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そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)

そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)2

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 じーさん(前世のエル)を寝かしつけて自由になったワタシは、エルシオンを目指した。
 その目的は私の本体を見つける事。

 もちろん、糞アースラが『底意地の悪さの全て』をかけて隠したワタシの体がすぐに見つかるとは思っていなかった。

 しかし、リオンの記憶を垣間見たときに知ったあの人間――――――氷結されたクロスⅦの体だけならなすぐにでも見つかるのではないかと期待していたのだ。

 リオンの記憶の中のクロスⅦは十分以上に若く美しく、新しい体として使うのに申し分無い。

 あれもアースラの人器であるなら、死体であっても使い勝手は最高だろう。
 そしてリオン並みの頑丈さであるに違いない。

 そのことにふと気づいたワタシは、意気揚々とエルシオン城へと出向いていったのである。

 なのに…………何と奴は特別展示室に飾られていやがった。

 その時の驚愕を、どう表現すれば良いのだろう?

 人間は、同属の死体までも商売に使うのか…………。

『古代エルシオン王国を守った美しき神秘の神官』

 と書かれた立て札の前に、クロスⅦは安置されていた。

 彼女は繊細な彫りを施された氷の棺に入れられ、棺の中も、その周りも色とりどりの献花で埋め尽くされている。

 もちろん血などは拭き取られていた。
 服も当時の質素で血まみれだった物とは替えられ、たっぷりの純白に銀刺繍がきらめいている。
 一見して高価である事がわかる美しい神官服であった。

 腕はゆったりと組まれ、胸元には水晶と翡翠のネックレス。
 飾られた彼女は、さながら眠り姫のようだった。

 正に神秘的な美しさ。

 …………確かにこれは金になる……の、かなァ……?

 しかし、これだけの規模で部屋中に生花を飾るなら、維持費もたいしたものだろう。
 あの超セコいアルフレッド王がよくこんな企画を通したものだと首をかしげながらふと周りを見ると、会場横には簡易式の花屋があって、花束が300~10000YEENの幅で売られていた。

 アルフレッド王(故)は、こんなところでも細かく商売をしていた。
 何という奴だ。

 ちなみに『眠れる神官に献花をすると恋が叶う』と書かれた看板が花屋の前にでかでかと立てられており、カップルや若い男女が気前よく花を買う姿が多く見られた。

 小さな子供などもカップルの真似をして「献花したいよ」と親にねだっている。
 そうして親は「じゃあ、あの一番小さい300YEENのならいいわよ」と言い、外の市場で買えば100YEENぐらいと思われる、ぼったくりにも程があるミニサイズの花束を買い与えていた。

 く……やるな。
 細かく買い手を拾ってやがる。相変わらずだ。

 そんな驚愕の当時を思い出しながら特別室を訪れると、クロスⅦは前回見たときのままの目の覚めるような美しさで花々に囲まれ眠っていた。

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