滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
405 / 437
そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)

そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)1

しおりを挟む
 とある飯屋の裏。
 ワタシとエルはバッタリと再会してしまった。

 奴の最期を看取ってから、100年以上は経っていただろう。
 とにかく久しぶりの再会であった。

 しかし、何とも複雑な心境になってしまうのは仕方ない。

 連れていかれたエルの家にはリオンが居たのだが、いわゆる『男の娘』となっており、欠片ほどの違和感も無くスカートをはきこなしていた。

 一方、エルの方。
 外見は昔のままなのだが――――――可愛げの全く無いタヌキ系・糞ジジイとなっていた。

 時はあそこまで人を変えるのか……。
 アリシアやエリスはあの可愛い性格のままで一生を過ごしたと信じたいが、奴らを見ていると段々と不安になってくる。

 ちなみに何故『男の娘』などのマニアックな人間用語を知っているかというと、毎晩人間たちと飲み明かしてるからだ。

 この体では長距離転移は元より、短距離転移ですら難しい。
 大切な愛娘の体を傷めぬよう、大抵は人間同様の日々をおくっている。

 ……そうすると夜は暇で、宿屋の階下にある飯屋で人間たちと遅くまで飲むことが多くなる。
 元から人間については相当詳しかったのに、それで益々詳しくなってしまったというわけだ。

 さてワタシは今、エルシオン共和国にいる。
 ここは、かつてワタシがアースラに捕らわれていた忌々しい場所だ。

 ……と言っても、ワタシが居た頃は王制の別の国であった。
 今あるのは、その国が滅んだ更に後―――――他国の支配を退けて新たに建国された大統領制の国なのだ。

 数代前の大統領がアルフレッド王にそそのかされ、優美なことで名高かったエルシオン城は驚くべき変貌を遂げた。

 そして現在は、その国を代表する華々しいレジャーランドとなっている。

 ワタシは以前、そこの株主優待券をエルからもらった。
 ……しかし、有効期限は1年。
 もうすぐ失効しそうなので、久しぶりに寄ってみることにしたのだ。

 最初にエルシオンランドに調査に来たのは、アリシアが天に召されてから22年後。
 迷惑なほど長生きしたエルが眠りについたのを確認し、アリシアの体を一年かけて若返らせてからのことだった。

 エルシオン城の前まで来た時は、そりゃあ驚いたものだった。
 昔も城門のあたりは活気があったが、そういうレベルではない。
 入るにしても大行列の後方に並ばなければならず、しかも入場制限まであったのだ。

 チケットを買うのすら困難で、どうしたものかと思案していたら、見知らぬ男が融通してくれた。

 美人は得である。
 アリシアよ、ありがとう!!

 しばらくはチケットの礼として、その男の言うまま一緒にまわっていたのだが、何気に肩を抱こうとしてきたので途中でまいた。

 美人は大変でもある。
 アリシアもきっと苦労していたに違いない。

 さて、今回ワタシがもらった優待券は優良顧客用の特別なもので、入場ゲートも別となっている。

 並ばなくて良いのかァ……。
 エルも中々気の利いたものをくれるではないか。

 悠々と入場し、とりあえず一番気になるところから巡る。
 そう、初めてエルシオンランドを訪れたとき一番仰天したあの場所だ。

前の外伝終了~今回の外伝開始までの間に評価を入れて下さった方ありがとうございます。長~いのに最後まで読んで下さり大感謝です!(お礼を言う場所がないのでここでコッソリ)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

消えたいと願ったら、猫になってました。

15
BL
親友に恋をした。 告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。 消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。 …え? 消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません! 「大丈夫、戻る方法はあるから」 「それって?」 「それはーーー」 猫ライフ、満喫します。 こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。 するっと終わる(かもしれない)予定です。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

愉快な生活

白鳩 唯斗
BL
王道学園で風紀副委員長を務める主人公のお話。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

処理中です...