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アリシア外伝2 掴む手
アリシア外伝2 掴む手 3
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私はヴァティール様付きの侍女なので、彼がいそいそと片付けているさまをぼーっと眺めていたわけではない。
「あのっ、そのようなことは私が致しますので、どうぞヴァティール様は椅子に腰かけてお待ちくださいませっ」
私の言葉に、ヴァティール様はいつも不思議そうに首をかしげる。
その様はどこかリオンに似ていて、胸が痛い。
「ワタシが散らかしたのだから、私が片付けるのは当然だ。
それに人間は『劣悪な環境』に置かれると、すぐ死ぬからな。ちゃんと片付けておかないと」
最近はウルフもカードの相手に呼ぶけれど、今この部屋に居る『人間』は私だけ。
どうやら彼は『私のため』に片付けて下さっているようだ。
ヴァティール様は、人間の魔道士に幽閉された経験があるため『人間は嫌い』と聞いていた。
でも、私に危害を加えたりはなさらない。
エルはヴァティール様を再び一室に閉じ込めようとするから、彼が来るたび、抗議のために暴れてみているだけなのだそうだ。
そうかと思うと、ヴァティール様はビックリするほどエルに優しいときもある。
よく掴めない方だ。
カードを拾うため、私もしゃがむ。
あれ?
何だか、頭がくらくらする。
私はある程度の年を越えてからは大変丈夫だったけれど、あれ以来休暇も無くて、朝から深夜までずっとヴァティール様の側にはべっている。
さすがに少し、疲れたのかもしれない。
最初は体中が痛くなるほどに緊張したけれど、この頃はそうでもなくなってきたはずなのに……いや、緊張が解けたからこそ、体にキたのかもしれない。
「おい、オマエ。どうした? 気分でも悪いのか?」
ヴァティール様は、私の事を決して名前では呼ばない。
人間ではないヴァティール様にとって、人間の召使の名などはどうでもよい、つまらないものなのだろう。
「い、いえ、大丈夫ですわ。不調法をいたしまして申し訳ありません」
プロ根性でにっこりと平静を装った瞬間、体がふわりと浮いた。
抱き上げられていたのだ。
「あのっ、そのようなことは私が致しますので、どうぞヴァティール様は椅子に腰かけてお待ちくださいませっ」
私の言葉に、ヴァティール様はいつも不思議そうに首をかしげる。
その様はどこかリオンに似ていて、胸が痛い。
「ワタシが散らかしたのだから、私が片付けるのは当然だ。
それに人間は『劣悪な環境』に置かれると、すぐ死ぬからな。ちゃんと片付けておかないと」
最近はウルフもカードの相手に呼ぶけれど、今この部屋に居る『人間』は私だけ。
どうやら彼は『私のため』に片付けて下さっているようだ。
ヴァティール様は、人間の魔道士に幽閉された経験があるため『人間は嫌い』と聞いていた。
でも、私に危害を加えたりはなさらない。
エルはヴァティール様を再び一室に閉じ込めようとするから、彼が来るたび、抗議のために暴れてみているだけなのだそうだ。
そうかと思うと、ヴァティール様はビックリするほどエルに優しいときもある。
よく掴めない方だ。
カードを拾うため、私もしゃがむ。
あれ?
何だか、頭がくらくらする。
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さすがに少し、疲れたのかもしれない。
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「い、いえ、大丈夫ですわ。不調法をいたしまして申し訳ありません」
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抱き上げられていたのだ。
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