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エルとリオンのトホホ外伝

エルとリオンのトホホ外伝4

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 さて所用で呼ばれた隙を見て、さりげなく王に『モテ』の件についても聞いてみた。
 さすがに『この件一つ』の相談で、王の所に押しかけるのは気がひけたのだ。

 王はとても忙しい方だ。
 それなりの配慮を持つのが『大人』ってものなのである。(と、アリシアが言っていた)

 そして盛大にお茶を吹かれた。
 何がマズかったのだろうか?

「どうして君ら兄弟は二人して……私に茶を吹かすような事ばかり聞いてくるのだっ!」

 珍しく王は不機嫌だった。
 確かに目の前の書類が吹き出したお茶で濡れたけど、幸いな事に(?)主に濡れたのは俺の服だけだ。

 書類の方はホンノ少しだけ。
 ちょっとシミにはなるかもしれないが、乾かせば特に問題はないだろう。

 いつもは優しい王なのに、今日は妙にイライラしている。
 何か嫌なことでもあったのだろうか?

「だいたい何だね。女性の一人や二人に袖にされるぐらいで悩むなど、精神がたるんでいる証拠だ。
 別に食事に毒を盛られたわけでも、刺客に追い掛け回されたわけでもないのだろう?
 だいたい私は王の身なのに、生涯において女性にモテた事など一度も無い。
 それは『この年で独身』の私へのイヤミなのかね?」

 うっ!
 日頃温和な王をこんなにも怒らせてしまうなんて。

 いったい何をやらかしたのだ俺ッ!

 別に俺は『王の悪口』などは、言っていない。
 ましてやイヤミなど、とんでもない誤解だ。

 俺は、『俺自身の事だけ』を話したつもりなのに、いつの間にか話が摩り替わっている。
 これはいったいどういうことなのだっ!?

 あせりながらも考えてみる。

 確かに今日の相談は、軟弱な内容だった。
 業務にも関係ない。

 けれど、王には今までにも数回『弟についての相談』に乗っていただいたことがある。
 業務外のことであっても、基本、部下の相談には親身になってくださる方なのだ。

 アリシアいわく、

「下らない相談を忙しい王にすんな!」

 だったが、俺にとっては下らなくないし、王も今までの相談のときはとても親身になって下さっていた。
 王はアリシアと違って、基本温和で親切な方なのだ。

 だからこそ、こんなにも『不機嫌な王』を見て、俺は大変ビックリした。



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