滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
409 / 437
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)

そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)5

しおりを挟む
 しかし人間とは不思議な生き物だ。

 ゆかりもない同属の遺体を飾って大勢で眺めて、おまけに金まで払って……その感性は魔族であるワタシには到底理解できない。本当に不可解な生き物だ。

 何?
 オマエもちゃっかりお金を払って見に来ているじゃないかだと?

 ワタシのは調査!
 調査だと最初から言っているではないか。
 だいたい、ここの料金だって無料券で入ったから、びた一文払ってないし。

 それでも氷の棺に納められているクロスⅦは、微笑んでいるかのように見えた。

 生まれて初めて人間どもにちやほやされて、喜んでいるのかもしれない。
 それとも、弟子が幸せそうであるのを知って嬉しいのだろうか?

 いや、ここにあるのはただの物言わぬ遺体。
 そんな感情があるわけも無いのに……ワタシも人間に毒されてきたのかもなァ。

 思うところはあったがせっかくなので、エルたちと共に城内を回ることにした。

 そうすると、時々貴族風に着飾った人々とすれ違う。 
 そのうちの一人を目で追っているとエルが言った。

「記念撮影だけだと儲けが少ないので、今年から衣装の貸し出しも始めたそうだ。
 昔は衣装一着用意するにもお金がかかったので記念撮影が精いっぱいだったけど、今はブルボア王国・第二王子直営の工房から宣伝と引き換えにタダ同然で仕入れられるようになったって話だったな。
 それに、第三王子がエルシオン・レジャーコーポレーションの特別顧問を務めているのだが、初代の王を思わせる中々のやり手らしい」

「ふーん」

 あんな奴が今の時代にもいるのかァ。

 アルフレッド王も「客単価! 客単価!」とうるさかったが、今度の奴も相当だな。
 城内には銀行や両替商も上手く配置されており、客から絞り上げる気満々なのが窺える。


 次にワタシはエルと共に地下の牢獄跡に行った。

 昔は拷問の道具などもそろっている陰鬱な場所であったが、今ではノリのいい兄ちゃんが「良い旅を~♪」と手を振ってくれる地下ダンジョンとなっている。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

物語なんかじゃない

mahiro
BL
あの日、俺は知った。 俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。 それから数百年後。 俺は転生し、ひとり旅に出ていた。 あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

処理中です...