408 / 437
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)4
しおりを挟む
「良いのです。
師は美しい花を誰かからいただくことも、見ることも……守った国民に感謝されることすらも無く短い生涯を閉じました。
でもほら、見て下さい。
師は美しい花々に囲まれ、生前には着ることの出来なかったドレスのような豪華な衣装に身を包み、人々の感謝を受けながら眠っています。
だから、良いのです」
棺の前にはノートが置かれており、確かに人々の感謝の意が綴ってあった。
『おかげ様で彼氏が出来ました』
『彼女と仲直り出来ました』
『今度二人目の子供が生まれます』
……エッ!!
感謝されてさえいれば、あんなのでも十分なのかッ!?
リオンの考えることはよくわからん。
別にクロスⅦが恋の仲立ちをしたわけでもなかろうに。
そもそも、アースラは神官たちに独身を強いていた。
クロスⅦは恋愛の女神どころか、最も恋愛から遠い立場にいたはずなのだ。
それでもリオンは師が人々に感謝され、その美しさを褒められている姿を見て満足なようだった。
そうかァ。
クロス神官はアースラの人器。ワタシにとっては忌々しいだけの存在だった。
しかし、こんなことですら嬉しいのかと思うと、ちょっと涙が出そうだなァ。
奴らもきっと、つらい人生を歩んできたのに違いない。
「僕はあなたと同時期に眠りにつきました。
だからアルフレッド王が何を思って師を展示したのか、本当の事はわかりません。
でも、……王は愛想の無い僕にすらとても優しい方でした。
きっと若くして命を落としたクロスⅦを可哀想に思って、このような形で……まるで神のように祭り上げて下さったのだと思います」
リオンが穏やかに語っているその肩越しに、目を泳がせているエルが見えた。
ちがうなリオン。
ワタシがエルと共に過ごしていた頃、奴はワタシに散々クロスⅦの悪口を言っていた。
何がどう伝わってそうなったのかワタシにはわからないが、リオンを苛める『悪いオッサン』という認識しかしていなかったはずだ。
面倒くさいのでワタシも訂正などはしなかったが――――――。
だから、手のひらの紋章を使ってあの地下神殿を開き、そこに眠る美しいクロスⅦを見つけたときには仰天したに違いない。
でも、美しくはあったものの『悪い奴』というところまで覆ったわけではなかっただろう。
アルフレッド王が、何気にクロスⅦの遺体を使った商売を提案したときにはきっと、
「それは良い考えですね。きっとかなりの集客が見込まれますよ。
是非やりましょう!!!
そうして奴めを使ってガッポリと儲けましょうッ!!」
とでも返事したに違いない。
師は美しい花を誰かからいただくことも、見ることも……守った国民に感謝されることすらも無く短い生涯を閉じました。
でもほら、見て下さい。
師は美しい花々に囲まれ、生前には着ることの出来なかったドレスのような豪華な衣装に身を包み、人々の感謝を受けながら眠っています。
だから、良いのです」
棺の前にはノートが置かれており、確かに人々の感謝の意が綴ってあった。
『おかげ様で彼氏が出来ました』
『彼女と仲直り出来ました』
『今度二人目の子供が生まれます』
……エッ!!
感謝されてさえいれば、あんなのでも十分なのかッ!?
リオンの考えることはよくわからん。
別にクロスⅦが恋の仲立ちをしたわけでもなかろうに。
そもそも、アースラは神官たちに独身を強いていた。
クロスⅦは恋愛の女神どころか、最も恋愛から遠い立場にいたはずなのだ。
それでもリオンは師が人々に感謝され、その美しさを褒められている姿を見て満足なようだった。
そうかァ。
クロス神官はアースラの人器。ワタシにとっては忌々しいだけの存在だった。
しかし、こんなことですら嬉しいのかと思うと、ちょっと涙が出そうだなァ。
奴らもきっと、つらい人生を歩んできたのに違いない。
「僕はあなたと同時期に眠りにつきました。
だからアルフレッド王が何を思って師を展示したのか、本当の事はわかりません。
でも、……王は愛想の無い僕にすらとても優しい方でした。
きっと若くして命を落としたクロスⅦを可哀想に思って、このような形で……まるで神のように祭り上げて下さったのだと思います」
リオンが穏やかに語っているその肩越しに、目を泳がせているエルが見えた。
ちがうなリオン。
ワタシがエルと共に過ごしていた頃、奴はワタシに散々クロスⅦの悪口を言っていた。
何がどう伝わってそうなったのかワタシにはわからないが、リオンを苛める『悪いオッサン』という認識しかしていなかったはずだ。
面倒くさいのでワタシも訂正などはしなかったが――――――。
だから、手のひらの紋章を使ってあの地下神殿を開き、そこに眠る美しいクロスⅦを見つけたときには仰天したに違いない。
でも、美しくはあったものの『悪い奴』というところまで覆ったわけではなかっただろう。
アルフレッド王が、何気にクロスⅦの遺体を使った商売を提案したときにはきっと、
「それは良い考えですね。きっとかなりの集客が見込まれますよ。
是非やりましょう!!!
そうして奴めを使ってガッポリと儲けましょうッ!!」
とでも返事したに違いない。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

消えたいと願ったら、猫になってました。
15
BL
親友に恋をした。
告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。
消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。
…え?
消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません!
「大丈夫、戻る方法はあるから」
「それって?」
「それはーーー」
猫ライフ、満喫します。
こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。
するっと終わる(かもしれない)予定です。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる