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そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)3
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ココに飾られたクロスⅦの体を奪うのは簡単だ。
入り口にいるのは普通の人間のスタッフのみで、アースラのように防壁結界を使えるわけではない。
……しかし世界中に顔が知れてしまった奴を使うと、後が面倒臭そうなんだよなァ。
おそらくはリオンと同様に『アースラの制約』がかかっていて勝手に顔や体の改造は出来ないだろうし。
パンフレットにはエルシオン城の集客数は年間約5千万人と書いてあった。
アルフレッド王の血を引き継いだ現ブルボア王やその親族が、腕によりをかけて世界中に宣伝しまくっているようなのだ。
そのため営業を開始してから約200年、桁外れの入場者数を維持しているらしい。
それにクロスⅦの体を持ち逃げしたら、リオンに逆恨みされる可能性がある……。
ワタシを封じる力を持つリオンには、出来るだけ恨まれない方向でいきたい。
『人間ごとき』と油断してアースラに捕らわれ、リオンにも封じられたことのあるワタシにもう慢心は無い。
気をつけるに越したことは無いのだ。
まァいい。
アリシアの体はまだ数百年はもつだろう。
そもそも、胸糞の悪いクロス神官の体で旅をするより、可愛い娘の体と共に過ごす方が楽しいに決まっている。
期限内に本体が見つからなかったときの保険として、クロスⅦの体はココに置いておけば良い。
エルシオンランドの優秀なスタッフが、完璧な状態で保存しておいてくれるだろう。
急ぐわけではないのだから、定期的に様子をチェックしにくるだけで十分だ。
クロスⅦの美しい体をじっと見ていると、後ろからいきなり肩を叩かれた。
ギョッとして振り返ると、リオンがニコニコと笑いながら立っていた。
うへあッ!!
相変わらず恐ろしい奴だ。
ワタシに気配を悟らせずに後ろに立つなんて。
「こんにちは、ヴァティールさんっ」
奴は愛くるしく微笑みながら言った。
しかし、私の方はニコニコ出来ない。
今のリオンは更生しているようだが、糞アースラに散々イビられたワタシは、ついリオンにその面影を見てしまう。
そうして反射的に身構えてしまうのだ。
「気配を消してワタシの後ろに立つなんて、ずいぶんと良い趣味をしているじゃないか」
そう言うと、リオンはキョトンとした。
「え? ああ誤解です。僕は幼い頃からそのように育てられましたので、逆に気配を保ったまま歩くということが出来ないのです」
リオンは相変わらずニコニコしながら言った。
そう言えば、そうだったかも。
しかしワタシにとってのクロスⅦは単なる体のスペアにすぎないが、リオンにとっては大切な師だったはず。
こんな所でヘラヘラと世間話をしていていいのだろうか。
「おい、お前の師匠が飾られているぞ。良いのか?」
そう聞くと、リオンは意外にも微笑んだ。
入り口にいるのは普通の人間のスタッフのみで、アースラのように防壁結界を使えるわけではない。
……しかし世界中に顔が知れてしまった奴を使うと、後が面倒臭そうなんだよなァ。
おそらくはリオンと同様に『アースラの制約』がかかっていて勝手に顔や体の改造は出来ないだろうし。
パンフレットにはエルシオン城の集客数は年間約5千万人と書いてあった。
アルフレッド王の血を引き継いだ現ブルボア王やその親族が、腕によりをかけて世界中に宣伝しまくっているようなのだ。
そのため営業を開始してから約200年、桁外れの入場者数を維持しているらしい。
それにクロスⅦの体を持ち逃げしたら、リオンに逆恨みされる可能性がある……。
ワタシを封じる力を持つリオンには、出来るだけ恨まれない方向でいきたい。
『人間ごとき』と油断してアースラに捕らわれ、リオンにも封じられたことのあるワタシにもう慢心は無い。
気をつけるに越したことは無いのだ。
まァいい。
アリシアの体はまだ数百年はもつだろう。
そもそも、胸糞の悪いクロス神官の体で旅をするより、可愛い娘の体と共に過ごす方が楽しいに決まっている。
期限内に本体が見つからなかったときの保険として、クロスⅦの体はココに置いておけば良い。
エルシオンランドの優秀なスタッフが、完璧な状態で保存しておいてくれるだろう。
急ぐわけではないのだから、定期的に様子をチェックしにくるだけで十分だ。
クロスⅦの美しい体をじっと見ていると、後ろからいきなり肩を叩かれた。
ギョッとして振り返ると、リオンがニコニコと笑いながら立っていた。
うへあッ!!
相変わらず恐ろしい奴だ。
ワタシに気配を悟らせずに後ろに立つなんて。
「こんにちは、ヴァティールさんっ」
奴は愛くるしく微笑みながら言った。
しかし、私の方はニコニコ出来ない。
今のリオンは更生しているようだが、糞アースラに散々イビられたワタシは、ついリオンにその面影を見てしまう。
そうして反射的に身構えてしまうのだ。
「気配を消してワタシの後ろに立つなんて、ずいぶんと良い趣味をしているじゃないか」
そう言うと、リオンはキョトンとした。
「え? ああ誤解です。僕は幼い頃からそのように育てられましたので、逆に気配を保ったまま歩くということが出来ないのです」
リオンは相変わらずニコニコしながら言った。
そう言えば、そうだったかも。
しかしワタシにとってのクロスⅦは単なる体のスペアにすぎないが、リオンにとっては大切な師だったはず。
こんな所でヘラヘラと世間話をしていていいのだろうか。
「おい、お前の師匠が飾られているぞ。良いのか?」
そう聞くと、リオンは意外にも微笑んだ。
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