359 / 437
アルフレッド王編・番外(連載コメディーとなります)
アルフレッド王編・番外(連載コメディーとなります)2
しおりを挟む
幼少の頃の体験により、私はどこか女性を冷めた目で見ていた。
父上の『女好き』のとばっちりをくらいまくったし、母上も美しい妾妃たちによっていやがらせを受け続け、ついには殺されてしまった。
父上自身も己が正妃に暗殺され、女たちの戦いと浪費によって、国は乱れに乱れ、滅んでしまった。
だから美しい女性を見ても、まずは警戒心が先に立つ。
もちろん、程々な女性に対しても特に入れあげることはなかった。
妃を迎えるなら、美しくなどなくとも良い。
『賢く優しい、質素な女性』をただ一人……それで十分。
女同士のいさかいなど、見たくも無い。
エリスは子供の頃から我が城に置いているが、聡明で優しい。
国民からの受けも良い。
しかも、その『受けの良さ』は最初から持ち合わせていたものではなく『敵国の憎まれていた姫』という立場をひっくり返して手に入れたものだ。
彼女は贅沢は好まず、侍女であるアリシアを『お姉様』と慕う。
他の者にも身分を問わず、大変優しく接していた。
暇があれば慰問を行い、たとえ罵られようともくじけはせず、自ら雑巾を手に孤児院の床に膝を折って清掃もしたようだ。
もちろんエリスは同盟国から預かった大切な姫君。
危害を加えられることを恐れて私は許可を出さなかったが、ヴァティール殿が娘の願いを聞き届け、勝手に連れ出してしまった。
こうなると、私ではもう手が出せない。
しかし私の心配は無用だったようで、ヴァティール殿はいつものように、時々凄みながらも、
「娘の故国の不始末なら、私の不始末でもある」
と、案外謙虚にエリスやアリシアと共に清掃作業をしていたと部下から報告を受けていた。
このような行動がアレス帝国の間諜に知れたため、『つけいる隙有り』と皇太子が妹のところに忍んで来たのであろう。
それはまぁともかく、エリスは慈愛あふれる好ましい少女だった。
かつてエルシオンで見た王妃様たちと比べても、決して引けはとらぬであろう。
しかも勉学にも良く励み、贅沢も好まない。
これほど『王妃としての資質』に優れた女性には、もう巡り合えないに違いない。
と言っても、私たちの年齢は著しく離れている。
年の差婚は王族貴族の間では決して珍しいものではなかったし、後継者を生んでもらうなら『若い妃』の方が良いに決まっている。
しかし、私には『父の醜態』を苦々しく思っていた過去があった。
エリスが拒むのなら、この話を進める気は無かった。
国のためならたいていの事は出来る私だったが、エリスはリオン同様、失った弟を思い出させる存在なのだ。
可愛らしい金の巻き毛は弟によく似ていて、私なりに彼女を守ってやりたいと考えていた。
父上の『女好き』のとばっちりをくらいまくったし、母上も美しい妾妃たちによっていやがらせを受け続け、ついには殺されてしまった。
父上自身も己が正妃に暗殺され、女たちの戦いと浪費によって、国は乱れに乱れ、滅んでしまった。
だから美しい女性を見ても、まずは警戒心が先に立つ。
もちろん、程々な女性に対しても特に入れあげることはなかった。
妃を迎えるなら、美しくなどなくとも良い。
『賢く優しい、質素な女性』をただ一人……それで十分。
女同士のいさかいなど、見たくも無い。
エリスは子供の頃から我が城に置いているが、聡明で優しい。
国民からの受けも良い。
しかも、その『受けの良さ』は最初から持ち合わせていたものではなく『敵国の憎まれていた姫』という立場をひっくり返して手に入れたものだ。
彼女は贅沢は好まず、侍女であるアリシアを『お姉様』と慕う。
他の者にも身分を問わず、大変優しく接していた。
暇があれば慰問を行い、たとえ罵られようともくじけはせず、自ら雑巾を手に孤児院の床に膝を折って清掃もしたようだ。
もちろんエリスは同盟国から預かった大切な姫君。
危害を加えられることを恐れて私は許可を出さなかったが、ヴァティール殿が娘の願いを聞き届け、勝手に連れ出してしまった。
こうなると、私ではもう手が出せない。
しかし私の心配は無用だったようで、ヴァティール殿はいつものように、時々凄みながらも、
「娘の故国の不始末なら、私の不始末でもある」
と、案外謙虚にエリスやアリシアと共に清掃作業をしていたと部下から報告を受けていた。
このような行動がアレス帝国の間諜に知れたため、『つけいる隙有り』と皇太子が妹のところに忍んで来たのであろう。
それはまぁともかく、エリスは慈愛あふれる好ましい少女だった。
かつてエルシオンで見た王妃様たちと比べても、決して引けはとらぬであろう。
しかも勉学にも良く励み、贅沢も好まない。
これほど『王妃としての資質』に優れた女性には、もう巡り合えないに違いない。
と言っても、私たちの年齢は著しく離れている。
年の差婚は王族貴族の間では決して珍しいものではなかったし、後継者を生んでもらうなら『若い妃』の方が良いに決まっている。
しかし、私には『父の醜態』を苦々しく思っていた過去があった。
エリスが拒むのなら、この話を進める気は無かった。
国のためならたいていの事は出来る私だったが、エリスはリオン同様、失った弟を思い出させる存在なのだ。
可愛らしい金の巻き毛は弟によく似ていて、私なりに彼女を守ってやりたいと考えていた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。


転生先は推しの婚約者のご令嬢でした
真咲
恋愛
馬に蹴られた私エイミー・シュタットフェルトは前世の記憶を取り戻し、大好きな乙女ゲームの最推し第二王子のリチャード様の婚約者に転生したことに気が付いた。
ライバルキャラではあるけれど悪役令嬢ではない。
ざまぁもないし、行きつく先は円満な婚約解消。
推しが尊い。だからこそ幸せになってほしい。
ヒロインと恋をして幸せになるならその時は身を引く覚悟はできている。
けれども婚約解消のその時までは、推しの隣にいる事をどうか許してほしいのです。
※「小説家になろう」にも掲載中です


物語なんかじゃない
mahiro
BL
あの日、俺は知った。
俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。
それから数百年後。
俺は転生し、ひとり旅に出ていた。
あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる