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葬送(ヴァティール視点外伝)
葬送(ヴァティール視点外伝)4
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結局遺体は城には帰らず、大きな教会の祭壇に置かれた。
ここでも司祭たちが祈りを捧げ続けている。
ちょっと待て。
いったい、いつになったらワタシは一人静かにアリシアの死を悼めるのだ。
もういい加減にしてくれ。
そう思うが抗議の声を上げるわけにも行かず、皆が寝静まるのを待った。
しかし祈りは数人の神官たちが交代しながら徹夜で続けられた。
ついでにエルは、ちゃっかりと仮眠を取りに別室に行ってしまった。
昨日は寝てないようだったし、もうジイサンだからしかたないのだろうが、オマエ一人だけゆっくり休むつもりか。
召使ではなく、アリシアの体を連れて別室に行けよッ!!!
オマエの愛する妻だろう!!
しかしワタシの心の叫びは全く届かず、深夜を越えてからは魔よけの香もドンドン焚き染められた。
エルよ。
オマエはワタシがアリシアの体に入るのを見ていただろう?
なのにこの仕打ちは何なのだ。
昔から『大事なところ』に限ってピンポイントですっぽ抜けていたあいつの事だから、悪意でというより、司祭の持ってきた『葬儀プラン』をよく確かめもせずにサインしただけのような気もするが、あんまりじゃないか。
もちろん人間が作った魔除けの香ごときでワタシはくたばったりはしない。
しかし、とにかく臭い。
そして大変不愉快であるのは間違いない。
それでもワタシは我慢した。
娘のために我慢した。
翌朝は素晴らしい快晴だった。
目をつぶっていても感じ取れるさわやかな朝だ。
これなら帰城の道のりは特に不都合もないだろう。
さくさく戻って、早くワタシをアリシアと二人っきりにしてくれ。
…………っと思っていたら、葬儀馬車は城とは真逆の方向に進みだした。
どうもアリシアを慕う全国民のために国中を周るらしい。
まあ、それだけ娘は国民たちに慕われていたって事なのだろう。
奴隷解放のために主に動いたのは娘らしい、という話も沿道の民の話を聞き取ることで入ってきた。
ブルボア王国は元々逃亡奴隷の多い国。
アリシアは、彼らにとっては女神にも等しいのかもしれない。
仕方が無い。
もうしばらく我慢するかァ。
日中はド下手糞な魔道士のフォローをし、夜毎、魔よけの煙に燻される生活を送る。
ものすごく不愉快だが……愛娘のためには我慢するしかない。
なに、ブルボア王国は小国。その領土は狭い。
大きな教会のある主たる都市を馬車で巡っても精々三週間というところだろう。
ワタシは娘のために覚悟を決めた。そうして不快な日々を我慢し続けた。
ここでも司祭たちが祈りを捧げ続けている。
ちょっと待て。
いったい、いつになったらワタシは一人静かにアリシアの死を悼めるのだ。
もういい加減にしてくれ。
そう思うが抗議の声を上げるわけにも行かず、皆が寝静まるのを待った。
しかし祈りは数人の神官たちが交代しながら徹夜で続けられた。
ついでにエルは、ちゃっかりと仮眠を取りに別室に行ってしまった。
昨日は寝てないようだったし、もうジイサンだからしかたないのだろうが、オマエ一人だけゆっくり休むつもりか。
召使ではなく、アリシアの体を連れて別室に行けよッ!!!
オマエの愛する妻だろう!!
しかしワタシの心の叫びは全く届かず、深夜を越えてからは魔よけの香もドンドン焚き染められた。
エルよ。
オマエはワタシがアリシアの体に入るのを見ていただろう?
なのにこの仕打ちは何なのだ。
昔から『大事なところ』に限ってピンポイントですっぽ抜けていたあいつの事だから、悪意でというより、司祭の持ってきた『葬儀プラン』をよく確かめもせずにサインしただけのような気もするが、あんまりじゃないか。
もちろん人間が作った魔除けの香ごときでワタシはくたばったりはしない。
しかし、とにかく臭い。
そして大変不愉快であるのは間違いない。
それでもワタシは我慢した。
娘のために我慢した。
翌朝は素晴らしい快晴だった。
目をつぶっていても感じ取れるさわやかな朝だ。
これなら帰城の道のりは特に不都合もないだろう。
さくさく戻って、早くワタシをアリシアと二人っきりにしてくれ。
…………っと思っていたら、葬儀馬車は城とは真逆の方向に進みだした。
どうもアリシアを慕う全国民のために国中を周るらしい。
まあ、それだけ娘は国民たちに慕われていたって事なのだろう。
奴隷解放のために主に動いたのは娘らしい、という話も沿道の民の話を聞き取ることで入ってきた。
ブルボア王国は元々逃亡奴隷の多い国。
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仕方が無い。
もうしばらく我慢するかァ。
日中はド下手糞な魔道士のフォローをし、夜毎、魔よけの煙に燻される生活を送る。
ものすごく不愉快だが……愛娘のためには我慢するしかない。
なに、ブルボア王国は小国。その領土は狭い。
大きな教会のある主たる都市を馬車で巡っても精々三週間というところだろう。
ワタシは娘のために覚悟を決めた。そうして不快な日々を我慢し続けた。
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