滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

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再会小話(前回外伝の数年後のお話)

再会小話(前回外伝の数年後のお話)3

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 あれからリオンがどうなったのか、ワタシは知らない。
 ただ奴は、凍ったまま眠らされていたはずだ。

 そうして寿命を終えたエルは、ブラコン全開でちゃっかり弟の眠る棺に潜り込んだのだ。

 でもココにこうしてエルが居るということは、何かあらかじめ仕掛けでも作っておいて、目覚めることに成功したのだろう。
 そうして、ついでにリオンも一緒に起こしたに違いない。

 ちっ。余計なことしやがって。

 眠らせたままでいいじゃないか。目覚めなければ害も無い。
 家の物置にでもしまっておいて、時々眺めるだけで十分だと思うのだが……。

 しかし、目覚めたなら別だ。ワタシにとって大変な脅威となりうる。

 同属である人間ですらためらい無く殺すあいつは、超危険人物。
 ワタシの事だって昔のまま、己が道具の一つとしか認識していないだろう。

 それに、年を経て益々性格が悪く、魔術の方も化け物じみて進化している可能性がある。

 アースラだって子供の頃は無力だった。
 そのうえ多少の可愛げもあったのに、約10年で化け物じみた進化を遂げた。

 一方、ワタシの今の肉体はアリシアのもの。大した術は使えない。
 このままでは、到底リオンに対抗できないだろう。

「リオンか……ああ、元気だよ」

 エルが当たり前のように言う。

 残念ながら、そうだろうな。
 アースラの人器であり、幼いころから様々な術を施されてきたアイツは見た目と違って大変頑丈だ。

 ワタシの持ち技である大規模魔術を発動させ、さらにそれに耐えきれる程なのだから、いかに人間離れした肉体の持ち主かわかろうというものだ。

「実は俺と一緒に暮らしているのだが……」

 エルはそこで言葉を切りやがった。
 続きが気になるじゃないか。

 もしや、

『実は俺と一緒に暮らしているのだが……益々化け物じみてきて手がつけられないのだ』

 とか、

『実は俺と一緒に暮らしているのだが……やっぱりもう一度眠らせたほうが世のため人のためだから、手を貸してくれ』

 とかではあるまいな。

 正直ワタシはもう、リオンとはかかわりたくない。
 奴もアースラに人生をメチャクチャにされた哀れな子供だということは承知しているが、それにしても性格が悪すぎる。

 そして何より……ワタシを封印できる、世界で唯一の人間であるのだ。

 人間となめてかかってアースラに散々な目に遭わされたワタシだ。
 もう、近寄りたくもない。

 それでもまぁ、エルが『絶対に大丈夫』だというのでノコノコと付いていった。
 我ながらアホだとは思うが、好奇心の方が勝ってしまったのだ。

 さて、あのクソ餓鬼は今、どうなっているのだろう?

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