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再会小話(前回外伝の数年後のお話)
再会小話(前回外伝の数年後のお話)4
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エルの案内に従って歩を進める。
その後3時間ほど馬車にも乗ったが、このメインの街道からはそう遠くないようだ。
「ところでヴァティール。まだ自分の本体を探していたりするのか?」
乗合馬車を降りたエルが、付近に人がいないのを確かめ、尋ねる。
「当然だ。アルフレッド王にも頼んでいたが、手がかりさえ見つからなかったのだ。
自分で探すしかあるまい」
「そうだな。
……では、お前が封印されていたエルシオンの古城にはもう行ってみたのか?」
エルがこちらの様子をうかがうように聞いてくる。
「ああ、とっくに行った。
アリシアの体のままでも、案外簡単に入り込めたぞ?
ついでだったので王の衣装を着て玉座にも座ってきたし、地下の牢獄跡や神殿なども隅々まで見てきた。
探してないのはスタッフルームと男子用トイレだけだな。
……まぁ、そんなところにワタシの本体が飾ってあったら驚愕するが」
ワタシの言葉にエルはナルホドと頷いた。
「……実は俺もお前の本体を探すために子供や孫まで動員して、毎年1回、エルシオン城をくまなく捜索してきたのだが……残念ながら前世では見つけることは出来なかった。
今世でも機会を見つけてはリオンと共に捜索に出向いているが、まだ見つかっていない。
本当にすまない」
エルは殊勝そうにそう言ったが、私は知っているぞ?
事実は全く違う。
「オマエ、それは家族旅行に行っていただけだろうがッ!!」
「いや、家族旅行でもあったけど、ちゃんとお前の体も探していたのだ。
ちなみにスタッフルームにも男子用トイレにもお前の体は無かった。
こんなこともあろうかと、俺はお前の代わりにきちんと確認しておいたのだ」
そう言って胸を張る。
ここで、賢明な奴なら気がついたことだろう。
ワタシたちの会話が『何か』オカシイと。
ワタシがエルシオン城を訪れると、そこはすっかりレジャーランドになっていた。
元々エルシオン城は歴史に名高く、優美かつ広大なことで有名であった。
城は、エルシオン王国とアレス帝国との戦いのときに一部損傷はしたものの、その後はアレス帝国が使っていた
そのために王は間者を遣わすのみで、大々的な捜索などは出来なかったのだ。
「いや、お前が眠った10年程後にあの地は反乱軍が奪い返してエルシオン共和国になったんだけどさ、王がそこの大統領に話を持ちかけたんだよ」
エルの話はこうだった。
アレス帝国から独立したエルシオン共和国は、そのまま城を大統領府として使っていた。
王はワタシの本体探しを継続していたが、当然、よその領地の本城なので大規模な調査は出来ない。
そこで王は、
「かつてはエルシオン王族が……そしてアレス帝国が使用した城など全ての見取り図が割れていて、国のトップや高官が住み続けるのはお勧め出来ませんな。
どうでしょう、新しく築城されては?
費用の方は100年ローン、金利は格安の0.8%で友好国のわが国がお貸し致しましょう。
古城の方は観光資源としてリニューアルの上、入場料を取ってローン支払い分を回収なさっては?
なに、当方には宣伝ノウハウがありますし……改装費用も当方の低金利ローンをお使いになればご心配には及びません。
城の改築も当方から腕利きの職人を格安料金で送り込んで、お客様に120%ご満足いただけるレジャーランドに仕上げてご覧にいれましょう」
とか何とか言って丸め込んだらしい。
なのでワタシは3000YEENを事前に払うだけでエルシオン城に堂々と入り込むことが出来た。
地下牢はすっかりお化けダンジョンとなってカップルだらけだったし、地下神殿は豪華な結婚式場に改装されていた。
入場券を持っていれば、その辺はフリーで入れる。(当日結婚式がなければ)
王の間では好きな衣装を選んで玉座に座り、専任の念写師に写真を撮ってもらうことも出来た。
王妃や姫、王子などの衣装が年齢ごとに豊富に取り揃えてあり、もちろん、メイドや執事などの衣装もあってそれらもまた、大変人気が高かった。
そのせいかカップルや家族連れで大行列だったのだが、ワタシも頑張って2時間ほど並んで撮ってもらったのだ。
ただし写真代だけは残念なことに別料金で、一枚1000YEENもする。
ちと高かったが、アリシアの美しい姿を手元に残しておきたくて、つい10枚ほど買ってしまったことはエルには内緒にしておこう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔のお城を大統領府として使っている国は私たちの世界にも実在してたりします。
プラハ城が有名ですが、他にも何箇所かあるようです。
その後3時間ほど馬車にも乗ったが、このメインの街道からはそう遠くないようだ。
「ところでヴァティール。まだ自分の本体を探していたりするのか?」
乗合馬車を降りたエルが、付近に人がいないのを確かめ、尋ねる。
「当然だ。アルフレッド王にも頼んでいたが、手がかりさえ見つからなかったのだ。
自分で探すしかあるまい」
「そうだな。
……では、お前が封印されていたエルシオンの古城にはもう行ってみたのか?」
エルがこちらの様子をうかがうように聞いてくる。
「ああ、とっくに行った。
アリシアの体のままでも、案外簡単に入り込めたぞ?
ついでだったので王の衣装を着て玉座にも座ってきたし、地下の牢獄跡や神殿なども隅々まで見てきた。
探してないのはスタッフルームと男子用トイレだけだな。
……まぁ、そんなところにワタシの本体が飾ってあったら驚愕するが」
ワタシの言葉にエルはナルホドと頷いた。
「……実は俺もお前の本体を探すために子供や孫まで動員して、毎年1回、エルシオン城をくまなく捜索してきたのだが……残念ながら前世では見つけることは出来なかった。
今世でも機会を見つけてはリオンと共に捜索に出向いているが、まだ見つかっていない。
本当にすまない」
エルは殊勝そうにそう言ったが、私は知っているぞ?
事実は全く違う。
「オマエ、それは家族旅行に行っていただけだろうがッ!!」
「いや、家族旅行でもあったけど、ちゃんとお前の体も探していたのだ。
ちなみにスタッフルームにも男子用トイレにもお前の体は無かった。
こんなこともあろうかと、俺はお前の代わりにきちんと確認しておいたのだ」
そう言って胸を張る。
ここで、賢明な奴なら気がついたことだろう。
ワタシたちの会話が『何か』オカシイと。
ワタシがエルシオン城を訪れると、そこはすっかりレジャーランドになっていた。
元々エルシオン城は歴史に名高く、優美かつ広大なことで有名であった。
城は、エルシオン王国とアレス帝国との戦いのときに一部損傷はしたものの、その後はアレス帝国が使っていた
そのために王は間者を遣わすのみで、大々的な捜索などは出来なかったのだ。
「いや、お前が眠った10年程後にあの地は反乱軍が奪い返してエルシオン共和国になったんだけどさ、王がそこの大統領に話を持ちかけたんだよ」
エルの話はこうだった。
アレス帝国から独立したエルシオン共和国は、そのまま城を大統領府として使っていた。
王はワタシの本体探しを継続していたが、当然、よその領地の本城なので大規模な調査は出来ない。
そこで王は、
「かつてはエルシオン王族が……そしてアレス帝国が使用した城など全ての見取り図が割れていて、国のトップや高官が住み続けるのはお勧め出来ませんな。
どうでしょう、新しく築城されては?
費用の方は100年ローン、金利は格安の0.8%で友好国のわが国がお貸し致しましょう。
古城の方は観光資源としてリニューアルの上、入場料を取ってローン支払い分を回収なさっては?
なに、当方には宣伝ノウハウがありますし……改装費用も当方の低金利ローンをお使いになればご心配には及びません。
城の改築も当方から腕利きの職人を格安料金で送り込んで、お客様に120%ご満足いただけるレジャーランドに仕上げてご覧にいれましょう」
とか何とか言って丸め込んだらしい。
なのでワタシは3000YEENを事前に払うだけでエルシオン城に堂々と入り込むことが出来た。
地下牢はすっかりお化けダンジョンとなってカップルだらけだったし、地下神殿は豪華な結婚式場に改装されていた。
入場券を持っていれば、その辺はフリーで入れる。(当日結婚式がなければ)
王の間では好きな衣装を選んで玉座に座り、専任の念写師に写真を撮ってもらうことも出来た。
王妃や姫、王子などの衣装が年齢ごとに豊富に取り揃えてあり、もちろん、メイドや執事などの衣装もあってそれらもまた、大変人気が高かった。
そのせいかカップルや家族連れで大行列だったのだが、ワタシも頑張って2時間ほど並んで撮ってもらったのだ。
ただし写真代だけは残念なことに別料金で、一枚1000YEENもする。
ちと高かったが、アリシアの美しい姿を手元に残しておきたくて、つい10枚ほど買ってしまったことはエルには内緒にしておこう。
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昔のお城を大統領府として使っている国は私たちの世界にも実在してたりします。
プラハ城が有名ですが、他にも何箇所かあるようです。
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