滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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再会小話(前回外伝の数年後のお話)

再会小話(前回外伝の数年後のお話)6

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 ワタシを見つけたリオンは驚きもせず、にっこりと笑った。

「ようこそ、ヴァティールさん。
 僕、ずっとあなたを待っていたのですよ!」

 言葉は友好的だが、コイツが言うと無邪気そうに見えても何かが怖い。

 それに『待っていた』……だ……と?
 何か罠でも仕掛けてあるのかッ!!

「まぁ立ち話も何ですから、どうぞ中にお入り下さい」

 リオンがとびっきりの笑顔でワタシにうながした。

 だ、大丈夫なのかッ!!
 中に入っても……。

 頭の中に、アースラに捕まった時の事がよみがえる。

 あのときの囮も可愛らしい子供だった。
 ノコノコとついて行って、アースラが入念に準備した結界に捕らわれたのだ。

 まず入る前に、魔力を使って室内をくまなく探査する。

 ……が、正直今のワタシの体では、リオン以下の能力しか発揮出来ないだろう。
 本体の時ならともかく、アリシアの体で無理なことをすると、肉体自体が壊れてしまう。

 結局罠が張ってあるのかどうか、正確に確認するには至らず玄関先でまごまごしていたら、

「ヴァティールさんらしくないですねっ! さ、遠慮なんか無用ですよ?」

 リオンが明るく微笑みながら、ワタシの手を引っ張った。

 待てよ……コイツ、こんなキャラだっけ?

 血だらけの魔剣をかかげて高笑いするのなら似合いだろうけど、どう見ても優しげで明るい、極上に愛らしい美少女にしか見えない。
 もしかして、いつの間にか更正していたのか……???

 ワタシは室内に引きずり込まれ、アレコレ考え込んでいるうちにお茶と、リオンお手製だというケーキが運ばれてきた。

 お、お手製だとッ!?

 そうか……ワタシをまず油断させておいて、……ケーキの中には毒が入っているのだなッ!!

 アースラにもそういえば、わけのわからんものを食わされて実験された。
 ニコニコしながら食事を勧めてくるときは、大抵得体のしれないモノが入っていたのだ。

 人界の毒などはワタシには効かないが、アースラ直伝の毒だとすると、相当にやばい。

 どうするワタシっ!?

 このまま食わないでおくのが最も無難ではある。
 別にどうしても食べたいというわけではない。

 しかし、もしリオンが本当に更正しているのなら、手もつけないというのはあんまりだろう。

 ワタシもアリシアやエリスと共にケーキを作った事があるが、アレはそれなりに手間がかかるものなのだ。

「アアッ! アソコにお化けがッ!!!」

 リオンとエルがそちらを見た一瞬に、ワタシはエルの皿と、ワタシの皿をすり替えた。
 エルなら毒物で死んでもまた生き返るからいいだろう。

「え、お化けなんか……いやですね、ヴァティールさん。お化けが怖いのですか?
 そんなキャラでしたっけ?」

 リオンがにっこりと美しく微笑む。

 そりゃ、こっちのセリフだよ!
 お前のキャラの方が変わりすぎだッ!!

 ……変わりすぎて、逆に胡散臭い。




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