337 / 437
外伝・アルフレッド王編・夢の国の果て
アルフレッド王編・夢の国の果て 10
しおりを挟む
私は王家の血を継ぐ最後の一人。私に目をつけ『飾り物』として担ごうとする者が必ず現れるはずだと考えた。
自ら皇太子の地位を退き、欲の無い領主として辺境で過ごすことを望む惰弱な王子。
利用するならこれほど都合の良い者もいないだろう。
そんな予想は間もなく当たり、野心に目をぎらつかせた人物が私の前に現れた。
到底私と共存できるタイプではない。
彼は国をますます荒らすだろう。
しかしそんな感情は隠してにこやかに受け入れ、担がれてる振りを続けながら私自身の力を蓄えていった。
国を失った私は変わった。
民衆や配下の支持を得るため、表では優しく振る舞い、裏では相当汚い事もやった。
私を担いで実権を握ろうとしていた者は時機を見て謀り殺した。
絵描く理想の一番の障害となるのが彼だったからだ。
ああ。
エルシオンは私にとってあまりにも遠い。
汚れきった私はもう、あの国の人々のように生きることは出来ない。
でも、それで良いのだろう。
あの麗しの国はもう無い。
巨大帝国アレスに侵略されて、エルシオン王国は一夜で無くなった。
やはり、あの国のやり方では駄目だ。
あんな『ぬるい国』が今まで存在できたこと自体が奇跡。
滅びるのは当然の理だと言えるだろう。
『善意』という砂の上に建てられた夢の国。それがエルシオン。
どれほど高度な文明を誇ろうと、欲にまみれた人の世に存続し続けることは所詮不可能な事だったのだ。
忙しい毎日を過ごすある日、部下から『面白い3人を見つけた』との報告が上がった。
そのうちの一人の少年を見て、すぐに気がついた。
麗しかった、あの皇太子ご夫妻のお子なのだと。
彼の名前はエル。
庶民にありがちな名ではあるが、おそらくは行方不明になっているエルシド王子。
しかしエルシオンには始祖王による絶対法律があり、妾妃を持つことは出来なかったはず。
公式にも、幼い妹姫が一人いるだけとされている。
なのにこの少年には『弟』と『姉』がいた。
髪の色を変えるだけでは追っ手から逃れることは出来ないと踏んで、偽装家族を雇ったのだろうか?
だとしても、それは好都合。
アレス帝国はエルシド王子を血眼になって探していた。
さりげなく保護出来るのなら、そのほうが良い。
万が一バレた場合は『知らなかった』ことにして切り捨てることも出来るから。
大恩ある方々のお子とはいえ、私は王。
ぬるい感傷で全てを台無しにする気はない。
追求はやめた。
今から拾うのは、頼る者のいない可哀想な子供たち。
……私はそしらぬ振りで王子に話しかけた。
自ら皇太子の地位を退き、欲の無い領主として辺境で過ごすことを望む惰弱な王子。
利用するならこれほど都合の良い者もいないだろう。
そんな予想は間もなく当たり、野心に目をぎらつかせた人物が私の前に現れた。
到底私と共存できるタイプではない。
彼は国をますます荒らすだろう。
しかしそんな感情は隠してにこやかに受け入れ、担がれてる振りを続けながら私自身の力を蓄えていった。
国を失った私は変わった。
民衆や配下の支持を得るため、表では優しく振る舞い、裏では相当汚い事もやった。
私を担いで実権を握ろうとしていた者は時機を見て謀り殺した。
絵描く理想の一番の障害となるのが彼だったからだ。
ああ。
エルシオンは私にとってあまりにも遠い。
汚れきった私はもう、あの国の人々のように生きることは出来ない。
でも、それで良いのだろう。
あの麗しの国はもう無い。
巨大帝国アレスに侵略されて、エルシオン王国は一夜で無くなった。
やはり、あの国のやり方では駄目だ。
あんな『ぬるい国』が今まで存在できたこと自体が奇跡。
滅びるのは当然の理だと言えるだろう。
『善意』という砂の上に建てられた夢の国。それがエルシオン。
どれほど高度な文明を誇ろうと、欲にまみれた人の世に存続し続けることは所詮不可能な事だったのだ。
忙しい毎日を過ごすある日、部下から『面白い3人を見つけた』との報告が上がった。
そのうちの一人の少年を見て、すぐに気がついた。
麗しかった、あの皇太子ご夫妻のお子なのだと。
彼の名前はエル。
庶民にありがちな名ではあるが、おそらくは行方不明になっているエルシド王子。
しかしエルシオンには始祖王による絶対法律があり、妾妃を持つことは出来なかったはず。
公式にも、幼い妹姫が一人いるだけとされている。
なのにこの少年には『弟』と『姉』がいた。
髪の色を変えるだけでは追っ手から逃れることは出来ないと踏んで、偽装家族を雇ったのだろうか?
だとしても、それは好都合。
アレス帝国はエルシド王子を血眼になって探していた。
さりげなく保護出来るのなら、そのほうが良い。
万が一バレた場合は『知らなかった』ことにして切り捨てることも出来るから。
大恩ある方々のお子とはいえ、私は王。
ぬるい感傷で全てを台無しにする気はない。
追求はやめた。
今から拾うのは、頼る者のいない可哀想な子供たち。
……私はそしらぬ振りで王子に話しかけた。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説


心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
私の事を調べないで!
さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と
桜華の白龍としての姿をもつ
咲夜 バレないように過ごすが
転校生が来てから騒がしくなり
みんなが私の事を調べだして…
表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓
https://picrew.me/image_maker/625951

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる