド王が城内を徹底探査したときのなごりであろう。

 ホント、ボッコボコに掘ってやがんなァ。

 ゴールへと至る道はその日によって変えられており、10人程度のチームで探査しながら進むこととなっている。
 大人しく並んでいると係の者がワタシとエル、リオンのほか7人の人間を1チームとしてまとめてくれた。

 そのうちの2組がカップルだ。

「いや~ん、怖ぁい❤」

 ろうそくの明かりだけの薄暗さに紛れて、女が甘えた声を上げた。
 そうして男の腕に絡みついた。

 それは良いのだが、相手が違う。暗闇で間違えた振りをして、エルの腕を掴んだのだ。

 瞬間、リオンの顔が般若に変わる。
 他の人間どもにはわからないだろうが、ワタシの目には真昼のごとくハッキリと見えるのだ。

 あの女、最初からエルの方をチラチラと見ていたが、なんという命知らずだ。
 明日の新聞の一面は、

『ダンジョンで殺人事件!! 血で染まるエルシオン城!!』

 ……で決まりかとハラハラしていたら、エルがその女性の手をそっと引き剥がして言った。

「お嬢さん、パートナーをお間違えのようですよ? 
 あなたのパートナーはあちらです」

 そう言って彼氏の方に押しやる。

 その後リオンの方に向き直り、

「間違えられちゃった。テヘ」

 と、優しく笑った。

 何が「てへ」だ。
 本当はジジイのくせに。

 あきれながら見ていたら、やはりリオンもあきれたように兄を見ていた。

「もう~しょうがないですね、兄様は。しょっちゅう間違えられるんだから……」

 リオンはもう怒ってはいないようだったが、それでも例の女をけん制するようにエルの胸に飛び込んだ。
 エルもリオンを包み込むように抱きしめる。

 それを例の女が悔しそうに睨み付けていた。

 もちろんリオンは兄には見えないように、女に向かってニヤリと悪そうな笑顔を浮かべていた。

 何だ。
 更正したように見えたが、意外と本質は変わっていないじゃないか。
 ワタシもこれからはきちんと用心し、より一層の警戒をしなければならないなァ。

 でもダンジョンに仕掛けられたアレコレより、こっちを見ていたほうが面白れーや。

 これが噂に聞く『メロドラマ』という奴だな。
 生では初めて見たぞ。

 そんなこんなのハプニングはあったが、無事にダンジョンを通過して記念のハンドタオルをもらい、次は隣の神殿跡に向かう。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

処理中です...