滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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再会小話(前回外伝の数年後のお話)

再会小話(前回外伝の数年後のお話)5

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「いや、ヴァティール。王には全く悪気は無かったんだよ。
 改修のどさくさに紛れて、ちゃんとお前の本体を探していたし」

「本当か?
 実は『隠された秘宝』とかをメインに探していたのではないだろうなァ?」

 ワタシは大変疑わしげな眼差しでエルを見つめたが、得意の空気を読まない姿勢で知らん振りされた。

 今のは天然ではないな。
 若い頃はまだ可愛げがあったのに、たぬきになりやがって、このジジイが。

「ほら、あの赤い屋根の家だ」

 話題を逸らすように、古くも新しくも無い一軒家が示された。
 ただ庭はよく手入れされており、たくさんのハイドロレインジアが咲いている。

「エル、オマエが先に行け。
 リオンが相変わらずヤバそうな奴なら、ワタシは即時撤退する」

「……大丈夫だって言ってるのに」

 エルは苦笑したが、その言葉を素直に信用するには、ワタシは酷い目に合い過ぎている。
 取りあえず、少し離れた場所の物陰から様子を見ることにした。

 さて、生き返ったリオンの年はいくつぐらいなのだろう?
 前と同じぐらいの年齢差なら、兄より少し年下の青年というところだろうが、アースラの遺した魔術を施された身なら、もう少し若く見えるかもしれない。

 ワタシの予想は当たっていた。
 ……が、大幅に違う部分もあった。

 エルが呼び鈴を鳴らすと、見事な金髪、そして金眼の、エプロンをつけた少女が出てきて「お帰りなさい、あなた」と言ってエルの頬にキスをしたのだ。

 ええええええっ~!!!!!

 アレがリオンの現在の姿かっ!?
 びっくりしすぎて、ワタシは思わず物陰から出てきてしまった。

「実はリオンは俺と一緒に暮らしているのだが……今の『俺の妻』なんだ。
 びっくりしたか?」

 エルは幸せそうに微笑んだ。

「ちょっと待て、リオンは男だろうッ!?」

「まぁ細かいことは気にするな」

「気にするわっ!!」

 こっちは数年間、小姑エルめの細か~~~い小言に苦しめられてきたというのに、今更『気にするな』などとしれっと言いやがって。

「だいたい、リオンは男だろう!!
 何故スカートを履いているのだッ!!」

「似合うからだ」

 エルはにっこりと微笑みながら、いつかどこかで聞いたようなセリフを口にした。

「昔、ヴァティールもそう言ってドレスを着ていたじゃないか。
 何を怒っているのだ?」

 奴は天然の振りしてそう言ったが、絶対にわざとだ。
 だてに100年以上生きてないな。手ごわくなってやがる。


背景の水彩は紗英様の素材をお借りしています。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43488740
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