滅びの国の王子と魔獣(挿絵あり)本編完結・以後番外編

結城 

文字の大きさ
上 下
361 / 437
アルフレッド王編・番外(連載コメディーとなります)

アルフレッド王編・番外(連載コメディーとなります)4

しおりを挟む
 私の新婚生活はこんなだったので、妃の私室のクローゼットに忍んでヴァティール殿に『のぞき』と間違えられでもしたら、確実に命がない。

 今日のこの有様は、エリスからの提案とヴァティール殿の事前の許可があるからこそなのだ。

 さて、妹に冷たい言葉を吐きかけられた『姫の兄』である皇太子。
 どうしたかというと、これが中々諦めない。
 噂通り、一筋縄ではいかぬ男のようだ。

「本当にすまなかった、愛する我が妹よ。
 しかしあの時は『国民のため』を思えば仕方がなかったのだ。
 父王は、皇太子である私こそが人質に選ばれると思っていらした。
 私がブルボア王朝の懐深くに入り込み、得意の魔術であのやっかいで下劣なクソ魔獣を捕らえ、屈服させて……」

 そこまで言いかけた皇太子の言葉をさえぎって、我が妃はまたオホホと高らかに笑った。

「ンまぁ! 身の程知らずですわ、お兄様。
 ヴァティールはとても強くて賢い、素晴らしいお方でしてよ?
 お兄様などには到底無理ですわ。不可能ですわ。ありえないですわ」

 妃はまたしても『氷のような冷たさ』で実兄を罵った。

 いやはや女性は恐ろしい。
 それなりには兄にも可愛がられ、しとやかに育ってきたはずと調べはついていたが、女性の心変わりの凄まじさよ。

 エリスは今でこそ私に極めて優しいが、もし私が父上のような無体な振る舞いを始めたら、容赦なく捨てられそうだ。

「……ところで、お兄様。ブルボア王国と心から協力し合うつもりはありませんの?
 お兄様のお文の通り『人払い』をしてお待ち申し上げておりましたのは、そういう嬉しい話を聞けると信じていたからですわ」

 エリスがさっきとは打って変わって優しげに、そして少し悲しげに兄に問うた。

「誰があんな成り上がり新興国と。わが国とは格が違う」

 プライド高い、アレスの皇太子はエリスの言葉を鼻で笑った。

「……そうですか。残念ですわ。お兄様」

 エリスはそれだけ言い放ってこちら……私の方を振り向いた。

「王よ、聞いての通りです。お出まし下さいませ」

 妃の一言を合図に、私はクローゼットを開き皇太子と対峙した。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

学園の支配者

白鳩 唯斗
BL
主人公の性格に難ありです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...